第141話 へるぷみー、だお
僕は置かれている状況に混乱している。
視界一面の赤いヒガンバナの絨毯の中にいて。
夢かな? と思って頬をつねる。
「いだだだだ、夢じゃないか」
でも、この景色には見覚えがあった。
あれはたしかアオイの謀反を受けた直後、過労から倒れた時のことだ。
意識が途切れると、僕はここに立っていて。
たしか、ここで女神のような出で立ちの女性に会った。
シャーリーと言ったかな、あの人。
にしても、どうやって帰ればいいの?
「ステータスウィンドウオープン」
持ち前の屑スキル、ステータスウィンドウを開き、マップで現在位置を確認した。
……どうやら、バグってるようですねぇ。
ステータスウィンドウが示すマップは、縮小してもグウェンの大陸やらノアの大陸は映らなかった。代わりに映っていたのは今いる大陸のマップで、ところどころ黒ずんで表示されない場所がある。
とりあえず、このヒガンバナ畑のすぐ近くに人里があるので、そこに向かおう。
てくてくと徒歩で歩きつつ、僕は新たに獲得したスキルの説明を見た。
『・スキル【セーブ&ロード】――スキル所持者は総計128スロットのセーブ枠を持ち、ロードを実行することでセーブした時空へと戻ることができる。セーブ&ロードを実行するにはスロットの数字を唱えたあと、セーブ、もしくはロードと唱えることで発動される』
な、なるほど?
なら、今の状況をとりあえずセーブしておくか?
「1スロット、セーブ」
ステータスウィンドウが表示した新スキルのマニュアルにそってセーブしようとすると。
『1スロットにはすでにセーブデータが存在します、上書きしますか?』
なぬ? 1スロットにはすでにセーブデータがあるとな?
「却下だ、じゃあ……10スロット、セーブ」
このスキルを使った覚えは当然ないけど、一応さけてまたセーブを試みた。
『10スロットにはすでにセーブデータが存在します、上書きしますか?』
はぁ?
1から128スロットまで確認したら、全枠にセーブデータがあるような状態だ。
「ふむ、これはどういうことだろうなぁ?」
そうこうしているうちに、一番最寄りの人里についた。
ヒガンバナの畑に隣接するようにして作られた、野菜畑には一人の農家がいて。
「ああ、タケル様、久しぶりですね」
向こうは僕を知っている素振りなんだけど、あいにく僕の記憶にはない人だ。
「あの……ここはどこなんでしょうか?」
土仕事をしていた農夫に尋ねると、彼も多少困惑の色を顔に浮かべる。
「ここら一帯はシャーリー様の庭園になりますが、タケル様はどうかなされたので?」
「あー、んー、そうなんですね」
「おかしな人だなぁ、ここはシャーリー様の庭園であると同時に、タケル様の領土なのにその言い草はなんですか」
うむ、訳がわからないよ。
「シャーリー様はどこにいますか?」
「俺がそんなこと知る由もない、仕事の邪魔するんだったら他所行ってくださいな」
うう、麦わら帽子をかぶった彼と話が通じなさ過ぎて邪険にされてしまった。
「……それとも、人違いだった? タケル様によく似ただけの別人とか?」
「貴方の言うタケル様って、竹葉タケルのことですか?」
「えぇ、で、貴方の名前は?」
「竹葉タケルです」
「イラっと来ました、邪魔ですからどっか行ってください」
酷す、僕はまっとうな返しをしたのに。
まずい、そう言えば僕は建国記念の答辞を国民の前で言わなきゃいけない予定なのに。
この摩訶不思議な新大陸からどうやって帰ればいいんだ。
とりあえず、アンディにDMしておこう。
『アンディ、迷子になった、迎えに来てくれ』
へるぷみー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます