第101話 新スキル【自動精霊】だお
神々の楽園にいる時、グウェンはリィダの存在を知っても特だった態度を取らなかった。しかしある日のこと、グウェンは剣を振る僕に特別な指導をさずけるといい、二人きりの時に教えてくれた。
「ランスロットの中にはリィダがいるようだ」
「……リィダって、魔王と評されていたあの人ですか?」
ライザやイヤップのお兄さんの?
聞くと、グウェンは首肯する。
「大変じゃないですか、グウェンの方で処置してくれませんか?」
「リィダだとて人の子、改心する兆しを見せていると俺は思っている」
「(´_ゝ`)」
「その顔は信じてないようだな、まぁ、私からは以上だ」
グウェンは剣の稽古をつけることなく、それだけ言い含めて最後こう言ったんだ。
「タケルには剣の才能は皆無である! ライザ、やはり最後はお前が頼みだぞ」
「あんた僕の何を知ってるんだって言うんだよ!? おおん!?」
っていうやり取りが実はあったんだ。
その説明を立ち寄った蕎麦屋で話すと、ランスロットは苦笑した。
「リィダが改心する兆しを見せているだって?」
「今の貴方はどっちよりなんだ?」
「……さぁな、俺自身判断がつかないよ」
俺は好青年だったランスロットであり、堕落した魔王でもある。
と言うと、彼は一言忠告をつけくわえた。
「ヒュウエルや弟たちには、このことは黙っておいてくれ」
「わかった、ならご飯にしよう」
「いいじゃないか、ここはそもそも何を提供している店なんだ?」
「一応蕎麦屋だけど、かつ丼食いたいからかつ丼にしよう」
「かつ丼? どんな食べ物なんだ?」
かつ丼とは、豚肉のロースを油で揚げ、卵でとじて白飯の上に乗せたもの!
しかし料理スキルも低い僕は、かつ丼を今回新しく得たスキルで作ってみることにした。
「スキル自動精霊、かつ丼を作ってくれないか?」
と虚空に向かって言うと、奥手のキッチンから揚げ物をするような音が聞こえ始めた。
「美味そうじゃないか、期待しよう」
じゅーじゅーという音と、かつ丼の匂いが客席に漂い始めると。
「みんあー、ここで休憩しよー、美味そうな匂いがするしー、ってあらら、お兄ちゃん」
なぜか妹のアオイちゃんちーパーティーもこの店に立ち寄って来る。
さきほどのざーとらしい台詞からさっするに、最初からつけてたな?
それに気取ったのか、ランスロットは額に冷や汗をかいていた。
「今料理してるのはお兄ちゃんの新スキル?」
「そうだよ、お前の新スキルはなんだ?」
「ひみちゅ」
ランスロットの隣に腰かけたザハドに目をやると。
「アオイの新スキルはリサイクルというものだそうです」
「人が秘密にしてたのに! なんで言っちゃうかなー」
どちらにせよ、僕とアオイのスキルは単体だと非戦闘系だな。
きっと神は竹葉兄妹に異世界サタナでスローライフを贈って欲しいと思っていたに違いない。
「かつ丼とやらが出来たみたいですよ、頂いてもいいですかタケルさん」
「いいけど……先ずノアが食ってみるの?」
「えぇ、ついでにギリーも食べさせて頂きます」
どうやって食べるっちゅうねん、恐竜の着ぐるみがよぉ。
ノアはほっくほくの湯気が出ているかつ丼の前で割り箸を使い、頂きますと日本のマナーに則ってかつ丼を神妙に食べ始めた。
「……美味しいです。私は日本とやらを評価します」
「ノア、私も頂きますよ」
だから着ぐるみ風情のギリーがどうやって食うっちゅうねん。
「どうぞどうぞ」
ノアが毒味してくれたのもあって、他のみんなもかつ丼を手に取る。
アンディやその姉のメグもかつ丼にほっぺたを落としていた。
「美味ぇ! 屑様は毎日こんなもの食ってたのかよ! ずりぃな」
「毎日は食わないけど、まぁ割と食ってたかな」
「あ、お兄ちゃん、私天ざるね。ザハドはとろろ蕎麦にしようか」
「自動精霊、悪いんだけどかつ丼二つ取り下げで代わりに天ざるととろろ蕎麦で」
と言うと、新スキルの自動精霊は嫌な顔せずに注文に取り掛かる。
これは……使えますねぇ。
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