第64話 修行開始一週間後だお
ダランに連れて来られた場所にいたのは、王都の近郊にもいた低級モンスターだった。
アークを作ることも出来るアント型のモンスターや。
物理攻撃に強い、ミスト型のモンスターだったり。
後は日本でも有名なオーク種もいる。
「ここに居るものに、敵意はありませんので安心してください。それどころか、彼らは貴方達の兄弟子にあたる存在です」
僕はここに来る前、兄弟弟子のことはなんとなく視野に入れていた。紛いなりにも神を名乗るほどの実力者がためらいもなく僕たちを弟子にすると言った時点で、兄弟子ぐらいいるのだろうと。
その予感はある種当たっていて、ある意味、予想外。
せめて人間であれよなぁ……!
「ダラン様、この者たちは?」
オーク種の兄弟子が新顔の僕らを不思議に思い、素性を聞き出してから一週間後。
「く、殺せ!」
「アオイ殿、その台詞はこれで何回目だ、聞き飽きた」
「いやだって」
「いやだって、じゃない。君の兄のタケル殿はちゃんとやっております」
「お兄ちゃんはお兄ちゃん、私は姫騎士、どぅーゆーあんだすたんど?」
アオイは持前のサボり癖をはっきし、修行を怠っていた。
と言っても、ダランが僕らに課した修行内容が、魔との共存、であれば。
「く、殺せ!」
「いい加減にしてください」
オーク種の兄弟子、ザハドと遊んでいるアオイはあながち間違ってない。
一方の僕と言えば。
「グァー」
「ふむ、なるほど解からん」
アント型の兄弟子、ケヘランとの意思疎通を図っているが、何言ってるかわからん。
「グァー」
ケヘランは今、なんとなくだけどついて来いと言ったような気がした。
「グァー」
それを証拠に、ケヘランは少し先を行った後、再度同じ感じで鳴くのだ。
「ついて行けばいいんですね」
「グァ」
「それは肯定の意味ですね?」
「グァ」
一週間の時が経ち、僕はようやくケヘランと気持ちを通じあわせ始めた。
「タケル、ついて行っちゃだめ」
しかし、それは僕の誤解だったのかな? ウルルが僕を引き留めた。
「ウルルはケヘランが何て言ったかわかるのか?」
「ケヘランは貴方との交配を打診した、それはやっちゃいけない」
「どーいうことだケヘラン、僕を騙したな!?」
ウルルが止めなかったら僕はケヘランに襲われる所だった。
額から冷や汗を流し、ウルルがそばに寄ると。
「……人聞きの悪いことを、私はタケルの性的欲求を管理しようと思ったまで」
ケヘランは裸身の褐色美人に変貌し、人語を喋った。
視界に彼女の乳房、ふともも、くびれなどと言ったセクシーポイントが映り込む。
彼女の誘惑に悩殺されそうになると、ウルルが身をていした。
「タケルには私がいる」
「別にいいでしょ?」
「よくない」
ウルルの前身はドラゴンだったこともあり。
とうとつに訪れたモテ期に、なんか思ってたとの違う、との感想を覚えた。
「どうだダラン、そちらの首尾は順調か?」
「これはグウェン、ようこそ御出でくださいました。タケルたちでしたら、末恐ろしい才能を発揮しております。アオイを始めとし、本来なら三ヶ月掛かるところを、あの子たちは一週間で終えました」
「なるほど、見込みはある方だとは思っていたが、特に連中は成長期の最中にあることが幸いしたのだろう」
「然様ですね」
「次の修行内容は決めているのか?」
「……えぇ、それとなくですが、三人には試練を与えようかと」
「ふむ、こちらの修行も順調であるし、その試練に私からも一つ考案しよう」
気付けば監督役のダランの下にグウェンが訪れているじゃないか。
小走りでグウェンの下に向かうと、彼は鷹揚な笑みを浮かべていた。
「どうしたタケル」
「ライザとイヤップの二人は元気にしてますか?」
「私に聞くまでもないだろ、夜中こそこそとメールでやりとりしているだろうに」
たしかに、ステータスウィンドウ上での彼は元気そうだった。
「修行をサボる口実にしないで、しっかり励め」
「トゥフフ、サーセン。それで、ちらっと聞こえたんですが、試練って?」
「耳ざといなタケル、修行に試練はつきものだろ?」
いや、それは……どうなんだろう?
「そうですね、何の説明もなしに送り出すのもなんですし」
グウェンの言いようを疑問視していると、ダランが魔の修行場にいるみんなを集めた。
「何か御用で御座いましょうか、ダラン様」
ザハドは野蛮なオーク種なのに誰よりも礼儀正しい。
「この度、修行の一環として、貴方たちをエルフの大陸に派遣することにしました。彼の大陸では、今、魔の者と、神なる者による対立で分裂しております。貴方たちはエルフの大陸に向かい、今一度見極めてください」
――魔の者が、どのような存在であるのかを。
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