第80話 流れ星、だお

「その手を放せ、タケル」


 ライザは怒りに身を任し、ユタを攻撃しようとしていた。

 沸点が低いのはライザの悪い所だ。


 僕はライザを押しとめた後、吹き飛ばされたケヘランのもとへ行く。


 開いたステータスウィンドウのケヘランの欄は、黒くなっていた。


「タケル殿、そのモンスターには触れない方がいい、君の手が汚れる」


 ユタはそう言い、僕に気遣ったつもりらしい。


「ユタは、僕たちを試すって言ったけど、それって悪魔に魂を売るような真似を指していたんですか?」


「君たちは見事に引っかかった、そのモンスターに心を許し、結果的に魂が穢れた」


「ユタには魂が見えるのですか?」


 問うと、ユタは冷徹な表情を取る。


「見えるとも、私は神意を授かった者だしな」

「少なくとも、僕の目にユタは口の減らない傲慢なクソ野郎にしか見えません」


 ユタに向かって悪態を吐くと、彼の配下であるカイゼルも腰元から剣を抜いた。

 ユタの隣にいたゼクスは状況に驚くこともなく、静観している。


「ライザ、ケヘランの遺体は回収できたし、一旦下がろう」

「……しんがりは私に任せて、タケルは行け」

「わかった」


 ライザの厚意に甘えるよう、僕は城の中央階段へと向かう。


「反逆者が出たぞ!! 取り押さえろ!」


 するとカイゼルが声を荒げ、城内にいた兵士たちを僕にけしかけるのだが、しんがりを務めると言ったライザの雷遁によって一蹴される。


「ユタ、僕は貴方達の戦争を、看過することができなくなった」

「その言葉は宣戦布告だと受け取ればいいのか?」

「少なくとも、貴方を許すつもりはない、貴方には罰を受けてもらう」

「タケル殿、君は私の良き友人の一人だ」


 ――それがここ数百年におよぶ私の生き甲斐の一つでもある。


「だから、モンスターや、地上にいる下賤民どもに穢されないで欲しい」


 ……彼がどんな顔をして、言っているのか見えなかったけど。

 彼の声音にはどこかしらの真実味があるようだった。


 その後、ケヘランの遺体を背負って僕は城内を走り抜ける。


 外に出るとカイゼルの声によって集ったエルフが居並んでいた。


「止まれ人間! 人間やモンスターがここに居ていい理由はない!」

「うるさい!」


 足に力をこめ、エルフの頭上を跳躍して超える……だけのはずだった。

 しかし思いのほか飛んで、いやすっげー上に飛び越えてしまい。


 僕は空島を一足飛びで脱出してしまった。


 三千メートルはある空島のさらに上空に向かい、息が凍りそうだ。


 というか、自由落下していく!!


「嗚呼ぁあああああああああああああああ!!」


 今の心境は、まるで流れ星気分だお!


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