第74話 ザハド「めいくあっぷ」だお

 ケイトによってダークエルフの首長達が集う場所に通された。


 総勢で九人の褐色肌のエルフが、ペルシャ模様に似たクッションの上に座っている。ケイトは九人の首長達それぞれにお辞儀をすると、彼らもその場で会釈して応えていた。


「この度はご足労頂き誠ありがとう御座います、私はゼクス様に仕える騎士の一人で、ケイトと申します。今回は首長様達にぜひともご紹介したい者たちがおりましたので、私の方から彼らの自己紹介をさせて頂きます。まずこちらにいるのが竹葉タケルといい、勇者の一人となります」


「タケルです(`・ω・´)ゞ」


 ケイトのかしこまった紹介に敬礼してみせると、首長の一人が敬礼し返してくれた。

 お、おれ、あの人のこと、す、好き、なんだな。


 白髪のショートカットで年齢は不詳、けど一見は僕達と同い年ぐらいの若さの一人だ。


「続きましてタケルの妹のアオイです、彼女も勇者で、この者たちは四人の勇者を中心としたパーティーとなります。狐面をしたライザ、イヤップも勇者で。それから白い長髪の彼女が――ドラゴンの化身であるそうです。名をウルル殿と言います」


 ドラゴンの化身の部分だけ強調した言い方だったな。

 首長達はその紹介を受けて、一斉にウルルの方に目を向けた。


「ドラゴンの化身だと? どの大陸の者だ?」


 首長の一人が尋ねると、ケイトは即座に答える。


「彼らは皆、神の一柱であるグウェン様の大陸に降り立った勇者です」

「末恐ろしい面子ですね」


 と言ったのは僕のお気に入りの、先ほど敬礼し返してくれた首長だった。

 声を聴く限りだと、女性? いや男性? うーん、どっちなんだい!?


 中性的なところもまたいい。


「それで、この中でもひときわ異質な存在であるオークは何者なのだ?」

「彼の名はザハドと言いまして、グウェン様のお弟子さんであらせられるそうです」


「ザハドと申します。私は見ての通りモンスターではありますが、長い修行の末、善悪の概念に囚われることがなくなりました。ですから皆様に危害を及ぼす考えは毛頭ありませんのでご安心ください……ですが、そうは言ってもこの容姿を忌み嫌う人も中にはおりましょう、ご安心ください、私は魔法に長けておりますので」


 と、ザハドは胸に片手をそえて誰よりも丁寧に自己紹介をすませた次の瞬間。


「おおお!? ザハドが人間みたくなった!」


 長身痩躯の青年姿になり、アオイが場をわきまえない驚愕の声を出していた。


「これで問題ありませんね」


 問題があるかないかで言ったら、ちょっとした杞憂は生まれたけどな。

 ザハドはアオイと仲がいいし、もしかして、という事態もありえるじゃないか。


 まぁ、それは二人の自由だしな。

 僕の恋人も人外だし、やっぱり僕とアオイは兄妹なんでしょうね。


 ケイトはオーク種ではありえない魔法を使ったザハドを筆頭に、首長達に胸を張るように言う。


「ご覧いただいたように、彼らは普通の手合いではありません。今回首長様達にお目通しした理由は、ご理解いただけたかと思います」


 その後、僕たちは九人の首長の紹介をされ。


「ゼクスと言います、ケイトは僕の騎士団の団長の一人なんだ。よろしく」


 僕のお気に入りの首長はゼクスという名前だと教えられた。


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