第35話 アーク攻略その二、だお

 エレンはアーク攻略に勇者は不可欠だと語った。


 何故ですかと、素面で聞くと。


「アークを守ってるモンスターのデータも解析済みなのよね。名前はホワイトファングドラゴン。スキルは憤怒の進化。能力値はざっとご覧の通りね」


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 モンスター名:ホワイトファングドラゴン

 スキル:憤怒の進化

 レベル:82

 能力値

 HP :33333

 MP :24000

 STR:45042

 INT:36001

 SPD:14081

 LUK:75000

 ……

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 これは、勇者スキルがないと倒せない相手だ。

 けどアークが効果するうちは、勇者スキルは使えない。


 誰かが囮になり、ドラゴンを引きつけている間、アークを破壊して。

 その後勇者スキルによってドラゴンを倒すしかなさそうだ。


「なるほど、だから勇者が必要なんですね?」


「そうそう、こいつの弱点の項目にも書いてあるのよね。弱点、特にスキル持ちを狙う傾向にある。ってね、だから勇者連中には囮を任せたいの」


 え? 囮役って、僕たちのことなの?


「頑張ってねタケル、それからライザ」

「スキルが使えない状態でこいつ相手にしたら死んじゃうじゃないか!」

「まともに張り合わなくていいの、アークを破壊するまで引きつけてくれれば」


 む、無理だお!


 しかし、僕がどう言おうともエレンが下した作戦内容は変わらない。

 それどころか、エレンは作戦の犠牲者候補をさらに募集し始めた。


「紹介するわね、今回の作戦の主人公たちを。端から順にジュード」

「うっす、ってあんたは!?」

「何? ライザくんとお知り合い?」


 同期の勇者のジュードを筆頭に、食堂テントにぞろぞろと勇者たちが集う。


 小動物勇者のゲヒムはテーブルの上に座り、哨戒任務で得た果実を頬張っていた。


「よろしくお願いしますです、タケル殿」

「……」

「私の顔に何かついておりますかな?」

「いや、そう言えばジュードや君のスキルを知らなかったなって」


 集った中には必殺のスキルもあるかも知れない。


「俺のスキルはボマー、能力値に応じた爆弾を生成、爆破することが出来る能力だ」


 集められた勇者を前に、ジュードは自己アピールをし始めた。


「それがしのスキルは身代わり、主にそれがしと他の対象の位置を交換する能力ですです」


 続いてゲヒムもスキルを教え、二人に続くよう勇者たちは自分のスキルを教え合った。わきあいあいとした空気にエレンは気分をよくし、拳をつくった右手を天にかかげて、景気付けのように。


「みんなで協力して、アークを守るドラゴンを倒しましょうね!」


 と言うと、勇者たちは聞き覚えのない単語に不安視し始める。


 ――ドラゴン……?

 ――誰が、ドラゴンと戦うの? 私たちだったりするの?


「エレン、一応みんなにも例の映像見せた方がいいんじゃないでしょうか」

「面倒ね――ステータスウィンドウ」


 ◇ ◇ ◇


 ホワイトファングドラゴンの映像を見せられた勇者たちのほとんどが作戦への参加を辞退した。エレンはふ抜けに用はない、ドラゴンと戦うつもりがないのならこの場から去りなさいと言い、彼らは結託して野営地を後にしてしまう。


「……ゲヒムは行かなくていいのか?」

「それがしに帰る場所はないと言ってもいいですからな」

「ジュードは? 無理に作戦に参加して死んでもいいの?」


 今まで寝食を共にして来た勇者を見送るなか、ジュードは男泣きしていた。


「くそう、告白する前に玉砕するなんてぇ」


 彼は野営地にいた女勇者の一人が好きだったみたいだ。

 僕の話などまるで聞かず、失恋の痛みに堪えている。


「だからよタケル」

「え、急になに」

「俺は今回の大作戦で活躍して、将来の恋人の目に留まりやすくする。お前には負けねぇ」


 ジュードは恋愛のために名声を得たい意向でいるらしい。


「さ、臆病者のお見送りはこんな感じでいいでしょ? 作戦決行の前に、四人の勇者にはアークのダンジョンの地形を頭に叩き込んでもらうわよ」


 はぁ、先が思いやられますお。





          ― 作戦決行まで、残り二日 ―

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