第127話 知能の薬、だお
ザハドとケヘランは僕の願いを聞き入れ、先生になってくれた。
ケヘランがケイトにその報告をすると。
「なら、私の方からも講師を派遣しよう」
「よろしいんですか?」
「君が教師になるなんて、あの頃は想像できなかったな」
学校にはオークのザハド、アント種のケヘラン。
それからエルフの講師が着任するようになった。
人間はどこいった!?
しかし、二人の優秀な人材を欠いたことにより、問題も起きた。
「大将、ケヘランを現場から奪わないでくれないか」
この国で大工を務めるブランカがケヘランを返して欲しいと言っていた。
ケヘランはアンディの手で蘇っていこう、ブランカの助手としてつけていたからな。
「ケヘラン本人に掛け合ってくださいよ、と言いたいですが、彼女じゃなきゃ駄目なんですか?」
「ああ、彼女のように仕事が早くて繊細は職人はそうそういないよ」
ケヘランは器用な性格だったらしい。
アント種としての長所なのかもしれないな。
「ふーむ、グウェンはどうやってザハドやケヘランみたいなモンスターに知性をつけたんだろう、そこさえクリア出来ればこの国だってますます栄えるのに……よし、二人に聞いてみるか」
と、席から立つと。
「午前〇時になりました、お休みください」
自己管理として運用し始めた自動精霊から休息を取るように言われた。
そうだよな、体を大事にしないといけないし、今は二人も寝ているか。
歯磨きをして、顔を洗い、僕はベッドの中に入った。
「自動精霊、電気消して」
「お休みなさいタケル」
と言うことで消灯、就寝。
……カチャ。
しばらくすると、部屋の扉が開いたような気がした。
◇ ◇ ◇
翌日、僕は巷で噂のオーク先生の授業を見学しにいった。
ザハドは街にもともとあった学校施設を利用して、子供たちに授業している。
居並ぶ子供たちの中には、ライザの末の弟のロンもいた。
「サタナには様々な文字が存在します、皆さんにはサタナの共通語と言っても過言ではないサタナギア語を学習してもらいますよ。宿題も出しますが、頑張って取り組んでください。その暁にはちょっとした魔法が使えるようになりますからね」
……そう言えば。
「あのさ、オーク先生」
「なんでしょうかアンディ」
「俺、勇者召喚されてから色んな文字が読めるようになったんだけど、これって」
「これは学説の一つですが、召喚された勇者は儀式のなかで言語野が発達するらしいですね。そのために勇者は私たちとお話が出来て、この世界のあらゆる文字が理解できるらしいのです。なんでも勇者召喚の儀式においてもっとも重要視されているのが言語野の――」
え、えぇ?
僕たち勇者って、知らない間に異世界言語を覚えてたの?
「タケル? そこで何してるの」
「ケヘランか、ちょっと授業の様子を見学に来たのと――君達がどうやって人間の言葉とか理解できるほどの知性を持ったのか知りたくてさ」
「えっと、確か私はグウェン様にお薬を頂いたわね。グウェン様は元々モンスターとも会話できるようなお方だったけど」
「その薬の製法とか知らない?」
「さぁ、さすがにそこまでは」
「一度グウェンに会いに行ってみるか、ありがとうケヘラン」
「待ってタケル、別れる前にキスさせて」
ケヘランは僕の胸元に手をやり、多少強引にキスをしてくれた。
「ケヘラン、頑張って」
「貴方もね、タケル」
ケヘランはきびすを返し、上々気分で教室に向かった。
それはいいのだが、僕とキスした後にアント種の姿に戻らないでくれるかな。
だが今は、グウェンから件の薬の製法を教わるのが最優先。
その薬を使って僕はアント種と交友を持ち、彼らを雇い入れたいんだ。
『アンディ、放課後、伝説の木の下で待つ』
アンディにDMを送って、学校が終わるまでの間仕事に戻るか。
その足で拠点としているホテルに帰る。
玄関ロビーにはトオルくんがいて、手を振っていた。
いやー、幼馴染とは、実にいいものですねぇ~。
トオルくんの正体は実は女で、ひそかに僕のことを想っていた。
とかならさらにいいんですんがねぇ~。
「タケル」
やましい妄想を抱いていると、僕の初めての人、ウルルが声を掛けた。
「どこ行ってたの? まだ安静にしてないと、ってみんな心配してるよ」
「それもそうだね」
「これ、エレンから、お見舞いの品」
言われ、手提げ袋の中を覗くと見覚えのある瓶が入っていた。
一度飲んだことあるけど、爽快でまろやかな味わいが最高だった。
そのままウルルと一緒にホテルの高層にある僕の部屋に向かう。
部屋の前にたどり着くと、ウルルが手で僕を制止していた。
「中に誰かいる」
「ヒュウエルだったりしないかな」
「誰かはわからないけど、タケルは後ろに」
ウルルに庇われるほど、今の僕は衰弱しているように見えるのか。
彼女はちゅうちょすることなく扉を開け、中にいた人物を言及した。
「ここに何の用? そこはタケルの専用席だよ?」
部屋の中にいたのはライザの妹のウェレンだった。
彼女は僕の席に腰を落ち着け、パソコンモニターに向かっていた。
「すみません、ちょっと興味があって、今出ていきます」
焦った様子のウェレンは僕たちの脇を走り去っていく。
「……あの子、スパイだったりするの?」
ウルルはウェレンに懐疑心を覚えてしまったようだけど。
「いや、業務に使ってるのはステータスウィンドウだし、パソコンにはエロゲくらいしか入って……」
と、ウェレンが弄っていたパソコンのモニターには、やっぱりエロゲ画面が映っている。
これは僕が日本から去る前にやっていた超大作の一つだ。
『ああっ、タケルの……熱い』
このHシーンは終盤の方で見れるイベントだったな。
察するに、ウェレンはこのゲームをかなりやりこんでいるみたいだ。
なんか、親が子供の持っているいけないゲームを見つけた時の心境になった。
そっ閉じ。
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