第6話
最終戦
巻と分断された暁人は相手を分断する方法探していた。巻と、梨花が下で戦っていて、上にいるのは暁人、慎也、真実、和人の4人であることを暁人は理解している。慎也とのタイマンなら暁人にも勝機がある。しかしそれ以外の場合は敗北の可能性が濃厚ということも暁人理解してしまっている。
暁人は水を放つ。狙いはやはり、慎也のようである。慎也のヒットポイントを狙って放った水は、軽く弾かれた。それでも何度も水を放っていく。しつこい事は暁人の難点とされていた。しかし今この瞬間においてはそのしつこさ、粘り強さは武器になっているのだ。
慎也も慎也でその攻撃全てを弾き返している。慎也は避けた方が安全ではあるということを頭では理解しているのだが、面白そうだからという理由で、暁人の挑発とも言える行動に付き合っているのだ。
しかしこれでは互いが互いにジリ貧になることを理解している。慎也は1度大きく息を吸い上げ、その息を吐き出す。冷静になり、辺りを見渡す。そこには彼と暁人だけだったのだ。
そう彼は熱くなりすぎて周りを見失っていた。暁人の策にハマってしまっていたのだ。しかし、こんなことで取り乱す慎也では無い。すぐに木から飛び降り、地上戦を始めようとした。
トン、軽々しく彼は着地し、相手の降りてくるであろう方向を見つめている。その顔は口角が上がり、目には狂気のようなものまで感じとれるほどに無邪気な笑顔だった。
「うわ、怖っ。」
暁人は少しだけ震えている。その震えを収めようと足を叩く。それが2人の開戦の合図だった。先にしかけたのは暁人だ。彼は銃口を慎也に向けて、水を放った。先程とは違い、それを身を翻してかわす。ひらりひらりと風に飛ばされる紙のように彼は身軽にその水をかわしていく。ならばこちらはと言わんばかりに、暁人は次に慎也が来るであろう場所を予想して水を放っている。パパンと連続して引き金を引いている。慎也はその水をもかわして行く。時には飛び上がり、時には下にしゃがんだりして少しだけずらしている。紙一重というのが今の彼を呼称するのに正しい言葉なのだろう。さらにムキになり暁人は水を打つ速度を早くしていく。
「さて、君、銃弾管理はどう?」
「生憎ガンナーの力もコピーしてるんでな。」
暁人は内ポケットからもう1つの弾を取り出そうとする。しかし彼は汗をかいて辺りをキョロキョロと見回している。
先程の慎也の回避の描写に少しだけ描写をたそうと思う。彼は暁人の至近距離で先程の行動やってのけていたのだ。暁人は、何度打ってもかわされることでムキになり、辺りを冷静に見れていなかった。さらに彼はチャックを下までおろしていた。上着をただただ羽織っていたのだ。慎也にとっては好きだらけなのだろう。しかし、人の内ポケットからものを盗むというのは人間業ではない。彼は気づかれないように呪術を使っていたのである。反転の呪術を彼は使ったのである。
反転の呪術とは本来は怪異を一時的に人間するものである。怪異の反対は人間であり、人間の反対は怪異なのである。反転の呪術とは本来表裏となっているものを反転させるの呪術である。この場合、慎也は上着の表裏を反転させたのである。言うならば簡易的なリバーシブルを作りあげだようなものである。そうして前に出てきた弾を抜き出すのは容易なものである。最後にもう一度反転の呪術をかけてやれば何も無かったことになる。さらに彼がすごいのは反転して、弾を盗み、もう一度反転させるまでにかかった時間がせいぜい1秒ほどというのだから彼がどれ程にこの呪術を得意としているのがわかるであろう。
「あー、おーけー負けだ負け」
「じゃ君のヒットポイント破らせてもらうよ。」
さらに彼は暁人が不思議に思わないように、思考力低下の呪術も重ねがけしていたのである。この男、いちばん的に回しては行けない人間なのかもしれない。
