第109話 知り合いカムヒアー、だお
ノアが暇つぶしにやって来て、作業の邪魔をしていると。
ウルルがあるものに気づき、報告していた。
「タケル、竜種モンスターとは明らかに違う人たちがいる」
「え? 先住民って奴かな?」
ノアに目をやると、肩をすくめていた。
「少数ですが、私の大陸には人間もいるみたいですね」
「なんてこった、接触してみたい」
一応危険はないかどうか、ノアの反応から汲みたいので目をやる。
「いいんじゃないですか」
んー、どっちつかず!
ステータスウィンドウを開き、彼らが今の所敵対勢力ではないのを確認。
いずれは出会うと思うので、ここは僕を代表に数名のメンバーでコンタクトを取ろう。
し、しかし……先住民がいる場所は、どうやら僕とアオイの地元のようなのだが?
じゃあ一応アオイちゃんちーも連れていくか。
他にもアンディやライザ、ハリーにミレーヌも同行してもらって。
「じゃあ行くぞみんな」
「すまないねぇアンディくぅん。この後でいいことしてあげるからさ」
「萎えるから気色悪いこと言うなよ屑、じゃあ行くぞ」
僕たちは地元の街によく似た景観の、ショッピングモール屋上へと転移した。
そこには「SOS」と赤く書かれた巨大文字があって。
「だ、誰?」
アオイと同い年ぐらいの少女が、僕たちの突然の訪問に驚いていた。
アオイが後ろからひょっこりと顔を出して。
「……もしかして? ゆりちー?」
「え? もしかしてアオイ?」
アオイは少女と面識があるようだった。
「知り合いかアオイ?」
「私のマブダチ、ゆ、ゆりち――――――!」
おやおや、百合百合しいですなぁ。
いなくなった友人との感動の再会って奴か。
◇ ◇ ◇
アオイの友達のゆりちーさんの説明によると、ここには六十五名ほどの遭難者がいるらしい。当初、僕がこの大陸に参道した人数と同じ数だけ、地球から迷い込んだ人たちがいるとは、図られた感じだ。
「他のみんなはどこにいるの?」
「私たちは交代制でここから救助を待っていて、他の皆さんは大体は一緒にいるのですが」
一部、単独行動をとっている人もいるらしい。
まぁいきなり異世界に転移して、冷静になれないよな。
むしろ異世界に来て堂々とオナニーする馬鹿の顔を見てみたい。
今回、救助を待っていたゆりちーさんの案内でショッピングモール内の一角に向かうと、そこには休息を取っている人たちがいた。
「上村さん、その人たちは?」
「紹介します、こちらの男性は遭難者の指揮をとってくださっている氷山さんです」
氷山……って、同じ高校の同じクラスに通っていた当時の生徒会長じゃん。
「竹葉タケルです、たしか同じクラスだったかと」
「ん? あー、お前か」
「よかった、覚えててくれたんだ」
「クラスで随一のキモオタのタケルだろ? 懐かしいなぁ」
そんな火の玉ストレートぶっこんで来なくてもいいじゃん(´;ω;`)。
「前もって説明しておくと、ここは地球じゃない。サタナと呼ばれる世界だ」
「サタナ? どういった場所なんだ」
「長い話になるし、遭難者を全員集めて僕たちの拠点に行かない?」
と言うと、一部誤解した人たちが歓声を上げていた。
助かったぞー! なんて具合に。
しかし生憎だったな、僕たちは地球に帰る方法を知らないんだ。
その後、単独行動をとっていた一部の人たちとも合流し、僕は拠点としている東京に戻って来た。遭難者の顔ぶれを見ると、氷山を始めとし、僕の知り合いが半数を占めていて、残った半数はアオイちゃんちーの知り合いだった。
「……説明し辛いけど、ここは地球じゃない」
拠点としているホテルの食堂に遭難者を集め、端的にそう言うと。
「じゃあここは一体どこなんだ?」
遭難者の一人がとうぜんの疑問を口にした。
「ここは俗にいう異世界だよ、漫画やアニメで流行してたし、知ってる人は知ってると思うけど、僕たちは異世界転移に巻き込まれたんだお。今いる場所が日本列島のような感じなのは、ちょっと僕にも理由はわからない。けど、ここ以外にも大陸があって、そこの文明は良くて中世後期ヨーロッパレベルですお」
と、そこで僕は「ステータスウィンドウ」を開き、ここが地球じゃない証拠を知らしめた。
「これは僕のチートスキル、使えないようで使えるから、後でみんなにも付与するよ」
流れるように説明したが、みんなはしーんと静まり返っていた。
今まで遭難者を先導していた氷山も、現実を受け止めきれないと言った様子だ。
まぁ、普通はそうだろうな。
彼らにはおおむね地球に大切な存在がいて、突然離されたんだから。
郷愁の念を覚えようとも、故郷には早々帰れないことを直感的に気づいたんだと思う。
氷山は机に顔を突っ伏し、泣いているようだった。
「本当に、帰れる方法はないのか?」
「今のところはない」
答えると、アオイの知り合いらしき青年が発言する。
「別に帰れなくてもいーし」
「癇に障るからやめてくれよ、俺は地球に帰りたいんだからよ!」
地球に帰りたいと思っているのがほとんどだったが、中には帰りたくない人もいるようだ。この意思の違う団体を今までまとめてきた氷山は凄いと思う。その氷山は絶望から涙して、みんなの混乱をあおっているようにも見える。
「アオイ、私怖いよ」
「ゆりちー……私も最初は怖かったけど、意外となんとかなるよ」
と、暗い雰囲気で各々困惑している僕らの所にハリーがやって来た。
「タケルぅ、辛気臭ぇぞ。こいつら使えるようにみえねーし、いっそのこと放っておけばよかったんじゃねーか?」
「相変わらず失礼の極みみたいな男ですねハリーは。少なくともここにいるみんなは僕より有能ですよ」
「本当かよ? なら有能なお前ら、ちゃっちゃと自分のやるべきことを見つけろよ」
ハリーの言葉は辛らつだったけど、いい薬になってくれればなって思った。
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