第2話
役職確認
「うわぁー。1ちゃん使い方わからんの引いてしまったわ。」
と巻はそう言いながら、的を体に貼っていく。手の平に2個。自身の胸に1個。膝に2つである。そうして巻は剣をとる。スーハーと一度深呼吸をして巻はつぶやく。
「頼むでエクスカリバー。」
※
「おっ?当たりだなこりゃ。」
紙をを見てそう呟いているのは康太だ。康太は2丁の銃を持ち、1本を手で持ち、もう1本を上着のうち側に入れる。
(サーチャーが1番厄介かな。それ以外なら真っ向から戦えるわ。)
※
(作戦決まったな。)
そう心の中で思いながら自分の銃を見つめるのは、暁斗だ。暁斗の役職はスナイパー。体力の少ない暁斗には不利な気もする役職である。
※
「げっ。1番めんどくさい役職が。」
辺りを警戒しながらそう呟いたのは和人だ。彼は自身の武器に水を補填していく。
(何個に入れたらいいんだこれ。)
そう思いながらも水を補填していく。
※
(頭の悪い私にとってはこれはきついぞ。)
確かに梨花は集められた人間の中では頭が悪い方ではあるが、そもそも周りが高すぎるのである。クラスで言えば梨花は平均ちょいであり、他の学校へ行けば上位にも入れるほどの学力はあるのだ。
※
(正直最弱じゃん。)
真美は自分の武器に水を補填していく。しかしこの戦闘において中心になる役職ということを真美は気づかない。
※
優奈はしっかりと銃に水を補填し、移動手段である、自転車にまたがる。
「よしよし。当たりだね。」
と優奈は自転車を漕ぎながら言う。
※
「おっしゃ。狙いが引けた。」
慎也は紙を確認しながら、そう言う。次にスマホの地図を開く。どこへ行くのかを吟味している。慎也の近くの公園には、2つほどの公園がある。この3つの公園は道をたどっていくと1つの広場では合流する。
(たどってけば2人に合えるが、俺の役職的に一旦いもり安定だな。)
※
地図上右下。
暁斗は地図を確認しながら、道を歩く。安全だと判断した場所にたどり着きスマホをいじる。暁斗はサーチャーでは無いのに、位置情報アプリを開き、何かを確認する。そうして誰かにメッセを送る。その後すぐに「了解」という連絡が入る。彼は不敵に笑った。
その後すぐにリタイア者の名前がグループに書かれる。そこには野川暁斗の文字であった。
※
慎也
瞬時に慎也は数々の思考を巡らせる。それは、役職のことから始まり、暁斗の作戦まで多岐にわたる。そうして導き出せた答えは慎也は勝負を捨てた訳では無いということだ。この行動はネクロマンサーへの行動依頼だと慎也はしっかりと理解した。
集められたメンバーの中で学力が1番良いのは暁斗であるが、頭の回転という点では慎也が、起点という点では康太がダントツでトップである。それこそ1秒程度で暁斗の真意に気づくほどには。
※
地図上左上
暁斗がリタイアしたことを確認し、巻は地図上を南へと行く。確かそこには公園があったことを真実は記憶している。公園が見え始めた頃に、1つの人影を確認した。身長が約180cmほどの人影である。巻は思考を始める。あのメンバーの中でこれぐらいの身長は誰がいたかを考え始める。
しかし相手はそんな思考が固まるまでは待ってくれないようだ。先手必勝とばかり銃を向けて、水を放ってくる。それを銃で受け止める。巻の運動神経は康太には劣るのだがそれでもとても高い。水を視認して、銃で受け止める程度の瞬発力と動体視力は所持している。
内心康太は焦り出す。相手が巻だと知れば銃を撃って戦闘を開始するなんて馬鹿なことはしないだろう。巻の身体能力に勝てるほどの力は、和人にはないだろう。さらに互いに役職がわかっていないのも不安要素の一つである。情報は相手が巻と確認できた康太の方が多いのだが、それでも康太の方が劣勢であるのは変わらない。先程の仕返しとばかりに距離を一気に詰めて、剣を横薙ぎに払う。なんとかその場から動かないが、かはっと唾を吐く。剣自体はとても柔らかいのだがそれでも、康太が唾を吐くほどの痛みが走るというのが巻の力を表している。
その拍子にフードがとれ、康太の顔が視認できるようになる。
「康太じゃん。まぁ康太の役職わかってないのしんどいな。」
「俺の方も普通にしんどいのよ。」
康太の唯一優っていた、相手を把握しているという情報さえ対等になった。
(走るか?でも巻だし。逃げられない可能性の方が。)
