第52話 王都の復興が始まったお
家の軒先に集った労働者を。
「うわ、何するんだよあんた!」
「おっまえら小汚ぇんだよ! これを喰らって少しは清潔になれ!」
アオイはGのように扱い、無下にしていた。
たった今、三階に上がって来た勢いそのままに一階に向かうと。
「余計なことするなアオイッ!!」
「うわーん、お兄ちゃんが怒ったー」
そりゃ怒るだろ、彼らに逃げられたら王都の復興はさらに遠のくんだぞ。
「すみません家の妹が、あれは馬鹿でして」
「……ケホ、で? 兄ちゃん、俺たちはどこで何をすればいいんだ?」
「あ、いや、その」
えっとー、親方の所に連れて行くにしても、朝が早すぎないか?
「……皆さん、先ずはお腹を満たしませんか? 皆さんが軽食を摂っている間、して頂くお仕事の説明のための準備をしたいと思ってまして、すみません、ちょっとお時間取らせちゃうんですけど」
すいやせん、すいやせん。
集った彼らを前に、僕は低頭しっぱなしだ。
アオイは使えそうにないから、ここはウルルに頼んで間を繋いで貰おう。
「ウルル、この人たちに食事を提供してくれるか?」
「わかった」
OK、そしたら僕は親方の所に猛ダッシュだお。
「おう、大将、こんな朝早くからどうした?」
「親方、その、っ、格好は?」
親方の下に向かうと、何故かそこには美女がいた。
「俺も昨日ちと考えたんだがな? どうして人が集まらねぇんだろうなって」
「そ、それで? ちょっとお水貰ってもい、いいですか」
察するに、親方はアオイの新機能のキャラクリで姿を変えたな?
親方は職人業だったからか、キャラクリで作った美女のアバターも精巧だ。
やたら胸が大きく、お尻も目立つ、青毛の髪は艶がかかって、トゥルンとしていた。
「俺たちが求めてるのは男の労働者だ、この色香で釣れるんじゃねぇかって思ってよ。だーっはっはっは!」
「親方、愉快な所に水差すようですが、今から急いで僕について来てくれませんか?」
して、美女となった親方を連れて家に帰ると、双方の目付きが変わった。
「おお!? 大将、どうやってこれほどの労働者を集めたんだ!?」
――おい、もしかしてあの人がそうなんじゃないか?
――嘘だろ、あんな美人が俺たちの雇用主なのか?
そんな風に、自分のアバター姿に期待が寄せられ、親方も引くに引けなくなる。
「んん、今日からお前らと一緒に汗水流して、王都復興に務める、俺の名は……シオンだ!! よろしくな」
誰かが言った、こりゃ風向きが変わって来たぞ! と。
「大将、一先ずこいつらを使って、仮設の宿泊地を作りたいんだがよ? そのための資材と、あと食事についてはもう準備出来てるんだよな?」
「あ、ああはい、食事については提供しますし、王都の現状を知ってもらうために夕食は中央広場の炊き出しでしのいでもらえればいいかなって考えてます。資材に関しては僕かアオイか、もしくはウルルにいって貰えれば用意しますので」
その日から、死にかけていた王都は息を吹き返したかのように、復興が本格化した。
モニカが提供してくれた労働力は第一陣、第二陣、第三陣と、倍々で増えていく。
僕やアオイ、ウルルはそれぞれの現場で監督者と共にフル稼働し。
王都の八つあった地区の内、僕の家もある南地区はものの半年で整備されていった。
「タケル様、この度はおめでとう御座います」
「あ、キースさん、ありがとう御座います」
南地区の建て直しが終わると、王都では祭りが開かれた。
集った労働者や親方は、日々の疲労を晴らすかのように盛大に酒盛りしている。
僕に祝辞を言いに来たキースさんは、王室の警備を務めている老紳士その人だ。
「モニカ様より祝い状を預かっておりますので、どうぞお受け取りください」
「ありがとう御座います、あれからモニカ様の姿をめっきり見なくなりましたが、彼女は今もお元気でしょうか?」
「ええ、母子ともに元気そうで、タケル様との第一子であらせられるレッド様を寵愛しておられます」
ふーん。
「モニカ様は、いつ出産してたんですか?」
モニカはいつの間にかお腹の子を出産していたようだ。祭りの最中だったが、そのことを知らされた僕はキースさんと一緒に彼女の屋敷に向かった。屋敷のロビーでは四人の弦楽器演奏者が、軽快な旋律を奏でている。
「失礼致します、タケル様をお連れしました」
「どうぞ」
いつも通り、キースさんのノック後はモニカが中に迎える。
しかしいつもと違ったのは、彼女を取り巻く光景だった。
「あの、この度はご出産おめでとうございます」
モニカの隣には彼女が産んだ子供が静かに寝息を立てている。
「おかしなことを仰るのね、父親は貴方だと言うのに」
「ずっと不思議だったんですが、なんで僕を夫に選んだのですか」
功績? 才能? 将来性?
以前差し出された理由は、自分の中で消化できてない。
「……」
モニカは、瞼を瞑り、過去を回想しているようだ。
そして薄く目を開けたかと思えば、彼女はその理由を端的に打ち明けるのだった。
「それは、この子の父親が私に託した、遺言だったからです」
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