第158話 称賛に値するスキル、だお
僕はただ、ヒュウエルという先達に悩みを聞いてもらいに来ただけのつもりだった。
そしたら王子につけられていて、悩みを打ち明ける前に悩みを暴露されてその対策として結婚式を行うべきという新たな悩みの種を持ち掛けられた。
にしても、お腹が空いた。
ヒュウエルに注文したお昼ごはんは、王子やリザさんに持っていかれたし。
「ヒュウエル、すみませんがもう一品作ってくれませんかお」
「別にかまわねーが、お前色々と隙が多くねーか? 今回のスキャンダルにしたってそうだぜ」
「お腹が空いていると、説教も耳に入ってこないですお」
「馬鹿が」
王子は日本酒をあおぎ、とっくりをテーブルに置くと、僕の目を覗き込んだ。
澄み渡った空色をした蒼い瞳に、機微が生じる。
「結婚式だ、タケル殿の故郷ではそういった風習はないのかな?」
「え? いや、ありますよ」
「そうか、なら話は早いはず」
「いや、その、今のところ結婚する予定は」
「ないと? 御冗談を、タケル殿はすでに幾人かの異性と関係を持っていたはず」
なぜ王子がそのことを知っているのだろうか。
人の口に施錠はできないのかな?
「とりあえず正妻をすえて、他は他で正妻の補助、側室としておいておけばいい」
その話を持ち掛けられ、僕はヒュウエルが用意した昼を頂き自室に帰った。
◇ ◇ ◇
結婚式の話を持ち掛けられたその日の晩のこと。
人払いをした部屋にライザを招いた。
「イヤップの件であれば気にする必要ない」
「彼女、何か言ってた?」
「いいや、私の方からそれとなく聞いてみたが、なんでもないから、と」
イヤップがそう言ったことで、彼女の成長を知れてうれしく思う。
なんてライザは楽観視している。
「……もしもタケルが本気なら、一度で決めて欲しい。それ以上は迷惑だろうしな」
「人生って、難しいね」
「ああ、だがタケルなら困難を乗り越えられる力がある」
困難を乗り越えられる力、か。
それは生きる上で必須だよな……力?
そういえば僕はこの国に来て第四の勇者スキル、自動精霊を獲得していたんだ。
ライザとの会話からなんとなく想起した自動精霊に、今回の件を聞いてみるか。
「自動精霊」
『お呼びでしょうか?』
自動精霊の声は機械的でもなく、テレビのニュースなどで見受けられる聞き取りやすい声だ。
「今、僕が悩んでいる内容は知ってるかな?」
『おおよそは把握しております』
なら。
「君であればどう対処する?」
『私であれば――』
この時、自動精霊がよこした返答に僕は感心し、ライザは僕の勇者スキルは他に例を見ないほどの羨ましい力だと、二人して自動精霊を称賛するにいたった。
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