3話 『相澤慎也という男』
3話
「さて自己紹介をしようか。僕の名前は相澤慎也。神社出身の怪異殺しだよ」
男、慎也はのらりくらりとしたような声音でそういう。この男、髪が鬱陶しくないのかと少し思ってしまうほどに髪が長い。いや長すぎる。
「齋藤冬夜。一応、半人半異の怪異殺しだよ。俺はこの呼び名に否定的な意見は持ってないよ。」
自分から「半人半異」と名乗り出たことに少し驚いた慎也ではあるが、先程の調子に戻り、ケラケラとしている。しかし、一瞬彼の鬱陶しすぎる髪の間から目がちらりと見える。その目は、黒っぽい紫色であり、その上で異常とも言えるようにに澄んでいる。
「ふんふん。あ、え?なんで概念の怪異。これは怪異か?いやでも本人が、、、」
彼はそんなことを言っている。確かに俺が契約した怪異は概念と混同されやすいのだが、それでも怪異である。どちらかといえばその概念を与えるもの。そんな怪異である。
「ねえ?君。全身呪力でできてるでしょ?」
「ありゃバレた?」
先程の戦闘では、順応が流石に早すぎた。あれは恐らく順応したのではなく、濃度を均一にしたに過ぎないのだ。けれどもそれだけの呪力が人間だけで補える訳もなく、こいつの体にはなにかカラクリがあると俺は踏んでいる。
「そうだね。心臓以外は全部呪力。流石に動力源になる心臓の停止は普通に死だね。」
「いやいや、人間の呪力でそこまで持たせられるわけないでしょ?」
「ところがどっこい。できてしまうのですよ。」
と調子に乗りながら慎也は発言をする。こいつ、見た目で絶対損するタイプだ。数分話してみてこの男は喋りにくタイプではなく、むしろ喋りやすいタイプだということを理解する。同時に、第一印象で損しやすい人物であるということも理解した。
時計を確認すると、もう昼を回ろうとしていた。入学式は午後からなので、そろそろ家に戻って、制服に着替えて学校に行かなかければならない。後ろを振り向き歩きだすとそのまま前に進めていた。どうやら人よけの呪術を解除しているようだ。立ち去ろうとした時、確かに彼はこう口にした。
「いづれまたどこかで会えるよ。短い別れだよ。」
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