第10話 女装趣味・下
いったい何故、ラト・クリスタルが女もののドレスをまとってここにいるかということを
クリフはガルドルフ邸第三階層にて女性冒険者のミイラを
もちろん蘇生させたのはクリフではない。
《掃除》に
ちなみに迷宮内で
とはいえ、女性ミイラの死に方は少々
まずは、
遺体には
何より彼女の武器は
息を
「何があったんだ?」
そう訊ねられた女性は、やや
水を飲まされて、ゆっくりと
「だ、誰かに後ろから……」
彼女は
「
「ええ、
「いったい、誰に?」
女性は
本当に
こうしてギルド職員は大した考えもなくクリフを牢屋に入れた。
通常の
さりとて
こうして、クリフは
もちろん実際に
すると、カーネリアン夫人ではなく、何故だかラト・クリスタルがドレスを着て現れたというわけだ。
クリフは
「その
「カーネリアン
何度目をこすってみても、白と薄水色を
確かに
だが、それ
「そうじゃない……、聞きたいのは、それをどうしてお前さんが着てるんだってことだよ。本気でお前、ときどき話が
「なあに? 僕がドレスを着てちゃいけないの?」
さも、それが
クリフはおそるおそる
「おまえ、もしかして女だったのか?」
「女でなければドレスを着てはいけないの?」
「当たり前だろ……?」
あまりの
ラトはそんなクリフのことを
「男はドレスを着ちゃいけない。なるほど、じつに
「
「君は常識ってものに親でも殺されたの?」
「
「それが毎晩耳元で手を叩き、大声を上げて安らかな
「そりゃあ言ったけど、
「女装だって? 僕の服の下なんか見たことないくせに」
クリフは今度こそ、言葉の
いったい何が正しいのか、間違っているのか、何が善で悪なのか。それどころか
はっきりとわかるのは、ラトと
「……とりあえずここから出してくれないか」
「いいだろう。誰かこいつを
ラトは笑いながら
イヤガラセである。
「おい、やめろ!」
クリフが
「とはいえ」
と、ラトは急に
「本当の意味で君を
*
冒険者ギルドの受付カウンターには、いつも
ある者は彼女のことをスミレに
またある者は、その
しかしラト・クリスタルが近づいてくるのをみると、いつも彼女は「ひっ」と声を上げてギルドの
何故なのかは誰にもわからない。
かわりに受付に入ったのは《
いつも
クリフが牢屋から出られるように
ラトはこの件の
「やあ、敏腕くん。クリフくんを出してくれて感謝するよ」
敏腕氏はいつも通りだ。
しわひとつない
ラトとは違う
「おいラト、もう行こう。ぶじに
クリフはラトに
悪い噂をしているのだろう。
「おわかりかとは思いますけれど……」
受付係の青年はゆったりとした
「カーネリアン夫人たってのご
「…………いったいどういう意味だ?」
「あなたは
「なんだって? ラトじゃなく、俺がか?」
敏腕氏は
ミイラとして発見された女性の
彼女の名前はシネーラ。
冒険者としての活動記録は二年前で
記録の上では最後に迷宮を
彼女はそのとき
つまり、最近アレキサンドーラにやってきたばかりのクリフにシネーラを殺すことは不可能だ。
ただ、被害者自身が犯人としてクリフを指名したことの意味は大きい。
死の
「衛兵隊からは、あなたを街の外に出すなと言われています。どなたか、あなたの
「いるわけない。もう二年も前のことなんだぞ」
「それは
「つまり、なんだ。要するに冒険者ギルドからは出られても、こんどは衛兵隊に
「はい。その通りです。それも
いささか馬鹿馬鹿しい考えではあるが、被害者の証言がある限り、《クリフが二年前にアレキサンドーラを訪れてシネーラを殺したかもしれない》という
クリフはたじろいだ。
まさか、こんなことになるとは思わなかったのだ。
ラトの不吉な預言はみごとに
「ねえ、どうしてミイラの
そのとき、ラトの
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