第四の勇者スキル 編

第125話 旅立つヒュウエル、だお

「タケル、先ほどのアオイの放送は?」


 某日、妹のアオイが独立した。

 ダニエルはアオイの放送に哄笑をあげ、私も一旗あげてみるかといい立ち去った。


 アオイが放送した内容に国民から多数の質問がよせられる。


 あれは妹の冗談だと返答するわけにもいかず。


「ライザ、僕はもう駄目かもしれない」


 自室で文字通り頭を抱え、訪れたライザを心の支えとしていた。


「平気か?」

「アオイの話によると、この大陸の西は私たちの陣地だからねって言ってたよ」


 それは日本で言うところの西日本、静岡あたりから西側に国境線を勝手に引かれた。

 すると、コンコンコンというノック音と共に、ある人物が自室に訪れた。


「どうぞ」

「……元気にしてるかタケル」

「ヒュウエルじゃないですか、どうして」

「ちょっとお前に頼みがあってな」


 見ると、ヒュウエルはリザさんを同行していた。

 僕は彼女に会釈して一応二人を席に通した。


「頼みってなんですか?」


 時間が惜しかったので、単刀直入に用件を聞く。


「お前に、あの店を譲ろうと思ってな」

「それってヒュウエルが営んでいた王都の酒場ですか?」


 ヒュウエルは首肯して、僕に微笑みかけた。


「いずれにせよ、あの酒場の後継者が必要だったんでな。リザが蘇って、俺たちはもう王都にはいられなくなった。俺はこれからリザと共に世界各地を旅することに決めたんだよ」


 と言われても……。


「僕は僕で問題が山積みで、とてもじゃないけど酒場の切り盛りはできない」


 と言うと、隣にいたライザも続いて発言した。


「私もタケルと共にこの障害を乗り越えなければと考えている、ヒュウエルの酒場は他の誰かに一任してやって欲しい」


「それならそれであの店はそのまま放置する、悪かったな時間取らせて」


「待ってくださいヒュウエル」


 ヒュウエル、僕はどうしたらいいんだろうか、バブバブ。


「なんだよ?」

「実は今、大きな問題に頭悩ませていて、ヒュウエルだったらどうするのか聞いてみたいんです」


 かつてのように、僕はヒュウエルを頼った。

 思えば僕は以前、ヒュウエルに人生相談をよくしていたな。


 ヒュウエルは僕が苦悩している様子を気取ったのか、あの時のように優しく微笑んで。


「知るか、テメエのケツはテメエで拭え」

「ですよねー!」


 まったく、どいつもこいつも使えないですお!

 しかし、だお。


「四月一日に、この国で初めての祝祭を開くんです。それまでは滞在したらどうですか?」

「……わかった、それまでの間は、この大陸のどこかに居ると思うぜ」


 と言い、僕たちの国を祝ってくれるつもりみたいだ。

 ふふ、ヒュウエルと言えば知る人ぞ知る、英雄。


 彼と交友を持っている僕は、アオイちゃんちーに一歩リードしている気分だお。


「あ、リザさんにはステータスウィンドウをあげておきましょうか?」

「貴方のスキル? くれるのなら貰っておくわよ?」


 リザさんはどこかエレンと似ている感じがした。


「それじゃあな、四月一日にまた会おうぜ」

「お待ちしておりますよ、ヒュウエル」


 さてと、このことをエレンに伝えなくちゃ駄目か、はぁ。

 気が憂鬱で、目の前が真っ暗になったと思えば、ライザの慌てた声がした。


「タケル!? 平気かタケル、タケル!」


 その日、どうやら僕は疲労が蓄積して倒れてしまったみたいだった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る