第143話 ヒガンバナの正体、だお
シャーリーはその後も親切に教えてくれた。
アンディが過去を改ざんしなかった世界のこと。
その世界では、魔王リィダはヒュウエルと相打ちになり、王都も壊滅状態になった。だが僕は持ち前の商魂で王都の復興に尽力し、二年後には元通りにしてみせるという大仕事をやり遂げたようだ。
その折に、僕は王国から勲章を授与し、次の大仕事を任された。
それが――新大陸の興行であり。
新大陸と一緒に生まれた女神こそが、シャーリーだったという。
僕はシャーリーと蜜月な関係になり、夫婦といっても過言じゃない仲なんだそうな。
しかし、災難なことにこの大陸は世界から取り残される結果となった。
大陸の一部は現存する世界に吸収され、黒ずんでいる。
それでもこの大陸が存在しているのは、シャーリーがいるから保てている状況らしい。
グウェンが言っていた、アンディが時間を巻き戻したことによって失われた命。
その命は辛うじてこの大陸に留まっている。
「この赤いヒガンバナに、失われた命は宿っています」
「……元は、人間とかだったってこと?」
「はい、タケルと縁のある人たちですね」
「この人たちの命を、元の体に戻す方法とかないのかな?」
「それは現在模索中ですね、まずはタケルと再会することこそが、何よりも優先だった」
その話を聞き、僕はうかつに動けなくなった。
「……シャーリーの大陸って、自然が豊かなのが特徴だよね」
「えぇ、空気も澄んでいて、気分がいいでしょう? 私の世界はそういった静寂な世界になります」
比べてノア、あの恐竜の着ぐるみと一緒にやりたい放題の馬鹿は現状をどう思っていることだろうな。ひょっとしたら今度はノアの大陸がここと同じような感じに逆転するかもしれない。
その時でもノアは飄々としていられるのだろうか?
「ここから僕が元居た世界の住人と連絡取れるの?」
「取って、どうするの? 私たちをないものにしようとする気?」
「そんなことしないよ、ただ今のままじゃ現状を打開できない」
というと、シャーリーは僕の背中に両腕を回して抱き着いた。
シャーリーの豊満なおつぱいが胸にあたって、お、おつぱい!
「せめてタケルだけでも、ここにいるべき。私はそう思う」
「……僕は」
「ねぇ、タケル」
シャーリーはよほど切羽詰まっていたからだろうか、僕の言葉をさえぎってまで伝えたいことがあったようだ。
「責任、取ってね」
彼女のその言葉に僕は、手を震わせるのだった。
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