第54話 隠し子だお

 ドラゴンはライザに首をはねられようとも、それでも死ななかった。


 けど、その後ジュードやゲヒムの合体技で意識を失ったドラゴンに対し。


 竜の血を吸い、竜殺しの特性を持った不可視の剣で斬りつけると。


「誰だこの美少女!」


 ジュードはドラゴンの代わりに居た白髪の美少女を見て歓声をあげていた。


「よくわからないけど、倒れていたお」

「生きてるのですか?」


 ゲヒムの素朴な疑問に、美少女を腕に抱えていた僕は彼女の脈を感じ取る。


「生きてるみたいですお」

「ふーむ、恐らくその娘は、ドラゴンの化身ね。さっきタケルがドラゴンの血を身体ごと剣に取り込んだでしょ? その影響で、剣に竜殺しの効能が一時だけ付加されたのよ」


 エレンの説明によると、そういうことらしいお。

 以上ですお、僕らと魔王の戦争はこれをもって、終わりですお。


 って、思うじゃん?


「屑様! それからライザさんやエレンさん、あとその他!」

「おいガキ、まさかその他って俺たちのことじゃねーよな!?」


 アンディ――僕もクソガキとして認める所ではある彼が、魔王の戦場に突如として現れた。なぜアンディがここに? とその場に居た誰もが首を傾げていると。


「魔王は城を放棄して、王都を襲撃しているんだ! 今から俺と一緒に王都に!!」


 魔王の軍勢は、アークが陥落すると、王都を襲い始めたらしく。

 王都に残して来たアオイが心配になった僕は、青ざめた。


「アンディ、どうやってここに来れた?」

「詳しい説明は後だ! それよりも屑様、他の主戦力を集めてくれないか?」


 僕が今対峙しているのは、僕が知っているアンディとは違うようだった。


 口調も大人びいていて、何よりこんな真剣な表情を取る彼は初めて見た。


 その後、僕らは司令部のテントに場所を移し、総司令に掛け合った。


 王都は魔王軍に襲撃されている、だから一刻も早く王都に帰ろうと。


「伝令! 魔王城の中に魔王の存在はまだ確認されてないとのことです!」

「ふむ……どうやらアンディのいう事は本当のようだ」


 総司令の下に、魔王不在の一報が届くと、アンディは憤慨していた。


「早くしろよこの木偶野郎!! あんたたちはまた失態を犯すつもりか!? 何が魔王討伐隊だ! 最後は魔王に踊らされて、あんたたちは王都の民を守れず、地べたに這いつくばって嘘泣きするだけのペテン師だ!!」


「アンディ、止せ。王都に帰るには王家の人間の協力が必要だし、今どうこう出来る話じゃ――」


 総司令をペテン師呼ばわりしていたアンディをなだめるよう言うと。


 気付いた時には、僕は王都の我が家の一階にいた。


「うううう、早く、早く帰って来てお兄ちゃん……っ!」

「……ただいま」

「っ!? お兄ちゃん!? 生きとったんかワレェ!!」

「その台詞は間違いなくアオイだな」


 アオイは家の一階で両手を張り出し、手を震わせながら防御魔法を発現させていた。


 アンディの言うことを疑ったわけじゃないけど……これは一体?


「タケル! 無事だったか」

「ライザ? 君も帰って来たのか、どうやって?」

「タケルが消えた後、私は簡潔にアンディから説明を受けたが」


 ――どうやら彼は王家筋の隠し子だったらしい。


「ふぁ!?」


 その吃驚仰天もののニュースを耳に入れた僕は、ついつい陰キャオタの反応を見せてしまうのだった。


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