奇跡の生還
第30話 厄介な友人
クリフ・アキシナイトは
彼のことを仲間として
それはまさに奇跡的な出会いだった。
とある夜、就職活動のために
ジュリアンが
しかし、この際クランの
大事なのは、相手が信頼がおける人物かどうか、そしてクランにクリフを加える
ちょうどいいことにジュリアンは大手クランから独立したばかりだった。
誰か頼りになる人物に隣で
クリフは
その結果、数時間後にはジュリアンは熱っぽい視線をクリフに向けて「俺と……夢を追ってくれるか?」と
こうなったらもうこっちのものである。
決まった話を
翌日の迷宮探索にさっそく同行することを約束させた。
そして次の日、クリフは準備を
「ジュリアンのクランに加入する?」
冒険者ギルドの受付には、ちょうど
彼はクリフの
「俺の冒険者証を
そう言っても敏腕氏はどこ
「もう一度お聞きしますよ。ジュリアンのクランと同行されると
「そうだとはっきり伝えたはずだ。何故そこからなんだよ」
「それは確かなお考えというものなのでしょうね。ラト・クリスタルには相談なさいましたか?」
こんなところまでクリフの
「どうして俺が冒険者の仕事をするのに、あいつへいちいち相談なんかしなくちゃいけないんだ」
しかし敏腕氏の
「とにかく急いで手続きをしてくれ。仲間はもう表に集まっているんだ。仕事ははじめが
クリフはそう言い
ギルドの玄関先には
ここだけでなく、町のあちこちに同じ旗が掲げられている。
これは王国全土が聖女選定の特別な期間に入った
王国はもう何年も聖女を選定していない。
奇跡らしき現象が起きて
嘘いつわりを決して許さぬ純白の
そばに魔法使いのウィレム、弓使いのアリオス、メイジのハーヴィルという仲間たちの姿もあった。彼らは全員男性で、
そこにクリフがやって来ると、
「悪いな、手続きに
クリフが
「構わないさクリフ。何せ
低い声で語る。
何とはなしに少しだけ
それからしばらくして、ようやく敏腕氏がやって来て、クリフがジュリアンのクランに加わることは
「どうしてだ!?」
「もちろん、どうしてもと言うなら手続きを進めますよ。これはギルド職員としてではなく、
どこまでいっても、ラト・クリスタルが道を
そうこうしている間に、遠くから空をつんざく
何事かと冒険者たちがどよめく。
咆哮が聞こえた方角を見上げると、大きな
そして
「見つけたぞ、クリフ・アキシナイト。それから他の
お前は、と口にしかけてクリフは危うく思いとどまった。そんな
そこにいるのはある意味、ラト・クリスタルよりも
人の姿をしているが、人ではない。
彼はこの王国で最も偉大な魔物、
苦しいうめき声がクリフの
「あ、
「実は、ここに来る前にカーネリアン邸に
虫の
しかもその怒りの声は人間の声量というものをはるかに越えていた。一言発するごとに、わんわんと反響し冗談でもなんでもなく周囲の建物が
「彼は相棒たるクリフ・アキシナイトがいなければ、たっての願いを聞き入れないと言うではないか。それゆえに、この私とあろうものが、まるで
「しかしですね、竜人公爵――
「ふん、つまらぬ冒険者仕事のことか」
竜人公爵はラト・クリスタルと全く同じ
「竜を殺しに行くとか言っていたな、
ジュリアンは
「俺たちは冒険者だ。人殺しはしない……」
それは
相手は
「貴様の目は
本人は怒り
それも極めて
「それとも、冒険者は
竜人公爵の怒りは
そのとき、ジュリアンの背中越しに炎の玉が放たれた。
大胆にも、魔法使いのウィレムが、レガリアを使って魔法を
しかし火球は竜人公爵を焼くことはなく、その表面で
炎と
「やめるんだ、戦うんじゃない!」
クリフの
ジュリアンたちはもう戦闘態勢に入っていた。
続いてアリオスが矢を放った。
三本に
クリフの目には一瞬、公爵の腕が、銀色の
決して
公爵が力強く
重量がすさまじい
竜人公爵の巨大な本体はこの狭い迷宮街の街路には
「ウィレム、ハーヴィルとアリオスを頼む!」
ジュリアンが剣を抜いた。彼の
おそらく身体能力を強化するものだと思われるが、竜の
公爵はジュリアンの剣を片手で
ジュリアンはよろめきながら尻もちをつく。
「ふん、竜殺しなど万年早いわ。クリフ・アキシナイトよ。君はこんな小物に関わっている
「しかし――ですね、
「自分がいかに時間を
「しかし――――」
「いいかね、これは私からの
竜人公爵はなおも言い
「どう
公爵が
戦闘がはじまったときに武器を抜いて前に出たジュリアンたちと違い、彼は遠ざかっていた。
それもいちばん
「クリフさん、冒険者証をお返しします」
敏腕氏は記憶鉱石を投げた。
ジュリアンたちはもう戦意を
何を考えてのことか、竜血の君は敏腕氏に向けて咆哮を放った。
敏腕氏は同時に放たれた
一瞬でジュリアンたちを片付けてしまった相手の強大さを知っているだろうに、自然体で腰の引けたところが少しもない。
これには竜人公爵も感心したらしい。
「ふむ……勇気がある。その気があるのなら、我が城にて
「恐れ入ります。
竜人公爵は子猫にするようにクリフの
「さあ、行くぞ。全くつまらぬ
「ああ……俺の仕事が……」
呟いたクリフに、竜人公爵は
「
責められ、クリフははっとした。
男女の違いもわからぬ魔物の言葉とはいえ、それは的を射ていた。しかも的のど真ん中を、
これから仲間になる連中だというのに、ジュリアンたちが竜人公爵にぶちのめされている間、クリフは一度たりとも剣の
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