第122話 アオイの魔法、だお

「タケル殿、失礼します」


 翌日、僕は今日も今日とて王の業務を行う。

 今回は不動産担当のザハドが訪れた。


「先日の建国記念を祝う祭りの闘技大会の会場建設ですが、ブランカの話だと早くても一か月は掛かるということらしいです。祝祭の日程はどうしましょうか?」


「うーん、闘技大会の会場建設は一か月先か。他の企画の準備も並行して進めるとして、おおよその日程は四月一日にしようか? 四月一日を目標日として、それまでにすべての準備を終わらせるよう通達しておくよ」


「お願い致します、それと肝心の国名はもうすでに決まっているのですか?」


「うん、大体は。四月一日に発表しようと思ってる」


 ザハドが一人で来るのも珍しいし、アオイの様子でも探っておくか。


「アオイはどんな様子なんだ?」

「アオイは以前より腑抜けてしまった感じに見えますね」


 以前もヒキニート気質だったアオイがさらに腑抜けると、どうなるんだろう。


「アオイはご友人と毎日遊んでいる印象にあります」

「遊びたい盛りだしなー、アオイは」


 ちらっと時計を見ると、時刻はお昼時を示していた。


「どうかなザハド、僕とお昼一緒にしない?」

「喜んでタケル」

「ちなみにさ、飯屋とか出してる事業者はどれくらいいるの?」

「今現在ですとおおよそ二十名ですね、まだまだ不足しています」


 フハハハハ、我が大陸の飯屋は二十店舗を超えたぞ。

 どうだ、凄かろう(凄くない)。


 ザハドと一緒にホテルのバイキングに向かうと、ライザの末の弟ロンがいた。

 ロンは他の子どもたちに交じるように無邪気にしている。


「あの子もさっそく打ち解けたみたいでよかった」

「……こんにちは」


 で、バイキングのお皿とトングを手に取ると、ライザの妹のウェレンが給仕していた。

 綺麗な薄灰色の毛並みが美しく、姉のイヤップに似て行儀正しい。


「ウェレンもここで働き始めたの?」

「そうです、ジュードさんが人手が足りないと言っていたので」

「ジュードが?」


 ジュードの奴、なに勝手に人雇ってるんだよ! まぁ、ナイスな人選だと思うけど。


「その節は大変お世話になりました」

「いや、僕は特段なにも」

「兄のライザは常々タケルさんには感謝していると言っています」


 いや、その、はは。

 ウェレンはお礼を言った後、他の客の対応に去っていった。


 隣でその光景を見ていたザハドは、バイキング料理を手に取りつつ。


「グウェンも今の貴方ならきっと見直すことでしょう」

「そうかな?」

「えぇ、グウェンは元々動物好きの神ですから。あの娘のような獣人は特に」

「なら自分で助ければいいじゃんとは思う、その力はあるんだし」

「神には神の事情があるのですよ」


 神と言えば、この大陸の神のノアはどうしてるんだろ。

 と思えば、ノアはバイキングの一角で昼食を摂っているみたいだった。


 が、よくよく見るとあれノアじゃない、家の妹のアオイちゃんちーじゃまいか。


「アオイ、その恰好どうした? 他のみんなも」


 アオイとその友人数名は、ノアが着ているような恐竜の着ぐるみを着ていた。


「最近の流行りなんだ、お兄ちゃんも着る?」

「いらん!」

「じゃあザハドは着た方がいいよ」


 アオイに着るように促されたザハドは、丁寧に断るのだが。


「だめー、ザハドは絶対似合うから着て頂戴――カーズアーム!」


 カーズアーム? アオイが謎の言葉を発すると、ザハドは着ぐるみ装備になっていた。


「呪術魔法ですかアオイ」


 ザハドは嘆息をつきながらそう言う。


「レベルアップしたら覚えたんだ、お兄ちゃんもいっぺん着てみる?」

「やめてくれ」


 アオイ、いつの間に魔法なんてものを使えるようになったんだ。

 お前、能力が上がっていく割りには、中身が堕落しきってっぞ。





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