第8話『反転怪異』
8話
「しい今回は?」
そう言われて彼女はこの街の東側の方向に指を指す。満月の日は呪術や、陰術を使う人間に忌み嫌われている。よく満月の日はこいう風に例えられることが多い。
《陰陽師や神社の人間はある戦場で戦う優勢の軍隊である。怪異にとって満月の日とは空からの呪力を吸収する日、言わば補給日なのである。》
満月の日の怪異はいつも以上に手強く、さらには化け物級の力を持ったものまで現れるのである。
俺はある程度の身支度を済ませる。全身黒染めのスーツ、そこに赤みを帯びたネクタイをしっかりとしめ、手には白色の手袋を履いた正装である。
しぃの方を見ると、自分の鎌に抱きつきながら寝ている。しぃを自分に引っ付かせ、大鎌を持つ。俺に引っ付いたしぃはその後すぐに目を覚まし、口元を手で拭いながらふわふわと俺の後ろを浮遊してくる。
そこから俺達は怪異が蠢く夜に走り出す。弱めの怪異はほかの呪術師や、陰陽師に任せ、自分の目的の怪異に向かって一直線で走る。
ある特定の場所で空気が変わる。言うならば呪力が空気と融合しているようなそんな禍々しい空気だ。俺はこれに似た数度体験したことがある。これはそう怪異が暴走した時に起きる空気感それに近しい雰囲気を持っていた。先に進む足取りが1歩、1歩少しづつ遅くなっていく。この先にいる強者に先手を取られぬよう、息を殺し、身をかがめて歩く。するとその強者は姿を現した。それは多くの曲がっては行けない方向に曲がった人間の死体共の上で自身の毛をくるくると器用に手で巻いている
「白虎」
としぃが言葉を発する。しかし俺の目の前にいるそいつは、全身は禍々しい黒色をしていて、所々に赤色の線が入っているような、自分の知っている白虎とは似ても似つかない姿をしている。何もそれが見た目だけという訳では無い。俺の知る白虎は全身が真っ白に統一されていて、人間を守る守護獣の1匹で管轄は西であるということだ。つまりこの白虎は、
「そうだね、言うならば反転守護獣ってとこかな」
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