第111話 てんてこ舞い、だお
エルフの虜になって、問題になっている人がいるらしい。
僕は直接その人を呼ぶことはやめ、ケイトとカイゼルの二人を自室に招いた。
僕の自室はホテルの最上階にあるオーナー室を仮住まいさせてもらってる。
赤い絨毯が立派な、豪華な一室。
ハリーと一緒に住んでいたスイートルームは、色々あってもう住めねぇ。
「失礼する、何用だろうかタケル殿」
「最近、僕の知り合いがエルフの虜になって、酷い扱いを受けてるって聞いたんですが」
ケイトたちは顔を見合わせ、目を丸くしていた。
「そうなのか?」
「らしいんですよ、そこでケイトたちにお願いしたいことがあるんだ」
「聞こう」
「今後もこういった細かいトラブルは起こりうるので、ケイトたちは治安維持に務めてくれませんか? たしか今は大工のブランカの指示をあおいだりして、各エルフたちに仕事割り振っている最中でしたよね?」
と言うと、カイゼルは大学ノートを取り出した。
「私たちの見立てですと、今後もこの大陸への流民は増加します。流民は仕事を求めてやって来るわけですが、彼らに仕事を紹介する役目は絶対にいりますよ。これ、私たちの方でまとめた流民の意識調査になりますので、後ででもいいですから目を通してください」
くそう、やることが増えたお!
僕が苦虫を噛んだ顔をしていると、ケイトが失笑していた。
「辛そうだなタケル殿」
「辛いよ、まだまだ大丈夫だけど」
「治安維持の件に関しては、それ専門の機関を作ればいいと思うが、私たちの方でやっていいのか?」
「元々騎士団長と、親衛隊の主任だった二人だからお願いしてるんです」
「ふむ、ならば一旦は引き受けよう。問題があった場合は都度に報告を入れる」
「すみません、お二人は本来ならもうちょっと静かに暮らしたかった所でしょうし」
と言うと、カイゼルはケイトの手を取り、今の幸せをかみしめているようだった。
「タケル殿、私たちは今辛くも苦しくもありませんよ、彼女と一緒にいられる毎日が嬉しいです」
惚気ないでくれないですかお! 二人には治安維持のための機関を発足する計画をまとめてもらい、後で僕も一緒になって内容を改めるということで話は終わった。あれれ? やること増えてない?
と、やや窒息気味になっている所に。
『お兄ちゃん、ライザくんが友達を泣かせちゃったんだけど、責任取って』
アオイからクソみたいなDMが来るし。
「おうタケル、いるか?」
「どうしたんですかハリー」
「前から言ってた、俺の酒場だけどよ、適当に作っていいか?」
「うーん、まぁ特別におk。ただ未成年への飲酒は駄目ですよ」
「どうして?」
「体に悪いからです」
ハリーはノックもせずに僕の部屋にやって来て、後々問題となりそうな提案をするし。
人数が増えるにつれ、国という組織は自然的に形作っていって。
王の役職である僕のもとには、どんどんどんどん、厄介ごとが舞い込んでくるようになった。
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