W-3 18  約760000AUと16年を超えたSOS

*>花恋視点



 こんな大勢の人々の前に立ったのはいつぶりでしょうか…。いえ、ガーデンプラントは太陽系よりも人口は少ないため初めてでしょうね。


 私は今から何も関係ない人々に戦争してくれ。と、言わなくてはなりません。

 私が王家の20代目の姫として産まれてもう、32年勇人さんと出会ったのが16歳の時ですからあの時の私と那由花を重ねてしまっています。

 那由花には王家としての責任を背負わせたくない。そんな私のわがままも、今となっては無駄に終わった気がします。那由花は力に目覚め、戦争に巻き込まれ、こうして今、私の手を握ってしまっている…



「防衛省総司令の永井 朝凪あさらぎだ。本日大事な宣言と私の隣にいらっしゃる花恋様からのお言葉を頂こうと思う。皆、心して聞いて欲しい」


 全域に聞こえる朝凪さんの声。私たちの声は今この宇宙港とこの様子を映すスクリーンしの人々へ届いている。


「まずは私からだ。先の地球全土を巻き込んだ戦争。巷で「星間対戦」と呼ばれている戦争は皆知ってのことだろう。相手は物理的な体を持たない。我々からしてみれば未知なる現象ということになるが、確かに我々の生活を脅かし、このまま放置することはできないと考えている。よって。我々太陽系人類は従来の攻撃手段と新技術を用いた攻撃を開始する」


 どよめく会場。無理もない。こんな平和を実現している恒星で、攻撃する。なんて言葉はそれこそフィクションと同等の現実味の無さだ。


 そして私は。頼まなくてはならない。私だって王女なのだから。


「皆さんにお願いがあります。私はガーデンプラント王国20代目王女。花恋・ガーデン・メテアノス。時期ガーデンプラントの女王ですわ」



 私の声以外全くの無音。静寂せいじゃくが私におおいい被さるような重い空気…


「私の故郷はいま破滅の危機にありどうにか現状を留めているのが限界です。我々ガーデンプラントの力だけでは地球を襲った驚異に反撃できません」



 ガーデンプラントはまだ恒星規模の生存圏まで到達していない…。宇宙港や衛星都市はあれどそこでソレに襲われ始めてしまったため文明レベルは進まず…むしろ退化し始めていた。

 私が逃げた時からガーデンプラントがどうなったか…。夢で一花様に聞いた限りでしか分からない。


 どう頑張ってもこのままでは滅ぶ。


「どうか!お力をお貸しして頂けますでしょうか。私は故郷を救いたい…」



 静寂がさらに重く。重くのしかかる。ここで世間が否と答えれば防衛省とのこの反抗作戦にはさらに多大なる時間がかかるだろう。



「ひとつ。私からも頼めないだろうか?」


 声が聞こえた。彼がこの場に来ることを私ですら昨日知った。勇人さんと翔平さんが手をまわしていたらしい。


「私はガーデンプラントの王女とは違う星系からやってきた。我々の生活は既にほぼ壊滅し、たくさんの死者を出しながら敗北した我々の文明はソレによって隷属化されている…国としてはもはやほぼ機能していない…だから私がどの立場で言えばいいか…。でももし、力を貸して貰えるなら、我々はきっと太陽系の人類の味方であることを誓う!我!鏡陽きょうようの星の第2王子 ウルド コリー。我々の星も救って欲しい!」




「我々防衛省はガーデンプラント及び鏡陽の星両方ともをそれぞれの人類の元にできるだけ取り返したいと考えている。もちろん、そうする必要があると考えているからだ。…ソレに敗北した国…星の末路はここにいるウルド殿に聞いた。…そしてもはやこの戦争は我々だけの範疇はんちゅうをゆうに超えているのではないかと考えている。おそらく、その他星系のいるかもしれない人類もソレに攻撃を受けていると判断している」




 回答は返って来ない…

 重苦しい静寂だけがこの場を暗く映し出す。


 私の願いは直接的にはこの星の人々には関係ないのだ…。やはりまだ早計だったかな…



「私は…」



 ?那由花が声を出した。思い出したように感じる握っていた那由花の手には力が込められている。


「私は!例え誰が反対しても戦地にいく。そう決めた。私はハーフだから、正直自分がどういう立場でここに立ったらいいのか迷った。でもどっちだとしても結局答えは変わらない。だから私は、娘としてここに立つことに決めた。私は戦う。RBGはゲームだ。だけどその本質は…」


 あれ?那由花。それもう言っちゃうの?なんか舞台袖の秘書さんが、あ!みたいな顔しちゃってるよ?


「人間が擬似的に戦場で攻撃を生み出す装置に変換できる」



 まあ、遅かれ早かれ今日言うんだしいっか。



 RBGはゲームでできることを外部コンソールにそのプレイヤーの意識と仮想体を重ねて現実に反映する武器になる。

 魔法や魔弾が現実側の攻撃になる。

 前提条件として戦闘領域に超小型のエリア発生装置を広範囲で囲み切る必要があるのだけど。

 魔力、気力、霊力、電力、妖力、魅力はそれぞれそのコンソールが保持する現実への攻撃変換エネルギーや、遠隔供給優先度を数値化した物…らしい。難しくて目が回るわ。

 これをRBGシステムという。



 テレポート兵器に次ぐ新しい兵器とは。


 巨大な専用エリアを作りそこでプレイヤーが各々の多彩な攻撃を生み出す兵器である。

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