第40話 使用上の注意
水柱は一分も保たず、次第に高さが落ちていく。
打ち上げられた
「っはぁ、……っ、どうだっ!」
水柱は尽きたのに、
勝利宣言をしたいのか、
「……? どこに……」
下の方には
水柱の分の水が一体に広まって、歩いたら水音がする。
焦って体を四方に向きを変える
となると。
「……ほほう」
いた。
「
水平にしか探していなかった
≪隔絶された水槽≫は水の拘束の魔法。
水の四角い牢に閉じ込めるもの。
『隔絶』と名がついているだけあって、外気と遮断されるのが特徴だ。
中級ゆえに使える人間は比較的多い。
消費魔力も少ない。敵を弱らせるのにも使える。
だからこそ、使用には注意が必要な魔法だ。
「……っ!?」
決まったと思っていた作戦をやり過ごされ、反撃を受ける。
さらに囚われて反撃不可能。
水槽の中の
大事なことだが二度は言わん。
必要なことを話す。
必要だから話す。
私様が話すことはすべて必要な情報だ。
殿下が立ち上がる。
後ろから男教師の声が響く。
「そこまで!」
声が響いたと同時に一陣の風が吹く。
ぱしゃん
水槽が、風に切られて形を崩す。
水槽から解放された
後ろから靴音が聞こえ、スピードを付けたその体はどこぞの少女の様に手摺を飛び越えた。
「お前らは加減ってのを知らねぇのか!!」
めっちゃ叫んでる。
こりゃお仕置きコースだな。
王子サマが風の魔法を使わなければ、
王族の子どもが貴族の子どもを殺すなんてことはあってはならない。
だからこそ王子サマは問答無用で水槽を崩したし、男教師も即座に声をあげた。
もっと言えば。
学生同士の戦いで上級というのも度が行き過ぎてるんじゃないのか?
何より貴族が王族をという事態になることが特に悪い。
まあ人が人を殺すこと事態良くないんだが。
そしてそれらが今ここで起こってしまった場合、監督者である教師にも責任が行く。
だがその後の
ありゃ止めなきゃ死ぬ。
「俺がどうなってもいいのか!」
人質に使うような言葉を自分に使ってるやつは初めて見た。
吹いた。
あいつ面白いな。
「弟王子はやらかし王子ですか?」
「後先考えないところを直せとは言っているんだが……」
日頃から言われている内容らしい。
まだまだガキだな。弟王子。
周囲に人がいなくなったところで、聞きたいことを聞いておこう。
弟子。魔法は何ができるようになった。
――― 中級魔法を属性文で発動できるところまでです。
詠唱はなしか。上級は?
――― 上級は詠唱ありで練習中です。風と闇はできます。
ふむ。
「王子サマ」
「何か」
「喧嘩中の二人は学年で言うと平均と比べてどのレベルですか」
さらには成績も
それを考慮するともしかしたら学年の中でも上位に入ると予想する。
「二人ともまだ基本を習っている段階ですが、二人とも優秀な部類です。魔法の成績だけで言うならシオンよりもロアの方が上です」
そこは想定通り。
「そしてそのロアは、学年トップではないようですが優秀な方と聞いています」
「ちなみに誰から?」
「……ウ・ドロー家当主、ロアの父親です」
息子自慢をする貴族は誇張せず、良い事実をこれでもかと自慢したがる風潮があるから、まあ親馬鹿評価ではないだろう。
王子サマ相手に言うってことは媚び売って将来的には側近とか考えてたりしてな。
「あいつらの学年で魔法のレベルについては?」
「中級の魔法が発動できれば普通、属性文のみでなら優秀でしょう。四年生から発展的な内容になるので、しっかり学校で習うのはまだ先です」
なるほど。
やはり
上級魔法を発動でき、作戦通りに行えたのだから。
弟王子もまあ優秀なようで。
弟子は
入学までを考えればトップも夢じゃない。
しかしそれでは目立ってしまう。
ただでさえ編入生は目立つ。
弟子の立場を考えれば誤魔化す必要があるか。
「……落ちこぼれとして入学させるのもありですかね」
「いや、もう遅いでしょう」
だよなー。
客人として紹介しちゃってるし。
むしろ悪目立ちするよなー。
となるとやっぱ、魔法の出力をコントロールして程々の立ち位置を気付くしかないか。
ま、いっか。
入学するのは弟子だし。
魔法のコントロールで頑張ってもらおう。
目立ちだがり屋ではなさそうだし、慎ましく過ごせるのなら弟子にとっても都合がいいだろう。
「じゃ。私様はそろそろ」
「ああ。またいつか」
にやっと不安にさせてしまう笑みであいさつ代わりとして。
余計な人の眼がないうちに弟子と交代としよう。
―――――……
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