W-3 19  君の枷は私が外した

*>那由花視点




「あ」



 そういえばこれ言って良かったんだっけ?なんか私も戦うっ!てっ言った流れで具体的な内容が口から勝手に…


 あ、朝凪さんの秘書らしき人がすごいため息吐いてる。ご、ごめんなさい!



 私が言っちゃったことはRBGというゲームをプレイしたことある、ない、問わず波紋のようにざわつきが広がって行く。かなり距離があるからザワザワ微かに聞こえる程度だけど、ここに来た人々にとってはそれだけ驚きの声を出すに足ることだったのだろう。


 うーん。ほんとにどうしよう…



「ひとつ。ここに集まった人々。及びこの場を見ている人々に聞いていいだろうか…」



 そんな場を一応フォローするように声を出し、注目を舞台上に戻してくれたのは私の隣に立つ男。

 さっきウルド・コリーと名乗った私達も面識のある彼はパパがなんか色々手を回したのかここに立っている。



「私は先の戦争で地球の民に少なくない犠牲者を出してしまった…。本来私は少しでも罪を償うべく死刑となるべきだろう…。だがいま、恥ずかしながら生き長らへ、ここにいる…。私は…許されていいのだろうか?否…もし私が…」


「許す、許さないなら許されないだろうけど。あなたも被害者側でしょ?」





「あ、ごめんなさい。つい…」


 なんか気がついたら言葉が出ていた。い、いや!でもこの人も無理やりやらされてたんだから被害者じゃん?なら…



「あなたが無理やり従わされていたのは、私やその場にいた人達が知っている。私が助けだしたあなたをあなた自身がおりに入れてどうするの?」




「んんッ。那由花姫。ちなみに言うがソレは普通の人には肉眼では見えない。声も聞こえない。花恋様と那由花姫だけが見聞きできるようです。一応、あらゆるスキャンを通せば何か居るのは私供も感知しておりましたが…」


「え?」


「やはり貴殿はあの時、あの声が聞こえていたのだな。すまない。ありがとう」



 彼は私に向かって頭を下げ…あれ?君王族とか言ってなかった!?そんな頭下げたりしないでよ!


「那由花姫だけでは無い。今ここにいる全ての人々に再度お願いしたい。どうか…私の故郷を救ってはいただけないでしょうか!」



 さらにおそらく周りの人々に向かって頭を下げる。彼はそのまま微動だにせず周りの反応を待った。




「我々防衛省…。改め、我々太陽系人類はガーデンプラント星。鏡陽の星を救いソレと呼ばれてきた敵を討つ。私の方針に反対者はいるか?……居ないならら我々は戦う!!」



ワーーーー!!!



 一気に沸き立つ会場。さっきまであれほど遠いと思っていた声がこの空間をこれでもかと響かせ、暗い暗い宇宙へと解き放つ。



 私は戦う。ママとパパのために。ついでにこの横にいる彼のために!






*>ウルド視点



「私は先の戦争で地球の民に少なくない犠牲者を出してしまった…。本来私は少しでも罪を償うべく死刑となるべきだろう…。だがいま、恥ずかしながら生き長らへ、ここにいる…。私は…許されていいのだろうか?否…もし私が…」


「許す、許さないなら許されないだろうけど。あなたも被害者側でしょ?」



 隣に立つ姫が私の声を遮る。その声を聞いてハッと…自分の視野の狭さに気づいた。

 こんな様子ではダメだ…私は故郷の皆の命運を背負っている…。どうにかしてここでこの星系の民の力を借りなければ…!


「あ、ごめんなさい。つい…」


 照れたように私に含羞むこの美少女を見たらなんだろうか…少しだけ冷静になれた。

 この姫はこういう場に慣れているのだろうか。割とすぐにそんな表情は消え、今度は私をまっすぐ見てこう言った。


「あなたが無理やり従わされていたのは、私やその場にいた人達が知っている。私が助けだしたあなたをあなた自身が檻に入れてどうするの?」



「んんッ。那由花姫。ちなみに言うがソレは普通の人には肉眼では見えない。声も聞こえない。花恋様と那由花姫だけが見聞きできるようです。一応、あらゆるスキャンを通せば何か居るのは私供も感知しておりましたが…」


「え?」


「やはり貴殿はあの時、あの声が聞こえていたのだな。すまない。ありがとう」



 彼女はあの時。私に語りかけるソレを認知していた。あの時の彼女は私に向かって問いを投げた。「あなたは誰に従っているの?」と。そのあと彼女は「…さっきからうるさいっ!!!!!!」と私に言った。否、私に命令を下していたソレにこの少女はうるさい!と言っていたのだ。

 君は全てあの時理解した。見えていたし、聞こえていたのだろう。


 私は誰よりも先に、彼女に救いの手を伸ばしてもらっていたのだ。

 私は彼女に頭を下げる。彼女が救ってくれた。あの忌々いまいましいソレから解放してくれた。

 感謝してもしきれない!


「那由花姫だけでは無い。今ここにいる全ての人々に再度お願いしたい。どうか…私の故郷を救ってはいただけないでしょうか!」



 そして私は、故郷の民を見捨てることなどできない!図々しいことも承知の上。王族としてのプライドなぞ捨ててやる!太陽系人類全ての人々に向かって頭を下げる。



「我々防衛省…。改め、我々太陽系人類はガーデンプラント星。鏡陽の星を救いソレと呼ばれてきた敵を討つ。私の方針に反対者はいるか?……居ないならら我々は戦う!!」



ワーーーーーーーー…




 私は、自分だけ生き延び役目を果たせたのだろうか。故郷の民が太陽系の民みたいに笑える未来を…


 私の隣で彼女は分かりやすく安堵あんどしていた。

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