第114話 策士のモニカ、だお

 ふあ……ふああ! そん、な……! アッ――――――!


「二人とも、もういいかしら?」

「ありがとうエレン、おかげでタケルも落ち着いた」

「いいのよ、リンの好きにしたらいいの」


 リンとの秘め事を終え、しばらくするとエレンがコーヒーカップ片手に戻って来た。それとこの街の新聞屋が発行している新聞紙も手に入れたみたいで、二人はさっそく僕の部屋を占拠し始める。


「ざっくばらんに街見てきたけど、ここでいいわよもう」

「いや、ここは僕の部屋ですしおすし」

「じゃあ隣の部屋は空いてる?」

「一応空いてます」

「私たちの住まいはそこに決めたわ」


 にしても、エレンの言う通り、不動産についての権利もそろそろ考えないとな。

 今は早いもの勝ち状態ではあるが、そうも言ってられないだろう。


 不動産管理の担当はなんとなく、ザハドが適任だと思えた。


『ザハド、今から僕の部屋に来れないかな?』


 DMを送ると、ザハドは以下の返答を寄こした。


『ただいま参りますので少々お待ちください』


 ヨシ!


「エレン、今からこの部屋にオークが来ますが、仲間なので攻撃しないでくださいね」

「オークが仲間? あの野蛮種を手なずけるなんて、すごいじゃない」

「違いますよ、彼は神であるグウェンの所の兄弟子です」

「あっそ」


 もっとリアクションくれないかな、エレンは猫のようなお人だよ。

 コンコンコン。


「失礼します……こちらの二人はどなたで?」


 ザハドがやって来ると、室内でくつろいでいた二人を気にかけていた。


「あたしの名前はエレン、そっちがリン、実質的にタケルのオーナーよ」

「ああ、暴虐邪知のエレンと淫乱ビッチのリンの二人ですね、話は聞かされております」


 あ、えっと、僕、急用が入ったみたいなんでー、今日はこのへんで。


「いい根性してるじゃない」


 その日、僕はザハドの失言によってエレンとドッカンバトル。

 エレンは軽やかに僕をフルボッコにして、ザハドを震え上がらせていた。


 ◇ ◇ ◇


「その顔はどうしたタケル」


 ライザか、お腹減ったよね、はは……。

 エレンにボコにされて、夜になり食堂へと向かうと。


 食堂ではウルルやイヤップが率先して給仕していた。

 しかも何故かメイド服姿だ。


「なんか急に人増えたね」


 食堂には大勢の人が今夜のご飯を頂きに集っている。

 僕はすかさず自動精霊を発動させ、ウルルとイヤップに近づいた。


「二人とも、お疲れさま。あとは僕が引き受けるから休んでいいよ」

「いいの?」


 ウルルが澄んだ瞳でそう聞くと、僕はもちろんだと答えた。


「二人が朝から働きっぱなしなのは知ってるし、休憩は必要だろ」

「それはタケルにも言えることなんじゃあないですか?」

「僕は、この国の王様だからね。色々やっておきたいんだイヤップ」


 そう言うと、ライザが隣立つ。


「タケルの言葉に甘えて、休憩するんだイヤップ」

「じゃあ、後は兄さんたちに任せる」

「それにしてもお前が今着ている服はどこで仕入れたんだ?」

「ハリーが秋葉原から見繕ってきたみたいよ?」


 ハリー、そう言えばあの人だけ役職らしい職を与えてなかったけど。

 聞くとミレーヌと一緒に街から竜種を退けているらしいし、まぁいいか。


「おいタケル!」


 と、その時がなり声をあげる嫌な奴とあってしまった。


「ジュード、それからゲヒムも来ちゃったのか」


 ジュードは魔王討伐隊に入った時の同期の勇者で、能力は爆弾生成で。

 雷頭の切れやすい若者だった。


「水臭いじゃないですかタケル殿、それがしたちも事前に誘って欲しかったです」

「えぇ? なんで?」


 ゲヒムはげっ歯類のような小柄の体格の勇者で、能力は位置交換。

 二人はこの大陸に来たことによって新スキルを獲得しているはずだ。


 ジュードはぞんざいな対応を受けると、軽く切れた。


「なんで? じゃねぇ! ここには綺麗な人がいっぱいいるらしいしな」

「エルフたちのことかな、まぁ殺されない程度に好きにしたら?」


 ……もしかして、ジュードたちがここに来てるってことは。


「君ら以外にも勇者いたりする?」

「あ? ああ、そうっぽいな。魔王討伐隊にいたごく潰しをちらほらと見たぜ」


 モニカめ、自国で処理しきれなくなった人材を寄こすとは、やはり策士だな。


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