第19話 蒼天のアオイだお

「だから、アオイのスキルもそうなんじゃないかと疑うよな」

「いや、それがしのスキルは屑とは違うですしおすし」


 妹は僕のスキルを屑だと言い張った。


 その言いように意地になって、僕は多少を声を荒げて言う。


「わからないかな、お前は僕と同じ血が流れてるんだ。屑スキルの系譜なんだお!」

「そうとは限らないでおじゃる!」


「アオイのスキル、とりあえず使って見せて欲しいわね」


 エレンが仲裁するでもなしにアオイに言うと、見るからに困惑していた。


 思えば、僕は僕のスキルを直感ダイレクトに使用していたが、凄いことだったんだな。


「じゃあ、試しにこのオレンジを……フンハ!」

「がっはっは、何も起こらねーし」

「いや、よく見てみろ。オレンジの味がいつもと違うやろ?」

「バーカ、これ一見オレンジだと思うじゃん? けど味は苺なんだぞ?」

「な、ナンダッテー」


 さすがは異世界、などと妹は言っているが。

 アオイのスキルは、具体的にどう使用するんだろうな。


「とりあえずお兄ちゃん、私にもステータスウィンドウ頂戴?」

「それもそうだな――ステータスウィンドウ付与」


 アオイにステータスウィンドウを付与し、使い方を説明すると。


「……ふむ、なるほど」


 何かを掴んだ。と言いたげに表情が確信めいていた。

 そこで自分のステータスウィンドウの仲間の項目から、アオイの欄をタップする。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 プレイヤー名:竹葉アオイ

 スキル:スキル魔改造

 レベル:1

 能力値

 HP :999999999

 MP :999999999

 STR:999999999

 INT:999999999

 SPD:999999999

 LUK:999999999

 ……

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ……は?

 アオイのHP、MP、どの能力値も異常な数値を示しているのだが。


「よっし、極めたよお兄ちゃん」

「すいやっせんした!」

「あっれれー? いきなり謝りだして、どうしたのー?」


 そこで僕もピンと来た。

 どうやら我が妹、竹葉アオイのスキルは――他の勇者のスキルを魔改造出来る。


 アオイは僕のステータスウィンドウを魔改造して、自分のステータスを極端に上げたらしい。


「……ねぇ、アオイ? 貴方にちょっと、頼みがあるんだけど」

「あっれれー? エレンさんまで、急に下手に出てどうしたんですかー?」


 アオイ、恐ろしい子。


 ◇ ◇ ◇


「屑様いるー?」

「いらっしゃいアンディ、お兄ちゃんは営業に行ったよ」


 それ以来、妹は僕の店で主に店番をし始めた。


 アオイのスキルは、僕と同じで他力本願的な所があるし。


 僕がいなければ、アオイが王都で最強の勇者になることはなかったんだけど。


「誰かと思えば蒼天様じゃん、今度、俺にも空を割るやり方教えてよ!」


 アオイについた二つ名は蒼天様であり。


 自分のステータスを魔改造して振り上げた拳が、空の雲海を割ったことからそう呼ばれるようになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る