チリンチリンと自転車のベルの音が鳴り出す。2人とも相手の役職が分かる。ここで康太に電流が走る。
「残念康太よ。逃がさんよー。」
巻が連撃を繰り出す。しかも手を抜き、康太がある程度かわせる速度にして。かわせると言っても康太が気をしっかりとはり、尚且つかわすことに集中していればの話だが。その剣から伝わってくるメッセージに康太は身震いする。
「巻さぁ。康太をいじめんのやめようぜ。」
「あれ。ゆうにゃんがライダー?まぁ女子がライダーなの理にかなってると思うよ。」
巻は優奈を剣で横なぎに払う。しかしそれをひらりと優奈がかわす。優奈はそれから巻と激しい攻防を繰り返す、康太がそう思った瞬間、優奈から指示が飛んでくる。
「和人!手助けよろ。」
言われて康太は銃を抜く。敵になるかもしれないので、二丁目はまだ抜かない。
「しゃねー行くぜ。」
出し惜しみなく、康太は水を放っていく。それはしっかりと的に当たっているのだが、どんやら簡単には紙は破れないようだ。優奈の方は体術メインで攻撃を放っている。
優奈が相手の体にめり込ませようと放った拳は刀身で受け止められる。その拳と刀が押しあっている。巻は拳を跳ね返す。体が無防備になった優奈の体に水をかける。そうして水に濡れたヒットポイントを剣でしっかりと攻撃する。どうやら優奈の紙は1枚破れているよだ。
優奈は距離をとって水を何発か放っていく。それから数十秒ほど互いにいがみ合っていた。
「優奈そこから離れてね。」
康太は走り出す。走りながら、パーカーのチャックを下まで下げ、パーカーの中に閉まっていた2本目の銃から水を入れるところだけを取り出し、一気に巻に水をかける。どうやらこれを巻は回避できないよで、服からべちゃべちゃになっている。康太は1度しゃがんでその上から、優奈が飛び出てくる。巻はそれを刀身で受け止めようとするのだが、ぎりぎり受け止められなかったようだ。そうしてさらに1枚破れる。
「あと3枚か。しんどいね。逃げようにもゆうにゃんライダーだし追いつかれるよね。」
康太が巻の後ろに回る。前からは優奈が体術で、後ろからは和人が銃を放ってくる。巻にとって和人の方はまだいいであろう。しかし優奈の方は放置できない。前に全てのヒットポイントを貼ってある。剣でなんとか優奈のヒットポイントを破らなければならない。優奈の方4枚、巻の方は3枚。さらに優奈は2人、こちらは1人である。誰か援護に来てくれればと少し、巻の頭に過ぎるが、巻はかぶりを振る。
誰かに頼るなどあってはならないことだと巻の家では教育されてきた。巻は自分の弱さが少し恥ずかしくなってくる。
「ちょっと本気を出そうかな。」
巻は剣を上段から中段に切り下ろす。それを優奈は受け止めるが、巻は体を蹴飛ばす。優奈は数メートル後ろに飛ぶ。それでもお構い無しに。巻は銃を放つ。どうやらそれで1枚破れたようだ。
さらに後ろを振り返り、1発水を放つ。巻の目には殺意すら感じ始めた。それに康太は息を呑む。水で濡れた体が先程以上に冷えているように和人は感じる。和人の水の残量は3分の1、優奈はに2分の1、それに対して巻はほぼフルチャージである。巻のフィジカルに対して、康太達が持っているのは人数というアドバンテージのみ。
先程の本気という発言は本当だったようで、体術、剣技、水鉄砲を交えた攻撃を繰り返していく。蹴りには蹴りで、剣技には拳で対応していた優奈だが、息の上がっていない巻に対して、優奈はとても息が上がっている。仕方ないと思い、康太も距離を詰めて、体術をメインで攻撃していく。しかしいくら後ろに攻撃してもこちらを振り向きさえもしない。
「ラストいっちまーい。」
気づけば優奈のヒットポイントは1枚になっていた。最後には剣で軽々と、破られてしまった。巻は自転車の方を向いて、自転車にまたがる。康太はその場にへたりこんで、思考をめぐらせる。
和人を見逃したのにはどのような意図があるのだろうか。しかし、巻がセイバーであること、優奈がライダーであること、そして自分自身がガンナーであることから、残りメンバーはそれ以外、さらに1枠はもうリタイアしているため、残りは4職であるということを康太は理解した。
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