第44話 ここに誓うんだお

 先ず、僕が向かったのが酒場だ。


 酒場には行き場を失った家族もいた、僕でも、きっと何か出来ることがあるだろう。


「ハリー」

「おうタケル、何かいい方法ねぇかなあ?」

「何かにお困りで?」


 見ると、ハリーは中年の夫妻に頼みごとをされているようだった。


「こいつら、人手が足りないのなら、ここに住み込みで働かせて欲しいってさ」

「……つまり、お二人は働き口を探しているのでしょうか?」


 と、夫の方に尋ねると。


「はい、どうにかなりませんでしょうか」

「……お二人のお名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「私はアレクスと申します、妻の名はイーミン」

「とりあえず、今日の炊き出しのお手伝いして頂けませんか? そしたら報酬も出しますよ」


 僕は無計画に、その二人を炊き出しのメンバーに引き入れた。


「おいおい、いいのかよタケル? お前、自分で自分の首絞めてないかそれ」

「大丈夫だと思う、まぁ駄目な時はハリーに全てぶん投げるから」

「ふぁ!?」


 アレクスとイーミンには、知り合いという知り合いに炊き出しを行うことを広めてもらうことにした。場所は王都の中央広場で。王室から許可取ってないけど、このような事態なら許されるだろう。


「親方ー、よくぞ御無事で」


 次に僕は、僕の店を改築してくれた大工の工房に向かった。

 工房の長である親方は健在だったようで、一安心した。


「親方、お話を聞かせてくれませんか?」

「あー、何を聞きたい?」

「王都の惨状は酷いものですね、一体いくつの住宅が使えなくなったんでしょうか?」

「さあな、新聞を見ても戦争が終わったとしか書いちゃいねーし」


 親方が広げた新聞のトップ記事には、例のヒュウエルの写真が使われていた。

 僕もこの新聞が欲しくなり、後で新聞社に寄ろうと思った。


「で、本題としては、親方の下にどのくらいの人手と、どのくらいの資材があれば王都はいつ復興出来そうですかね?」


「……大将がどうにかしてくれるのかよ? 最低でも千人の人手と、それから金貨二億枚相当の資材が必要になってくるぜ? その希望を叶えても、王都が復興するにはざっと八年掛かりだ」


 人に必要なのはまず衣食住だ、親方はそのためには切っては切れない存在。

 その親方と予め面識が持てていたのは、幸運だった。


「大丈夫です、人手の方は一週間ぐらい貰いますが、金貨の方はもう用意があります。何なら資材不足の問題も僕やアオイに言って下されば、対応できますので」


「本気か大将? ってー、その目は相当本気だな」


「よろしく、お願いします!」


 思えば、僕が召喚されたこの街、王都には思い入れがあり過ぎた。たった半年ぐらいしか滞在してなかったけど、王都で大切な友人、信頼する冒険者や、失ってはいけない家族がいつの間にか出来ていたんだ。


 これはたまたま思い付いたことを切っ掛けに、思い描いた夢で。


 今日から僕は、王都の復興支援業に着手しようと思う。


 親方の工房を後にして、家に帰ると。


「屑様、無事だったぁ?」

「ねぇねぇ、屑様が戦争を終わらせたって本当?」


 家の一階にある店の長椅子には、懐かしい光景が再現されている。

 アンディと同じ年頃の子供たちが、店を憩いの場として占拠してるんだ。


「アオイ」

「なーにー?」

「王都を復興しようと思うんだ、そのためにお前の力は必要だ」

「んー、わかった。じゃあ私が代表で、お兄ちゃんは部長ね」

「何その絶妙な中間管理職ポジション、はげるわ」


 アオイは今でも取り掛かっていたゲーム開発を一旦中止すると、カウンター席から立つ。


「お兄ちゃん! 事態は最悪な状況だけど、ここを乗り切れれば、私たちの将来は安泰! だよね?」


「その通りだと思うお」


「なら竹葉アオイこと私は、一世一代の大仕事を完遂させてやるんだからね!」


 そうだ、その意気だお!

 アオイの闘魂染みた意気込みに、僕の体にやる気がみなぎって来る。


 僕たち、竹葉兄妹は今日から、王都復興の立役者になって。

 いずれは王室よりも権威を持ち、絶対的な地位を得ることをここに誓うんだお!


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