第102話 TOKYO、だお

 ところで、僕たちと別れて秋葉原を探索している二組のパーティーはちゃんと昼食を摂っているだろうか? かつ丼を頬張りつつ、ライザにDMを送ってみるか。


『そっちは昼食摂ってる? 僕たちは食ってるけど』


『よくわからないが、いろいろな物が置かれている店に食べ物があった、これは口にしても大丈夫だろうか?』


 そこでステータスウィンドウを開き、ライザたちはコンビニにいることを確認する。


『基本的には食べても問題ないと思うよ、テキトーに漁って食っちゃっていいと思う』


『わかった』


 次は、ハリーのパーティーにDMを送ろう。


『ハリーは今どこにいますか?』

『俺たちは赤と白の鉄塔のふもとにいるな、ここはすげー所だぜタケル』


 赤と白の鉄塔? あそこまで行ったのか凄いな。

 まぁレベリングの概念のあるサタナだと、行けてしまうのか。


『ちゃんと昼食も摂ってくださいね、ハリー』

『おう、近くに美味そうなモンスターがいるから、それを狩って食うぜ、へへ』


 ハリーのパーティーは一番駄目みたいですねぇ。

 ところで。


「ランスロットは誰にDM送ってるの?」

「決まってるだろ、モニカだよ。僕は何かあるたびに彼女に報告しなくちゃいけない義務があるんだ」


 義務ですか、心中お察しします。

 ランスロットの中にいる、魔王リィダ、彼のことは本当に放置していいのだろうか。


 とりあえず、新大陸がどういう場所なのか、おおよそ理解したよ。

 隣にいるアオイちゃんちーは、蕎麦をずるる。とすすりながら僕を覗っていた。


「お兄ちゃん、それで、この後はどうするの?」

「東京駅に行こうと思う、出来れば電車つかって」

「電車ねぇ、なら私がクラフトで魔列車作るから、それで行こう」

「魔列車? いやいや、僕の自動精霊があれば電車の運行も可能だと思うんだよ」


 アオイとあーでもない、こーでもないと今後の方針を練っていると、アンディの姉のメグが席にやって来た。


「タケル様、聖女を代表してさっそくお願いがあるのですが」

「何?」

「勇者召喚の儀式に必要な建造物を、どこかに作って頂けませんか?」

「……なるはやで、じゃなかった、なるべく早くに用意するよ」

「お願いいたします」


 勇者召喚か。

 この上勇者を召喚すると、要らぬもめ事が起こりそうだけど。


 現状、この大陸にいる人数は六十五名しかいなくて。

 ここから人口を増やすには、他の大陸から誘致してくるか。

 もしくは、勇者召喚によって人数を増やす。かなんだよな。


 だから僕はメグの依頼を断らなかった。


 ◇ ◇ ◇


 昼食を摂り終えた後、僕は他三組のパーティーに対しミッションを与えた。

 その内容は東京駅に自力でたどり着け、というもので。


 僕とランスロットは比較的、旅を楽しむ形で東京駅についたし。

 方向音痴のアオイのパーティーも有能なザハドが先導して無事についていた。


 ライザやイヤップが先導しているパーティーも遅れてたどり着き。


 残ったのはハリーをリーダーとしたウルルもいるパーティーだけだった。

 時刻は夕方の五時に差しかかった頃のことで。


 それまでに往来の通りをいくどか謎の竜種モンスターが行き交っていた。

 竜種モンスターは力量差をはかったからなのか、人を襲うような真似はない。


 隣にいるランスロットは東京駅の広場に腰を落ちつけて。


「竜種は賢いからな、危険には近づかないようにする傾向にあるんだ」


 と言い、ライザや僕の見識を広めてくれる。


「ランスロットはやけに落ち着いているな、私はここの機能的で、発達した文明に腰を抜かしている」


「僕だってこんなに発達した文明の世界は初めて見るよ、ただ」


 ただ?


「波乱万丈な日々を過ごしてきたからね、何かに驚くとか、そういった気持ちが希薄になったんだ」


 それを耳にしたライザは、ランスロットに興味を持ち始めたみたいだ。


「できればランスロットの昔話でも聞かせてくれないか」

「いいよ、君とこうして語らい合うのも久しぶりだな、ライザ」


 この時の僕は迷っていた。

 ここは二人の兄弟に気遣って、退席すべきかどうか。


 でも、相手は魔王リィダだし、何かがありそうで怖い。

 やっぱりここは、二人を注視してなきゃ。


「(´◉◞౪◟◉)」

「タケル、顔が怖いぞ」


 ライザから生まれて初めて引かれてしまいました。


「にしてもハリー遅いな、ちょっとDMしてみるか」

『ハリー今どこですか?』


 とDMすると、即座に返信が来る。


『おお、すまねぇ。ちょっと竜種の群れと壮絶なバトルになっちまっててよ。へへ』

『無意味な殺生は働かないようみんなに伝えておいてくださいね!』



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る