第144話 救世主、だお
「そう言えばさ」
シャーリーの世界にやって来てから三日後。
彼女と寝所を共にした時、僕はあることが気になった。
「何かしら?」
「この大陸についてから得た新スキルのセーブ&ロードでさ、128個分のセーブデータが保存されてるんだけど、これってどこの時点のセーブポイントか心当たりない?」
「考えられるのは、ヴァルハラを崩壊させた時とか、あとはタケルに子供が出来た時とかかしらね」
子供!? だ、誰との間に出来た子供なんだぇ。
候補はウルル、イヤップ、リン、それから、えっと君か。
「その子はどうなったの?」
「説明したように、今はヒガンバナに宿ってる」
……まさか、この僕に子供がいたなんて、想像できなかった。
相手は誰かは知らないが、その子のことを想うと、今が忍びない。
「なんとかして、現実の世界とこの世界が融合できないかな?」
「私には無理だった、言えるのはそれだけ」
シャーリーは枕元の明かりを消して、もう寝ましょうと優しくささやく。
そうして室内に静寂が訪れると、熱意が形骸化していくようだった。
何のために国を起ち上げたのだろう。
何のために生きているのだろう。
◇ ◇ ◇
それからの僕はヒガンバナ畑にいって、シャーリーの代わりに水をやる毎日を送っていた。まるで懺悔のようにヒガンバナに水をやっていると、気持ちが沈んでいく。
――どうすることも、出来ないのかな?
と、多少投げやりになっていた時。
「タケル」
「トオルくんか、どうしたの?」
僕の幼馴染で、ここに来て女体化してしまったトオルくんが畑に訪れた。
「……いい加減気づかないか?」
「って言うと?」
「俺は、お前の知っている幼馴染のトオルとは別人だってことに」
「じゃあ君は誰なのさ」
と聞いてみたものの、今の僕は失意からか、彼の正体などどーでもよかった。
しかし、トオルくんが何気なく打ち明けた正体を耳にした僕はその意識が変わる。
「俺は竹葉タケルの長女、竹葉トオル。つまり貴方の娘だよ」
「……は?」
僕の、娘?
「証拠は? というか、なんで今まで黙ってたんだ」
「今の状況を見たらわかるだろ? 過去を改変することの恐ろしさが」
「えっと、母親はだ――」
「俺の正体についてはまだ深いことは言えないけど、俺はこの状況を打開するために事前に送り込まれた、まぁエージェントみたいなものだ。とは言っても、この状況を打開するキーマンは貴方なんだけどな」
彼女についての詮索はタブー、と言わんばかりにトオルくんは話をさえぎった。
しかも、この状況を打開するために送り込まれたエージェント、って言ったな?
「なぁ父さん、世界を救う覚悟はできたか?」
「……ふ」
「ふ?」
ふぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!
キタキタキタ、キタ――――――――――ッ!!
僕こと竹葉タケルの異世界物語はここで終わりじゃないお!
僕は、生きる! みんなと一緒に! みんあ! みんあと一緒に!
「ど、どうすればいいの?」
ドキドキとした心境の中、トオルくんに問いかけると、彼は淡々と説明してくれた。
「先ず、俺は転移スキルを持っている。そして現実世界とこの世界を行き来できる存在だ。未来のアオイちゃんがさ、俺のスキルをそういう風に魔改造してくれたんだ」
アオイが? あの阿呆の極みみたいなアオイが?
「だから、今から貴方を現実に戻す。現実に戻った貴方がやるべきことは」
やるべきことは!? ごくり。
「九龍城の攻略、だよ」
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