さてここでの決着は着いたそうお思いであろう?残念ここにはもう1人この戦いの漁夫を狙っていた者がいる。
暁人ヒットポイントを破き、暁人を失格とさせた慎也は後ろを振り向く。そこには満タンのタンク1本を腰に、もう1本を銃につけた正真正銘のガンナーがいた。
「漁夫か。戦争では正しい判断だ。」
このバトルロワイヤルという形式には基本的に勝ちやすい道筋というのがある。適当なところにイモリ、敵の戦闘終わり、つまり敵が消耗したところで戦闘を始めるという詰まるところの漁夫だ。
「けど漁夫の恩恵をあまり受けられない悲しみ。」
康太はそうぼやく。さて先程までは防戦一方だった、慎也が攻め始める。手数では押せなくとも、自分の頭脳、戦術で押し切ろうという作戦だ。さて、先程暁人がした狙い撃ちと意味の無い発砲いわゆる無駄撃ちを絡めて攻撃をしていく。無駄撃ちの中に狙い撃ちが含まれているので、どれがどれなのかを判断する必要性が康太にはあった。1度でも読み間違えれば、ヒットポイントが1つは失われてしまう。康太はどのような行動に出るのであろうか。
以外にも読み合いを始めた。相手がこう動かせたいというのが何となく康太は感じとれているようだ。
そちらの方向に目線を向け、次はそちら側に動くぞと思わせるながら逆方向に動く。あくまで視線だけをそこに置き、それ以外は全て別方向に。しかしそれは逆に分かりやすかった。目ではなく足を見れば行先はわかってしまう。そうして彼は2発被弾してしまう。それによりヒットポイントが1枚破りてしまう。それに驚いた彼は気づけばヒットポイント全てを破かれていた。一瞬何をされたのか理解できなかった。しかし数秒もあれば彼は理解出来る。自身の懐に飛び込み全ての紙を破ったということを。それはきっと人間業ではないだろう。しかし、自分達は人間では無い生物と遊んでいたのだ。と彼は何故かそんなことを考えてしまう。前方を見れば人間の形をした人間そのものが笑みを浮かべている。だがその笑みは邪悪に見えてしまった。
慎也はすぐに笑うのをやめた。
彼はこの笑顔のせいで友人をなくした過去を持っている。そんな彼だから、あのクラスで陰のものとして生活をしているのだ。
「あーあ、勝っちゃった。俺は勝つ気ないから。放棄しよー。」
※
真実、和人戦
「はぁはぁ」
「はぁはぁ」
互いに息が上がっている。先程も地上で戦っていた2人である。他の人間よりは、疲労度も高いだろう。さらに足場の悪い中での戦闘だ。この中で1番人間らしい2人とっては無理のある戦場なのははっきりとしている。
和人が額の汗を拭う。そして手を下に振る。汗を飛ばしている。互いに硬直している。何を考え、次は何を実行しようとしているのか、傍観者である君たちにはわかりようのない事だ。さらに付け加えると私にも分かりようもない。この2人は考えていることがわかりやすよいうなにんげんではない。言うならばポーカーフェイス上級者いや、上級者レベルの話ではないか、ならばポーカーフェイス全日とでも言っておこう。
「1度下に降りる。」
そういい和人が、木から飛び降りる。ドン。先程の慎也とは違い、重々しく着地する。しかし彼は何かを狙っているようだ。彼は投擲準備に入る。そうして、真実が降りてきた軌道に水風船を投げつけた。その水風船はちょうど真実本人に当たってしまう。
作戦とはいえ、やっていることがとてもゲスい。それでも真実は何とかしてヒットポイント一つだけで済んでいる。真実も何かを思いついたように何かよからぬ笑みを浮かべている。
「降参よ。」
それを聞いた、和人は真実に歩み寄っていく。そうして、1枚1枚、ヒットポイントを剥がしていく。距離はほぼゼロ距離、真実は持っていた銃の引き金を引き、和人のヒットポイントに当てていく。1枚、2枚と破けていく。3枚目で気づかれ、距離を取られてしまうが、距離をとる前に1枚、こちらが奪っている。和人のヒットポイントは残り2枚、こちらのヒットポイントも残り2枚。
