F314 Ponieważ tylko ja pamiętam.
*>>『???』視点
響く煩い足音。ガチャガチャと鳴り響き絶望と恐怖の象徴たるそれらは歩みを止めることもない。
こんな…理不尽で死んでたまるか…。なんでこの血はそんなに悪なのか。私たちが何をしたというのか。
ヴィオラは帰ってこなかった…。泥だらけで血だらけのお母さんだけがヴィオラの死を告げ、泣き崩れるようにその場に崩れ落ちた。
それから数時間もしないうちにこのざまだ。
町から離れたこの小さなお家は、いつもは花々が咲き誇る小さな丘の中心地。だがしかし、今はそんな美しかった庭もその重々しい足に蹂躙され見る影もない。
何が「魔女」だ…。何が「悪魔の使い」だ!!
私からしてみればお前らが悪魔だ!
その目、その声、その手全てが気持ち悪い。あんなのが自分と同じ見た目だとか虫唾が走る。
そんな悪魔は今、私達の家を大勢で取り囲んでいた。ガチャガチャうるさい甲冑、ギラギラとこちらを見据える剣が…すぐそこに。
もう、私もお母さんも殺される。人々はその死に様を眺め、石を投げ、魔女狩りだと笑うのだ…
なんで?私は何もしてないのに。なんで?異端者は殺して淘汰すればいい?なんで?私はただ…
「記憶は…。ねぇ、レナータ。こっちにおいで」
お母さん。私。怖いよ。
「怖い…」
体の震えが止まらない。小さな体が言うことを聞かない。自らの死を受け入れる覚悟もない私はただただ怖い。お母さんにすがりつくだけで精一杯だった。
「大丈夫よ。私が貴方だけでも逃がしてみせるわ」
…
「お母さんは?」
ねぇ…ねぇっ!!その言い方だとお母さんは?私はまだ子供だよ!?
「レナータ。この図鑑の文字は読めるようになった?」
「う、うん。読めるよ!読めるようになったから、見捨てないでっ!!」
「そう、これは?」
お母さんは私のお願いを全然聞いてくれない…。なんで?
私のお願いを無視しながら図鑑のとあるページを見せてきた。そこにはしおりが挟まっている。
読めるか?という眼差し…。私はいい子にしてる。だからこれに答えたらどうか私から離れないで!
「❨ワイルドベリー❩…」
「そうよ。これは貴方の…」
ガシャンッ
「ひっ!??」
ドアを誰かが壊そうとしている。もうすぐそこまで…!
そんな時、お母さんは私を抱きしめてしまった。かなり力強く抱き込まれたため、抜け出せない!?
「お母さっ」
「私は本来、記憶と寿命しか扱えない。ごめんね。ヴィオラ。やっぱり私がこの間違った認識に終止符を撃つわ…。これを家に残した貴方のためにも」
お母さんは何かを握りしめている。それを…!?!?
「うっ!?!?」
「少し…痛いでしょうけど。すぐに眠っちゃうわ」
「おか…あ…」
「レナータが、この世のどこかに、同じような世界があるのなら。そして私たちの魔法が受け入れられるような。そんな世界があるのなら。そこに連れて行ってあげて。この血を絶やさず、増えすぎないような、そんなレナータがずっと幸せを築けるような呪いを」
「…い…や…」
「じゃあね。レナータ」
お母さんの顔が近付いてくる。そっと私の額にキスをしてくれた。…霞む視界の中、ドアが蹴破られたのを最後にお母さんは私を抱く力を無くした。
*>>一花視点
「はっ!?」
ここは…
儀式の間…。私は…何か良くない夢を見ていた気がする。目が覚めたということは、予言の時が来たということ。それはやはり…
菊花達の世代で…
ダメだわ。私はなんのために自らを止めたのか。忘れてはならない。
「し、始祖様!?」
「…あら、菊花。久しぶりね。老けた?」
タイミングがいいわね?ちょうど私の様子を確かめに来てくれてたのかしら?
「老けましたわ。もう30年以上前です。お会いしたのは」
「花恋の洗礼の時以来ね?」
「…夢には何回か来ませんでしたか?」
娘の名前を出すと、少し反応したわね。ある程度事情は知ってるとはいえ、やはり心配で仕方ないのでしょうね…
とりあえず、安心して欲しいかな?
「菊花。花恋の娘の名前は那由花よ。ここから遠い星で元気そうだったわ」
「!!?夢でですか!?」
「探すのに苦労したけどね?なんせ物理的な距離が離れすぎてたから。時代は進んだわねー」
「そうですか…ちゃんと生きて…」
素直じゃないね。娘を無理やり遠ざけて…自分が1番悲しいくせに。
「とりあえず、今後について。あとは花恋と那由花について話してあげるから。戦況について話して貰える?」
「承知いたしました」
そう、今この星は戦争中。得体の知れない何かに襲われ疲弊しきった国が滅びに抗う最中。
それを予期して救えと願ったあの子も…
どんな親も子供に頼まれた願いなら叶えてあげたくなるものよ…
どんな悪夢だったか覚えてもいない。それはきっといいものでもなんでもない。だから私は娘の悪夢を晴らしてみせるわ。
第九話 「F」rom
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます