第140話 闘技大会その終、だお

「あっはっは、ヒュウエル、天晴れである」


 グウェンはヒュウエルの試合を見届けると、豪快に笑いだした。

 そしてよいしょっとと言って僕の席に腰かけ、手元にあったトロピーを嗜む。


「っ! 口の中に南国の風が吹き始めたかのようにフレッシュな味わい!」


 表現はちんぷだが、グウェンには食レポの才能があるように思える。

 なにせリアクションがいい。


「神様も気に入る味わいなのですね」

「む? そう言う貴様は只者じゃないな、名を名乗れ」

「モニカと申します、以後お見知りおきを」


 グウェンとモニカが並んで座っている。

 グウェンという神が緩和剤になって、モニカといる緊張感が和らいでいい。


「ほら、グウェンのねぐらに一度来たことあるじゃないですか」

「うむ、覚えておらんな」


 モニカはグウェンの発言に気にした素振りを見せず、トロピーを味わっている。

 グウェンはそんなモニカに何事か覚えたのか、同じくトロピーを飲む。


 一転して、その場はモニカが持つ緊張感が勝ったかのようだ。


「続いて第三試合は、九龍のブラムと砂の国の代表、ウェールズの試合を取り行う! 双方参れ」


 ほう、次の試合は九龍の一人と、友好な関係にある砂の国の代表の一戦か。

 砂の国の代表、ウェールズは浅黒い肌の下に筋骨隆々とした肉体を誇示している。


 一方、九龍の代表、闇のブラムは黒いスラックスと黒いシャツという簡素な姿で。

 ウェールズと比べ、体格は細身の中背だった。


 だが、見た目とは裏腹に隠された力があるんだろ?


「では第三試合を始めたく思う、双方構え……どうした九龍の代表よ、構えられよ」

「いや、俺は騙された。だからこの試合は棄権する」

「騙されたとは?」

「俺は、この大会を格ゲーの大会だと偽られたんだ!!」


 という訳で第三試合はウェールズの不戦勝となった。

 この事態を受け、僕はすぐさま砂の国の代表たちに謝罪しにいったほどだ。


 まだ正式に面会したわけじゃないけど、闇のブラムね、覚えておこう。


 次の試合はたしか、モニカが送り出したランスロットが出る。

 ランスロットの実力を測る機会としてはちょうどいい。


 ランスロットの相手はリカルドか。


「では第四試合に移る、ランスロット、リカルド参られよ」


 これはこれで激熱な試合だじぇ。


 僕はすっかり、闘技大会に見惚れている。


 ランスロットとリカルドの得物同士がぶつかり合った、その時だ。


「……ここは?」


 僕はいつの日か夢で見た、一面赤いヒガンバナで敷き詰められた大陸へとやって来ていた。するとステータスウィンドウから通知音がなり、僕の身体に第四の勇者スキルが宿ったことを教えてくれるのだった。


『・スキル【セーブ&ロード】を獲得しました』




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