「降参したのに、動くのはずるじゃない。」
「残念。冬夜の説明には降参で負けたことにするってのが含まれてなかったから。あいつ絶対こういう展開を見越して、言ってないとみたね。」
確かに冬夜はそのようなところがみうけられる。適当を装いながら、ある程度計算している。彼らしいといえば彼らしいのだ。
「さて。」
その後に続く言葉どのように戦うかなである。その後数秒の硬直が続いた。先にしかけたのは和人である。大地を蹴り、走り出す。真実が自身の射程に入った瞬間彼は飛び上がり、右脚で蹴りを放つ。それを真実は左腕で受け止め、振り払う。和人はそれで体勢を崩しそうだったのだが、何とか体勢を保ってみせる。お返しと言わんばかりに、真実が飛び膝蹴りを放ってくる。和人は体を横にし、それを避ける。避けたことにより、真実はそのまま一直線で木の幹に飛んでいく。そうして、ドンと大きな打撃音が聞こえてくる。和人は後方を確認するが、そこには膝を抱えてうずくまっている真実がいた。先程似た様な手に引っかかっている。だがしかし、彼は苦しんで女の子を助けないような男では無いのだ。それが罠だとわかっていても。
「大丈夫か?真実」
和人は真実に走り駆け寄っていく。その距離まで来たことにより、真実は和人のヒットポイントを狙える位置に入った。今だと言わんばかりに、真実はヒットポイントを取り、破る。どうやら彼女は2枚両方とも取れたようで、彼女は和人との戦いに勝っていたのだ。
それと同時に慎也が戦いを破棄した内容がグループで流れてきて、真実の勝利が確定した。
その後全員が1番最初の場所に集められた。
「第1回水鉄砲大会は真実の勝利だ!!」
謎にハイテンションな冬夜が勝者をしめめしていた。その後彼らはここで数十分談笑していた。
「ごめんね。和人。あんな策使って。」
「いや、謝ることじゃないぞ。使えるもの全て使ってこそ戦士だろ?」
「あははは。受け売りじゃん。それ。でもかっこよかったよ。」
最後の言葉は和人の耳元でボソリと囁き彼女はどこかに言ってしまった。悪い女やで。
「まだ俺はあんたの力を認めてないからな。」
「いやいや、認めてもらわなくていいっていつも言ってるじゃん。」
暁人は慎也に対しあからさまに悪態を着いている。どうやらこの2人はいつも通りのようである。
「りかっち。りかっち。めちゃ強かったね。」
「あれは、」
少し梨花は口ごもる。この場には怪異のことを知らない人間が大勢いるのだ。喋ることは少しだけはばかれる。
「てかあんた本気出してなかったでしょ。」
「ありゃバレてた。」
「でも最後の一撃、あれは本気だった。殺意がこもってた。」
各々がそのような会話をしていた。私も能力を、力を解放する。それでも契約者である冬夜にしか見えないように。
「どうだった?」
「.........。」
私は黙る。この水鉄砲を企画したのは冬夜ではなく、この私、すなわち、死神の怪異だ。単純に人間がどのような行動を取るのかが気になったそれだけだ。単なる私の興味本位。
「そうか。」
私は何も喋っていないのに彼は何かを理解したようだ。
この物語はとある物語の後日譚、それでいてとある物語の前日譚に当たるお話だ。これは序章であり、一冊の本の終章である。そんな対になる役割を持つ物が互いに重なってしまったものである。これから始まるのはこの世に蔓延る怪異と、小さな人間たちのとても奇妙な御伽噺である。
私が語り手となって物語を紡ぐのはここまで、これから紡ぐは幼き日に、死神に好かれてしまった少年が見た世界でのお話だ。さぁ始めようか。
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