第134話 再び神の楽園へ、だお
「では九龍の願いは受理されるということで、これで失礼します」
「待ってください」
ゼオラは九龍の要望を発言するだけして帰ろうとするが、そうはいくか。
「……これ以上何か?」
「要約すると九龍の要望は三つ、一つは九龍のダンジョンをもっと住みやすく改築する。一つは九龍の望むような新作ゲームの開発に注力する。最後の一つは九龍の傀儡である竜種を人間のような姿にする。とのことでしたが、僕たちが九龍に提供するように、九龍も僕たちに対価を提供できるのなら、っていう前提です」
誰が無償で提供する言うたんや? っていう話。
そう言うと、ゼオラは駆け引きを続けるように再び席についた。
「私たち九龍がいるからこそ、なんですよ。この大陸で貴方達が平穏を保っていられるのは」
「というと?」
「この大陸にいる竜種たちは九龍の統率によって暴力的な本能を抑制できているのです。九龍が本気になれば貴方達の国は建国するまえに落としてみせます」
ゼオラの言い分に、ライザが間髪いれず反論した。
「脅迫するつもりか」
「事実を申し上げたまでです、全面戦争はお互いにとって望まぬところのはず」
うん、だからね、そーゆうことじゃねーんだわ。
まあ、素性が知れない九龍や竜種と真っ向からぶつかっても何も得られない。
「いいですよ、そちらの要望は叶えます。その代わりこちらの要望も聞いてください。話としてはそれだけです」
「そちらの要望って?」
「人の姿になった竜種は、恐らく僕らの国にとって貴重な労働力となります。ゼオラのように人の姿になれる竜は現在だと何人くらいいるのですか?」
「……私含めて数十名です」
「なるほど」
その後、ゼオラにはもう一つの要望として他の九龍との面会も約束してもらった。双方の間で取り決めごとが終わる頃には辺りは夜になっていたので、ゼオラはこのまま泊まってもらう方向に話は落ち着いた。
僕は自室であるオーナー室に戻り、壁に掛けられていた竜の頭をそっとしまう。
すると誰かがオーナー室の扉をコンコンコンとノックした。
「どうぞ」
「俺だよ屑様、なんだよ伝説の木の下って、気になって探しそうになっちまったじゃねーか」
「アンディくん……思えば、アンディくんとは喧嘩ばかりしてたよね」
オーナー室を訪れたのはアンディと、ライザの弟のロンだった。
一緒に行動しているってことは、二人はあれから意気投合でもしたのだろうか?
「二人とも、学校の調子の方はどう?」
「割りと楽しいぜ」
素直な性格をしているアンディがそう言うってことは、学校の方は順調みたいだな。
「それならよかった、ザハドから聞いた限りだとロンの吸収力には目を見張るって褒めてたよ」
というと、ロンは恥ずかしがるように視線を下に向けて、尻尾をふっている。
「あ、あの、屑様におりいって、お、おれ、言いたいことがあって」
「何かな?」
「お、おれや、おれの家族をいつも守ってくれて、ありがとう」
「……どういたしまして」
つい、胸がじーんとした。
そしたら横にひかえていたアンディがにやけた表情でいる。
「柄にもなく感動してるのかよ屑様」
「うるさいんだよアンディは、まぁその通りだけど」
席を立ち、二人に背を向けて背後にあったティッシュで目元を拭う。
「……正直な話、最近の僕は我を失っててさ、人に対して不信感を抱くようになっていたんだ。グウェンの修行を受けて、ちょっと調子に乗って、まるで自分こそが世界の主人公って感じの、とにかく思い上がっていたんだよ。それがアオイやダニエルの国家建設の話で、憂き目にあって、いっきに崩れた」
だから、今のロンのお礼の言葉は、今日一、心に響いた。
「ロンが今言ってくれた言葉で、僕は自分がやって来たことは誰かを守れていたんだってことを知って、崩れた自信がまた蘇った感じだよ。お礼を言わなくちゃいけないのは僕の方だ、気づかせてくれてありがとう、ロ――……」
ロン、というと同時に振り返ると、そこに二人はいなかった。
あいつら、人がいいこと言っているのに興味なくして立ち去りやがった。
しょうがないからオーク先生とケヘラン先生のお二人に来ていただこう。
「お呼びでしょうかタケル」
「タケル、もう立ち直ったの?」
オーナー室を訪れた二人に無言でソファーに座ってもらうよう手招きする。
「僕は立ち直れたと思う、けど、今日また問題が浮上してさ」
というと、ザハドは安堵したようすで「快復おめでとうございます」という。
ケヘランは眉根を動かさず、当然よね。と言い。
「それで、浮上した問題って何よ」
「この大陸にいる竜種に、二人のように人になれる術を覚えさせたいんだ。二人はどうやって人の姿になれてるの?」
僕の質問に、ザハドは淡々とした様子でいる。
「グウェン様から頂いたお薬の効能ですね」
「それってケヘランが以前言っていた知能を高める薬のこと?」
「たぶんそうだと思うわ」
ふーん、そっか。
なら僕はグウェンに会う必要があるな。
まさか竜種の全員をグウェンに弟子入りさせるわけにもいかないだろうしな。
「じゃあ、今からグウェンに会いに行かない?」
「そうしましょう、私、この世に蘇ってからグウェン様たちにお会いしてないしね」
今はもう結構な時間だけど、僕は二人を連れてグウェンに会いにいくことにしたんだ。ってことでアンディ、さっきの罰として足になってもらえる? と、アンディにDMを送ると。
『俺はあんたの奴隷じゃねーんだぞ! 屑!』
との憎まれ口をたたいていた。
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