第149話 後継について、だお

 僕と王室関係者の政略結婚の話あったやろ?


 あれ、モニカに早速先手を打たれてしまったらしい。


「エレン」

「何よリン、いつになく悲しそうね」

「タケルが政略結婚するって、新聞に書いてあった」

「ブっ! なんか以前もこういうことなかった?」


 王都の新聞では、もう政略結婚は確定的と報じられているらしい。

 そのことを知ったのは、ホテルのバイキングでライザと朝食を摂っている時の話で。

 偶然通りかかったらしいエレンとリンの二人の口から初めて聞かされた。


 対面しているライザはぽかんとした様子でいる。


「あの話は本気だったのか」

「王室がメディア使って報じることは100%本気よ、どうするのよタケルは」


 エレンはこう言うのだ、リンはどうなるのよリンはと。


「……そう言えば、タケルは結局イヤップのことどう思っているのだ?」


 うぐ、ライザたん、今それ聞く?

 エレンは僕が頼んだモーニングコーヒーをぶんどると、新聞を見つつ言う。


「他にもいるわよねぇ、あんたと関係性のある女って、信じられないわね」

「私のこと、呼んだ?」

「っ!?」


 エレンの背後にとつじょとしてシャーリーが現れた。

 エレンはびっくりした様子で少したじろぐ。


「だ、誰? 幽霊?」

「よく言われます、存在感なさすぎて幽霊と誤解するって。ね、タケル」


 シャーリーは距離感が近い感じで僕の名を呼ぶと、エレンとリンは察したらしい。


「こいつ、カス」

「けど頼もしい、事実カスだけど」

「ここまでいったら人間の屑よ?」

「それでも魅力的、事実屑だけど」


 なんなんや、気持ちのいい朝なんだから僕の心を穢さないで(´;ω;`)。


「お早う御座いますタケル殿」


 そこに新生リカルドが登場し、声を掛けてくれた。

 彼がレジスタンスをやっていたヴァルハラは、革命が成功したことになっており。

 リカルドは今では僕の付き人をやっている。


「リカルド、ちょっと困ったことになったんだ、どうすればいい?」

「はは、知るかよ屑が」


 どいつもこいつも酷くない?


「お兄ちゃんおあよー」


 アオイちゃんちーもご登場!


 アオイが独立したことはなかったことにされており。今この大陸の勢力は僕と軍神ダニエルのせめぎ合いとなっている。このことでいかにアオイのやることが計画性のない行き当たりばったりな行動なのかが知れたほどだ。


「エレンお姉さまもおあよー」

「アオイ、あんたの兄貴どうにかならないの?」

「ああ、その人私の兄じゃないんで。私の兄は海外留学中なんで」


 本当に、酷くない?


 ◇ ◇ ◇


 朝食を摂り終えたあと、僕は学校の職員室を訪れた。

 授業風景の見学だったり、ザハドたち教師に確認したいことがあったからだ。


「ザハド、人手足りてる?」

「うーん、正直な話、教師の数が少ないですね。生徒の子供たちに対して」


 ザハドがこういうのも無理なくて。

 大陸が融合したことによって、人口が増えた影響がここに出ていた。


「じゃあ誰か雇い入れようか?」

「と言っても、中途半端な人材を雇うわけにはいきませんし」

「子供の育成もそうだけど、教師の育成もしないと駄目そうだね」

「その通りですタケル」


 と言ったように、人が増えれば増えた分だけ問題も出てくる。

 職員室でザハドと会話している所に、アンディが訪れた。


「オーク先生、そろそろ朝礼の時間じゃないのー?」

「あ、今行きます」

「お早うアンディくん、今朝は、一段と男前だね」


 アンディは律儀にザハドを呼びに来たらしい。

 僕の学生時代とは違って、気合が入っててよろしい。


「屑様、政略結婚の話受けるのか?」

「アンディも知ってるのかその話」

「姉ちゃんたちが騒いでたんだよ、あの自慰勇者が出世したもんだねって」


 やめてよ、今日ずっと僕は弱みをいじられるの?


「メグさんたち、聖女はあれから勇者召喚してるの?」

「水面下でしてるっぽいぜ」


 水面下でって、報告ぐらい入れてよぉん。


 その後一時間ほどアンディのクラスの授業風景を見学させてもらった。

 教室では怠慢に過ごす子も中にはいたもので、小学生時代の僕を彷彿とした。


 あの頃は教室の窓から空を眺めて、流れる雲を目で追ってたなぁ。


「……政略結婚か」


 それは、世継ぎを残すためにも必要なことだと思う。

 いずれ僕も死ぬ時が来るし、せめて死ぬ前に自由な時間を手に入れたい。


 その時はヒュウエルにならって旅でもしてみようかな。



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