第17話 妹が召喚されたお
僕のスキルに興味を持ち、今回は四人の冒険者が来店してくれた。
その際、家主のエレンがステータスウィンドウの機能を説明してくれる。
「おお~」
その便利な機能を前にして、僕は冒険者と一緒になって感嘆するのだった。
「あんたのスキルでしょ? どうして知ってないのよ」
「いや、僕のスキルは屑だって思い込みがあって」
「滅多なこと言うもんじゃないわね? お客を前にしてさ」
エレンに指摘され、来店した冒険者の存在に改めて気付く。
「これは、使えるよ。いくら支払えばいい?」
「え、えっと、えっと……」
どうしよう、この人たち、さっきとはうって違い、交渉に乗り気だ。
「ステータスウィンドウがあれば、荷物を運ぶ依頼も簡単にこなせそう」
「それに聞いた話だと、三等級から一等級になるのだって夢じゃないって話だしな」
……彼らの、僕のスキルに掛ける期待値はかなり良い。
それを考えると、一人につき金貨三枚は安くないのだろう。
「そうですね、お客様は初めての顧客になりますし、四人で条件付きで金貨七枚でどうでしょうか?」
「買うよ、その値段でこの能力なら破格だと思う」
「っ! ありがとう御座います!」
交渉は即断即金で成立し、僕の目の前には七枚の金貨が置かれた。
自分で稼いだお金って、どうしてこうも尊いんだろう。
今までアルバイトすらやったことなくて、目に涙が込み上げて来た。
「あ、でも、条件付きって言ったね、どんな条件なんだい?」
「あ、はい、それは僕のスキルを行く先々で宣伝して欲しいんです。例えばクエスト屋にいる他の冒険者、他の街にいる貴族や金満家など、僕のスキルを金貨三枚で買ってくれそうなお客さんを呼んで欲しいんです」
打診すると、四人組の冒険者のリーダー格だった人が握手を求めた。
「それぐらいお安い御用だよ」
彼らの快諾を受け、僕は誠心誠意、彼らに頭を下げてお礼を連ねた。
「ありがとう御座いました! またのお越しを!」
そして四人にステータスウィンドウを付与し、軒先まで見送り店内に戻ると。
机の上に置いてあった金貨が二枚に減っている……あれぇ?
試しに僕のステータスウィンドウを開き、所持金を確認しても、ない。
と、いう事は。
「エレン、もしかして僕のお金盗んでいきませんでした?」
二階の居間に上がると、エレンは新聞紙を読んでいる。
「盗んでないわよ、今月の家賃と、さっきの授業料を頂いただけ」
エレンは新聞紙片手に鷹揚な態度で言った。
「にしても金貨七枚のうち五枚はぼったくり過ぎでしょ? 返してくださいよ」
「……それよりもタケル、見なさいよ。私たちが特級を攻略したニュースが載ってない」
新聞の記事として?
「よく分からないんですけど、特級ダンジョンの特級ってどんな意味合いになるんでですか」
尋ねると、エレンはため息をこぼした。
「特級は、未知の領域だったり、モンスターによって建造された新しいダンジョンってことよ。だから特級はモンスターにとって特別な住処だし、比例して知能の高いモンスターが巣くってるわ」
へぇー。
「特級じゃないダンジョンは、言わば過去の遺産よ。そういったダンジョンは程度にもよるけど、大抵マップが用意されてるわ。だけど特級にマップは存在しない。全て冒険者自らの手によって知覚しないといけない。そのせいで特級は攻略されずに放置されることもままある」
ほうほう。
それはそれとして、金貨返して。
それからと言うもの――――僕の店にぽつぽつとだけど、お客さんが来るようになった。
「俺は顧客の荷物などを運ぶ運搬業をしてるんだけどよ、盗賊に狙われやすくて困ってるんだ」
と言ったお客さんや。
「私、先月彼と婚姻したのですが、彼が早々に他の都に着任することになっていまして、でも私は私で王都で務める身でして」
と言った遠距離恋愛をはじめるお客さん。
当たり前だけど、お客さんによって僕のスキルを求める内容は千差万別だ。
僕はライザに、商売が軌道に乗り出したことを伝えるべく、メールを認めた。
季節としては、王都で初雪が観測され、その雪が水となって春を迎えた頃合いだ。
その間、エレンは一等級冒険者となって、王室に招待される。
ライザと同じく魔王討伐隊に入るよう推薦されたらしいが、断ったみたいだ。
「屑様はいるー?」
「いらっしゃいアンディ、けど今は商談中だから」
「屑様の店もにぎわってきたなー」
「そういう君こそ、来週から学校なんだろ? 頑張れよ」
して、話としてはその折に始まるのだが。
ライザ、君がいなくなって半年ぐらいになるけど。
暇があったら、一度帰って来れないかな? 君に紹介したい人がいるんだお。
それは誰かと言うと。
「……こんな所で、何してるのお兄ちゃん」
「ん? あ……ええ?」
異世界サタナに召喚されて半年後、僕の妹が勇者として召喚されたみたいだお。
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