第21話 考え決断したお
……僕は何を思案しているんだ。
王女、モニカにライザのことを突き付けられ、不安になっている。
そう言いたいのだろうか、僕の心は。
「メール送れば? 送れるんでしょ?」
モニカが帰った後、夜食の席で妹からそう言われた。
「ヒュウエルはどう思います?」
僕と妹は最近三食がっつりとっている。
朝はアオイが王都のどこかで買って来た、軽食を。
昼と夜はたいていヒュウエルの酒場で外食三昧だ。
「……俺は行かねー方がいいと思うが、そう言えばライザの情報がないな。あいつは今頃どこで何してるんだタケル?」
それは僕の方が聞きたい。
「ふぅ、いよいよ、俺様の出番って訳だ」
「ハリー、このさい貴方の三文芝居は聞きたくないんですが」
「酷ぇなタケル、俺とお前の仲じゃねーかよ」
そう言うなり、ハリーはズボンを脱ぎ、下着姿でお尻を向け。
「キモ」
アオイの不快感をあおって、青ざめながらズボンを穿きなおしていた。
なんと言ったって妹は王都で最強の勇者、だからな。
こいつを怒らしたら、命がないぜぇ。
「でもよ、護衛ぐらい必要なんじゃねーか?」
「無駄ですよ、以前の僕みたく門前払いされるのが落ちだ」
「……タケル、無駄かもしれないが、お前にせんべつをやる」
ヒュウエルは磨いていたグラスを置くと、懐から小さな包み袋を取り出した。
「ライザにも持たせてやったんだが、そいつは俺が作ったお守りだ、今から肌身離さず身に着けてろ」
「ありがとう御座いますヒュウエル、いつも助かってます」
ヒュウエルにお礼を言い、施しを素直に受けようとしたら。
「待ちなお兄ちゃん」
アオイが包み袋を取った僕の手を掴んで制止する。
「ヒュウエルさん、貴方を信用していいんでしょうか、私は疑問です」
「つまりアオイもそれが欲しいってことか?」
「その通りでおじゃる、兄あっての妹、妹あっての兄」
アオイぇ……ちょっとはまともなところ見せてみろよ。
スキルは有能でも、頭が大変残念だお。
◇ ◇ ◇
「アッ――――――――!!」
翌日の朝は、目覚めが悪かった。
夢の中で色々と見てしまったのだ。
最初こそ、エレンやリンから言い寄られいい気分だったのだが。
途中からキモウトと化したアオイが怒り出して、ライザと決闘を繰り広げ黒こげ死体になり、ライザはそのまま暴走してヒュウエルやアンディと言った王都の連中を焼き払い、しまいにはハリーにトドメを刺されていた。
大事なものを色々と失ってしまった、そんな夢見だった。
「お早うお兄ちゃん」
「ああ、お早う」
「もしかしてだけど、夢の中で掘られた?」
家主不在の二階の居間で、妹からBL臭を仄めかされる。
気分としては汚されちゃった。って感じだお。
「……アオイ、今日はお店を休みにしようと思う」
「いいんじゃない? それより聞いて」
「何?」
アオイは表情をしかめていた。
何か嫌なことがあったようだ、おそらく、僕の今朝の悪夢同様のことが。
「私が愛飲しているトロピーなんだけどさ、なんかあの人が独占しちゃったみたいなんだよね、最悪!」
「あの人って、モニカ様のこと?」
「そう! 表面では普通ぐらいに美味しいって感じだったのに、昨日お店いったら売り切れで、なんでって聞いたら王室が全て買い取って行ったって言われて」
ふーん。
それが単なるジュースだったからいいけど、その調子で財産まで奪われたら最悪だな……ことさら言えば、モニカは王都のことを、私の都と断じていた。今想起したケースは、なくはないのか。
だからかな、僕は一つふんぎれてしまった。
「やっぱり今日も営業しよう、アオイは休暇でいいから」
「私はどっちでもいい、けど何で唐突に?」
「今日一日かけて、今夜の件を考えようと思ったんだけど、今決心したから」
「……何か遭ったら、メールするんだよ?」
心配になったアオイは小声でつぶやくように、そう言うのだった。
下した決断としては、今夜、僕は先方の招待に乗ることにした。
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