第145話 ゲームスタート、だお
永遠にこの牢獄に囚われているものだと思った。
けど、そこに未来から来た救世主が手を差し伸べてくれたので。
「ただいまなりよー」
「っ!? タケル、今までどこにいたんだ」
トオルくんの助力あって僕はホテルのオーナー室に帰ってこれた。
そこには僕の代役を務めていたのか、ライザがいたよ。
して、僕は闘技大会から消えた事の発端を、ライザに説明するのだった。
◇ ◇ ◇
「タケルが言わんとしていることは、なんとなくだが理解した」
「それで、闘技大会の後はどんな感じになった?」
「闘技大会自体は順調に進み、結果的にヒュウエルの優勝で幕を閉じた」
ふむふむ、ヒュウエルはさすがだな。
「その後、タケルによる建国のスピーチが予定されていたと思う。が、そこで私たちは初めて異常に気が付いた。タケルの存在がこの世界から消失していたことに気づいたのだ。だから建国のスピーチは中止し、他国のゲストには帰っていただいたのだが、その時、この大陸の他二つの勢力が私たちを悪く言い始めたのだ」
ふむふむ、なんか殺伐とし始めたな、急にどうした?
「ランスロットの話によると、恐らくモニカが何かを仕掛けたのでは、との情報を得ている」
「なるほど、僕がいなくなってから日も浅いし、そこまで状況は動いてないか」
「タケル、お前がいなくなってやはり思ったことがある」
ライザたんはそう言うとオーナー席を立ちあがり、僕に譲るようにしていた。
「王の席は、お前こそが相応しい。私はこういうのは向かない」
「いやでも、僕が突然いなくって代わりを担ってくれようとしたことは嬉しいよ」
あ、それと。
「トオルくんの件はあまり口外しないでね? 未来が変わっちゃうらしいから」
「よくよく留意しておこう、それで、タケルは九龍を攻略するのだな?」
「九龍のダンジョン攻略の副産物で、二つの世界を融合させればいいらしいからね」
ということらしい。
それで今回の騒動は決着できるはずなんだとか。
「九龍の連中はいまどうしてる?」
「タケルのいない間に、九龍も私たちに接触してきた。例の約束はどうなったのかと」
「なんて返答したんだ?」
「約束は少し待ってほしいと言っておいた、今はタケルの捜索が最優先だと」
うわぁ、僕、すんげぇ迷惑野郎じゃん。
「そしたら九龍は不満たらたらな顔つきで、ならしばらく秋葉原に滞在しようと言い出して、恐らく今でも秋葉原にいると思う。今から向かってみるか?」
「そうだね、そうしよう」
「その前にタケルは方々に戻って来たことを報せた方がいいな」
して、僕たちは滞在先のホテルから魔導車を出した。
ライザに運転してもらっている間、ウルルやアンディといった関係者にDMを認める。
『この度は本当にご迷惑お掛けしました、不肖、竹葉タケル、戻ってこれました。どこへ行っていたのかはあえて聞かないでください。小生もたまには羽目を外したくなるお年頃で御座いますそうろう。今は九龍に会いに秋葉原へ向かっている最中でございます。みんあ、秋葉原で僕と握手』
一斉送信、と。
意外なことに、誰よりも返信が早かったのはハリーだった。
『へへ、戻ったのかよタケル。俺は信じてたぜ』
何をだよ。
その後も続々と返信を貰い、返事をしていればあっという間に秋葉原。
みんあ、秋葉原で僕と握手!
「えっと、ライザは九龍の全員と面識あるの?」
「いや、ない。なんでも九龍の中にはヒキニートとやらがいるらしくて」
「おk、まぁゲーセンやらゲームショップを巡ってれば落ち合えると思う」
……にしても。
「ライザ、なんかこの街、特に人が増えてない?」
秋葉原の大通りには、王都でみたような多種多様な人物が往来を行き交っている。これがすべて自国民だとは思えない、だって国民の大半はダニエル将軍に取られたのだから。
「恐らく、九龍がさっそく例の薬を使い始めたのじゃないか?」
「早く九龍をみつけよう」
ということで、駅前のゲーセンに向かう。
仄暗い室内はゲームの煌びやかな光と音がひしめいており、結構な人気があった。
僕は天のゼオラが言っていたMOBAが好きという情報を知っていたので。
大型アーケードコーナーの一角へと向かったら案の定ゼオラが筐体に座っていた。
「ゼオラ」
と声を掛けて彼女の肩に手をやると、その手を横から掴まれた。
「誰だ貴様、ゼオラ様に何用だ」
「えっと、僕は竹葉タケル、ゼオラ達九龍とは取り決めごとがあって、その件で」
ゼオラの親衛隊って奴かな?
若い女性が三人ほど、ゼオラを取り囲んでいる。
「ゼオラ様はゲームの最中だ、終わるまで待て」
「相変わらずだな」
ほんと、こいつら変わらない。
して、ゼオラのゲームが終わると、彼女は僕の用件に耳を貸してくれた。
「九龍城を攻略したい?」
「うん、なるはやで。でないと君たちとの約束を実行できない」
「……ふふ、いいでしょう。なら私とやりますか」
「な、何を?」
するとゼオラは今座っている筐体を指さし。
「このゲームで雌雄を決しましょう、一度でも私に勝てれば認めますよ」
……まぁ、ガッチガチの戦闘よりは、いけるほうだけど。
ゼオラが今座っている筐体のゲームは、カードを配置することで進行する比較的新しいゲームだ。カードの入手は予めセット販売している奴を買うのがデフォなんだけど、それだと戦力的には弱い。ゲームをすることで筐体からランダムで排出されるカードを入手して、強くしていくのが普通ではある。
だから一先ず、僕はライザにこの場を託すことにした。
「ライザ、ちょっと僕トイレに行ってくるよ」
「わかった」
との方便をつき、近場のカードショップにダッシュ。
カードショップにも大勢の竜種人間がいて、目ぼしいカードを吟味している様子だ。まぁ僕も大勢にならって、ゼオラが勝負を挑んできた筐体のカードを入手して、そして何気なく戻る。
「お待たせ」
「ずいぶんと長かったなタケル」
「ちょっとトイレが混雑してたからさ、それよりも、早速やろうか」
ということで、ゲームスタート。
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