第5話『怪異殺し』
「冬夜。冬夜。悪い知らせと良い知らせがあるんだけれど、どっち聞きたい?」
入学式が終わり、帰りのホームルームも終わり、教室を出ようとしたところで相澤にそう声をかけられた。
「良い知らせからで。」
「この後、みんなで親睦会をやるんだって。場所はここだよ。」
相澤はスマホで地図を出し、親睦会とやらをする店の場所に1本のピンを立てた。そこはここから徒歩数分の焼肉屋のようである。この立地ならほかのクラスとの親睦会とも被るのではないだろうか。 いや、入学式終了後に親睦会をするクラスは少数派なので被ることはあまりない気もしてきた。
「で、悪い知らせだけど、怪異だよ。それもこの学校。呪力はそこまで感じないけど、この感じ方は呪力が少ないってよりかは、呪力を隠してるタイプの怪異。」
ちらりと横を見る。そこには大鎌があり、その鎌はブンブンと回っていた。しかし誰も気づかずにその横を通っていく。怪異の退治に行くことになってしまった。
「早めに片付けないと、親睦会には行けないからよろしく。」
いきなり、親睦会をすっぽかせば必ずと言っていいほど、クラス内で浮くだろう。それは何としても防ぎたいため全力を尽くすと心に決めた冬夜であった。
「さて、屋上に来たわけだけど。」
相澤には、怪異の場所、呪力の流れ等がわかる力を持っているようだ。言われるがまま屋上に来るとそこには、髪がショートカットくらいの普通の可愛らしい女の子がいた。ただ、空中に浮いていて、足がなく、昭和中期ぐらいの服装ということを除けば、普通の女の子だ。
「幽霊の怪異か。どうする。幽霊に攻撃は取らないぞ。」
幽霊に対しては、物理的な攻撃はもちろん、呪術での攻撃も、陰術での攻撃も聞かない。相当に厄介な怪異である。
ヒューと、何かが飛んでくる。屋上にころがっていた石が、自分に目掛けてものすごい勢いで飛んでくる。それを咄嗟に躱すが、かすってしまい、右頬から血が自分の肌を垂れる。その血を右手で拭い、ぺろりと舐める。相手の顔をしっかりと見る。そこにいる幽霊の顔は目が大きく、鼻が高く、口元がこれでもかという程につり上がった満面の笑みで手をクイクイとやっている。その瞬間一気に膨大な呪力が流れ込んでくる。何が原因なのか知らないが、自分の怪異は切れてしまったようである。しかし、いつもは停めている呪力がこうも流れてきては、立つのもやっとである。
「流石にこれじゃ戦えないな。逃げるよ。冬夜」
そうして、俺は相澤に抱えられ、屋上を後にするのであった。
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