第112話 アンディの友達だお

「屑様ー、あのさー」

「アンディ、部屋に入る時はノックを三回だぞ」

「悪い、やり直す」


 ハリーの後はアンディまで僕のもとを訪ねてきた。

 アンディには少し教養があったようで、やり直すといって部屋を一旦出る。


 コンコンコン。


「それでさー、姉ちゃんがさー」

「メグがどうしたって? はぁ」

「勇者召喚をさっそくやってみたいから、屑様に立ち合いをお願いしたいんだってー」

「へぇ、今から?」

「正確には今夜の〇時から明日の〇時の間、だってさ」


 ああ、勇者召喚の儀式って、二十四時間もかかるんだ。

 それは毎回疲労困憊になるはずだよな、以前マージャ辺りから聞かされてたけど。


「ちょっと今姉ちゃんに確認するわ、つってもこれ苦手なんだよなぁ」

「頑張れアンディ、お前はやれば出来る子」


 僕は僕で、この後予定していたこの大陸の調査をウルルとイヤップの二人に任せるようにお願いするDMを書かないとならない。書類仕事みたいなものが増えて行って、正直手がぷるぷるしますお。


「あ、明日の〇時付近に来てくれればいいみたいだぜ」

「わかった、必ずお伺いしますって返答しておいてくれよ。でさぁアンディ」

「なんだよ?」

「……アンディは寂しくないの? 同世代の子供がいなくて」


 そう聞くと、アンディは無表情で、僕の机に飛び乗った。


「屑様、俺もよく覚えてないんだけどさ、俺、未来からやって来たんだよな?」

「覚えてないのか?」

「そんな記憶があったような気がしたけど、忘れちゃってる」


 アンディは時間逆行した記憶が消えて行っているみたいだ。

 一瞬グウェンが何かしたのか? と憶測づいたけど、今はどうでもいい。


「俺は実の父親のあの人を助けるために、戻ったんだよな?」

「らしいな、ヒュウエルはそんな素振りみせないけど」

「ヒュウエルが凄いのは昔から聞かされてたからさ、俺も頑張らなくちゃな」

「にしたって、友達はいて欲しいだろ?」

「どうかな、この際友情なんてちっぽけなものだと思う」


 アンディのその台詞を受け、僕は深慮してしまった。

 僕に取って友情は大切だ、けど、アンディは他に大切なものがあるみたいだし。


 どうすればアンディの成長に、プラスになるのか判断がつかない。


『お兄ちゃん、既読ついてるよ!?』


 アオイの空気読めないDMにイラ星☆彡。

 しかしアオイの機嫌を損ねることは計画に支障をきたす。


『ライザはなんて言って友達を泣かせちゃったの?』

『私は色恋より、優先すべきことがある、すまないが今後は少し遠慮してくれ。って言って』


 あ、あー? んー? 要は失恋して泣いちゃったんだな。


『ライザが大変なのはお前も理解してるだろ? 友達のことは残念だったけど、ライザの言ってることも理解示してやってくれ』


『ライザくん、そう言いつつもナナさんは突き放さないよね、そこが駄目なんだよ』


 あー? んー? 確かにそれもそうだな。

 もしかして、ライザはナナのスキルで精神支配受けてたりする?


 ……待てよ。

 もしかして、ランスロットの中にリィダの精神がいるのは、ナナのせい?


「ふぅ、色々と考えちゃうな」

「屑様ため息ばっかりだな」

「まぁな、さっきの話の続きなんだけどさ」

「俺に友達は必要かどうかって話?」


「ああ、アンディのために王都の店にいる子供たち連れてこようかって思ったけど、アンディの口から言われるまではやめることにしたよ。だってアンディには僕という友達がいるしな」


 それが僕の彼に対する答え。

 僕はこの日をもって、アンディを一人前と認めた証でもあった。


 するとアンディは無邪気な笑顔のままこういったんだ。


「悪ぃ、俺、友達は選ぶことにしてんだ」

「帰れ!!」


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