第103話 ハリーの朝、だお

 その後、ハリー達とも無事に合流。

 僕たちは東京駅の近くにある豪華なホテルに泊まることにした。


「タケル、風呂あがったぜ」

「ふーん、僕は大浴場ですませたので、ハリーも気を楽にしてください」


 僕はハリーと同じ部屋に泊まっていた。

 高層にあるスイートルームの一室で、風呂から上がったハリーは白いバスローブ姿だ。


 モヒカンのハリー、バスローブ姿が妙に様になっているのにちょっと引いた。


「……ハリー、今から言うことは内緒にしててほしいんですが」

「なんだよ唐突に」

「ランスロットっているじゃないですか」

「ああ、あの野郎がどうしたよ」


 ランスロットの中にいる魔王リィダの話を切り出そうとすると、ハリーは備えつけの冷蔵庫にあったピンビールを取り出し、手刀でしゅぱっと飲み口を切り落としていた。


「ハリー、それには栓抜きを使うんですよ。危ないなぁ」

「で? ランスロットの野郎がどうしたって」

「……彼の心には、魔王リィダの精神がとりついているようなんです」

「ぶ! マジかよ」


 僕は真剣な顔で首肯すると、ハリーも真剣な表情をとる。


「今はランスロットの精神力を信じて、独りにしてますが、留意しておいてくださいね。それに僕たちに修行をつけてくれた師匠のグウェンが言ってたんです。リィダには改心の兆しが見えるって」


「世の中、知らねぇ方が幸せなもんもあるっつうが、ありゃ本当だったな」


「まぁ、余計なこと言っていたらすみません」


「いいんだよ、察するに、一人で抱え込むには無理だったんだろ?」


 ぐ、ハリーの癖に鋭いじゃまいか。


 ハリーは部屋の窓辺に立ち、夜の東京を一望し始めて。


「……タケルが、王都だとどうして不満面してたのか、この街見ればわかるぜ」

「僕はそんな顔してましたっけ」

「おう、僕は不幸な星のもとに生まれた屑人間なんですー、と言いたげな顔だよ」

「(´_ゝ`)」

「けど、今のお前の顔は、大きな夢に満ちた顔してると思うぜ、へへ」

「頭大丈夫ですかハリー」


 よく、男はロマンチスト、女はリアリストって言うけど。

 ハリーのはロマンチスト通り越して幻覚でも見てるんじゃないかと思ってしまう。


「まぁ、リィダの件は了解したぜ。ランスロットが妙な動きしねーよう見張るわ」

「お願いします、それじゃあ僕はもう眠いんで先に寝ますね」

「お、おう、はぁはぁするな」


 部屋かえようかな。


 翌朝、目が覚めるとハリーは隣のベッドで裸になっていた。

 僕は自分の身を案じるように確かめたが、どうやら何もなかったらしい。


 ハリーの枕もとを見ると酒瓶がごろごろと転がっていた。

 昨日の話よりも何よりも、彼がアルコール中毒にならないか心配だお。


「自動精霊、お早う」

「お早う御座います」


 おお、この自動精霊とやらはあいさつし返してくれるんだな。

 きっとアオイちゃんちーに頼めばもっと人間味が出てくるに違いない、うんうん。


「お早うタケル」


 東京の街に降り注ぐようかのような異世界サタナの朝日を目にすると、ミレーヌが窓越しに浮かんでいた。怖いお。


「ミレーヌ、危ないからこっち来て」

「大丈夫だから……ふふ、ハリーさん、今日もかっこいいね」

「お? お、おう、そう……だね」


 ハリー? 彼だったら大の字でベッドで寝てて、一物を朝立ちさせてるYO!


「ミレーヌはハリーを気に入った?」

「うん、好き」

「それはよかった」



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