第124話 妹の独立、だお

 業務をこなしつつ、ウェレンを自室で待っていると。


「失礼します、タケル、今回妹たちを秘書にするという話は本当ですか」


 ウェレンたちの姉であるイヤップが駆け足で聞いてきた。


「本当だよ、ちょうど専属秘書が欲しくなって、たまたまロビーに居たから」

「妹にそのような重役はまだ出来ないと思います」


 そう、なの?


「でもこれも何かの縁だし、僕は今回の話を無下にできないな」


 イヤップの後ろにはウェレンとティトが立っていて。

 彼女たちはイヤップの物言いに委縮しているようだ。


「……妹たちを雇い入れるのなら、ちゃんとした教育を受けさせてください」


 教育か。


 国をつくる上でも、人の教育は重要課題になって来るよな。

 多方面の教育部門も設置したいし、現在だとこの国にはヒーラーが不足している。


 ヒーラーというか、要はお医者さんね。


 にしても、話題それるけど。


「ティトのその恰好はどうしたの?」


 ティトはアオイと同じ感じで、恐竜の着ぐるみを着ていた。


「アオイが友情の証にプレゼントしてくれたんです」

「ふーん」


 ティトの恰好を再度覗ったイヤップは、ことさら言及した。


「妹たちはまだこの世界に不慣れで、とてもじゃないけどタケルの秘書は無理ですよ」


「本当にそう思う? 仮に、ウェレンたちを僕の秘書として向かい入れたら、業務は教えるし。人には得手不得手がある、ウェレンは接客が苦手なんだから、僕は別にいいと思うけど」


 と言うと、イヤップは口をつぐんでしまった。

 イヤップの代わりにウェレンが発言する。


「姉さんもタケルさんの秘書がしたかったとか……?」

「私は、実質的に彼の秘書だから、そこまでは」


 そう言えばウルルとかイヤップには雑務をお願いしてたな。

 ウルルは疑問を覚えない性格っぽいから、特に何も言わないけど。


 と、そこに、空気を読まない我が妹が乱入する。


「お! 兄ちゃーん! お願いがあるんだYO」

「今取り込み中だけど、何?」

「前々から言ってたと思うけど、私、独立することにしたから」

「初耳だよ、独立する前に建国記念の祝祭を成立させてくれないか」


 それに独立って、何をするつもりなんだYO!


「それはそれ、これはこれ、あ、ティトもいるじゃん、ティトは私がとっぴね」


 と言い、アオイは強引にティトを手繰り寄せる。


「じゃあねお兄ちゃん、四月一日にまた!!」


 ちょ、アオイ……ちょ、待てよ!


 お前がいなくなったら、僕の国の一大産業にしようとした魔導エンジン計画がぱーになる。という思いもむなしく、アオイちゃんちーはずどどどと爆走して嵐のようにいなくなった。


 まぁいつもの暴走だろう、と、高をくくっていた翌日。


 それはお昼に起こった出来事だった。


 僕はいつも通りバイキングで昼食を摂っていると、王都の軍神ダニエルが相席する。


「国づくりは順調かなタケル殿」


「まぁまぁですよ、ただ国のために学校施設を作りたいという願望があるんですが、そのためにはどうすればいいのか見当つかなくて」


「王都には学校もちゃんと存在するぞ」


 だから何だ、そう言いたくなる。ダニエルはこの国と王都をどうしても結び付けようとする、実際、国の構成は半数が王都出身だから、その傾向は日を追うごとに強くなっていく感じだった。


 王都に浸食されているという恐怖を覚えていた時、ふとステータスウィンドウが自動的に開いた。


『皆さん、愚劣な王の妹こと、アオイです。今回は皆さんの時間を少し頂いて、私の国を紹介させてもらいます! 私は常々、兄に酷使され、体はズタボロ、心はドッロドロになってしまいました』


 何かと思えばアオイが強制的にステータスウィンドウを起ち上げさせて、宣伝している。


 しかも私の国ときたもんだ、昨日言ってた独立ってこういうことかよ!


 以降、この国は早速分裂し、三つの勢力に分かたれてしまった。


 一つは僕を王とする――ジパングという国と。

 もう一つはアオイを女帝とする――ミヤビという国。


 そしてもう一つはダニエルを始めとする王都の人間が作った分国だった。


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