第131話 いざ特級ダンジョンへ、だお
「ライザ……っ!」
「どこ行くの?」
ライザは僕のために危険を冒してダンジョンに挑んでいる。
その最中、彼にDMを飛ばしたら助けてくれって返って来たんだ。
エレンはライザの救出に向かおうとする僕を制止していた。
「ライザを助けにいきます」
「無理、あんたには王としての責務があるはずでしょ」
「僕が守りたいのは、王の座じゃなくて、ふがいない王を支えてくれるみんなの方なんだ!」
だから急いで装備を整え、ステータスウィンドウを開いた。
ライザは九つあるダンジョンのうちの一つにいるみたいだ。
そのダンジョンは僕がいる東京方面から中央山岳部にあるようだ。
大丈夫、アオイの魔改造によってステータスがバッキバキの僕なら、小一時間でつく。
だから僕は吹き曝しのホテルの屋上へと向かい、向かうべき方角を確かめた。
「待って、本当に行くつもりなら一ついいこと教えておくわ」
エレンはライザの救出に向かおうとする僕をなおも引きとめる。
焦燥感を募らせつつ、エレンの話に耳を傾けた。
「なんですか」
「この大陸にある九つのダンジョンのぬしの竜は、みんな勇者スキルを無効化できるわ。タケルのレベルはいくつなの?」
僕? 僕のレベルはたしか。
「今はレベル5ですね」
「……は? なんでそんなに低いの?」
「ちょっと色々あって、レベルが初期化したんですよ」
エルフの大陸の騒動で、僕はウルルの退化の唄をくらい、レベルが初期化していた。
どうやら一時的な効果じゃなかったらしい。
「けど、大丈夫ですよ。今回はあくまでライザの救出が目的ですから」
「はぁ、いいわ、行って頂戴、あんたが不在の間は私がこの国を仕切るから」
えぇ、まぁ、あまり羽目外し過ぎないようお願いします。
と言うと、エレンは眉根をしかめていた。
「今まで腐ってたあんたには言われたくない」
して、僕は足に力を籠め上空にジャンプ。
その後はアオイの魔導グライダーを使って一路特級ダンジョンへと向かった。
◇ ◇ ◇
魔導グライダーで特級ダンジョンの入り口付近の上空まで近づくと。
そこには飛竜の群れが大挙としているみたいだった。
遠巻きに黒々とした竜の群れを視界に入れた時は、何だと思った。
接近する僕に感づいたのか、飛竜の群れは灰色のものを筆頭に僕の方へと近づいて来る。そこで僕は魔導グライダーを片手で操りつつ、アオイから貰った煙幕を飛竜の群れ目掛けて投げた。
「ソォイ!!」
煙幕は飛竜が吹いた火炎に飲み込まれ、爆発音とともにカラフルな煙を四散させる。
僕はグライダーから手を放し、飛竜に見つからないよう地上へと降り立つのだが、地上は地上でティラノサウルスのような竜種がぞろぞろとしていた。とっさに上空でも使った煙幕を地上に張るのだが。
竜種の中に風魔法を使える個体がいたみたいで、煙幕はつむじ風と共に払われてしまった。
「えぇ……さすがにこれは聞いてない」
「……グルルルル」
そして僕は数多の竜に囲まれ、絶体絶命のピンチに陥るのだった。
しかし、僕に歯牙を剥いていた竜たちは突如として――ッ、雷撃に打たれる。
これはひょっとしなくてもライザの雷遁スキルじゃまいか。
「タケル」
背後から僕の名前を誰かが呼び、振り返ると、ライザがいた。
「ライザ、よかった。無事だったか」
「タケルへの返信は、私なりの鼓舞だったからな。お前ならきっと駆けつけると思っていた」
ライザと深く抱擁しあい、互いの無事をたしかめる。
ライザは抱き心地がよくて、安堵から眠気に襲われる。
そう言えば、ここんとこオールナイトでエロゲしてたっけ。
「とりあえず君が無事だったのは幸いだ、今すぐ安全な場所に避難しよう」
「……タケル、この大陸にあるダンジョンの話は聞いてるか?」
「ああ、願いが叶うって聞かされた」
「嘘か本当かは知らないが、もしも事実だった場合」
もしもエレンの話が本当だった場合、それは脅威だと僕ですら思う。
「話が本当だった場合、私どもの方で処理しなくてはなりませんわね」
ライザの横に居たナナもそう思っていたみたいで。
加えて言えばその場にはランスロットもいる。
「ランスロットは、どうしてここにいるの?」
「僕はライザを手伝ってるんだよ、一人の友人としてね」
心に魔王リィダをとりつかせている彼がそう言っても信用できない。だが、今までライザの雷撃にひるんでいた恐竜たちは業を煮やしたかのように僕らを襲い始めた。
今は会議する状況ではない。
三人にならって武器である剣を腰元から抜くと。
「そこの御三方、お待ちになられよ」
竜種の群れの奥手から、聞き覚えのある声がした。
竜たちはその声を畏怖し、自然と道を開ける。ライザたちに守られる格好で陣形の中央にいた僕は、竜種が自然と道を譲っている彼女たちの姿を見て、危機感を霧散させたよ。
「ノアか」
ちゃっちい造りをした恐竜の着ぐるみを装備した大陸の女神ノアはいつもと変わらぬ表情で僕らと対峙するのだった。
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