W-3 13  開放と価値観

*>>ナユカ視点



「おつかれ〜」


「あ、ユキも帰ってきた」



 ここは闘技場内に作られた控え室。その少し大きめの部屋には今回バトルロワイヤルに参加した12人と、システムを起動、管理をしていたレンさんの合計13人が揃っていた。ユキは最後まで生きていたためこの控え室に帰って来るのが1番最後。私もさっき帰ってきたばかりだ。



「やっぱりユキが勝つのかよw」


「負けはないね〜」


「強かったであります!」


「いやー、バトル終わったら消費したポーション帰ってきて安心したー」


「♪」


「配信も私視点ですがなかなか高視聴ですよ」


「必殺技撃ちたかったぜ…」


「私は満足ですわ」


「たのしかった!」



「私…このメンバー相手に善戦できてました?」


「贔屓なしにかなりいいほうだと思うよ」



 みんなそれぞれがガヤガヤと感想を言い合う様子はさっきまでガチンコバトルをしてきた仲には到底見えない。リリースはなんだかんだみんな仲がいいからね!



「あら、ハルト。あなたこの中で一番最初に退場してましたわよ?これはもう私の勝ちですわね!」


「あ?普通に考えてありゃ事故だろw。というかアリアお前こそ自信満々に必殺技撃っといて誰もやれてねぇじゃねぇかwあの魔法陣は飾りかw」



「うるさいですわ!負け犬!」


「んだと!?」



 うんうん。ほら、喧嘩するほど仲がいいって言うじゃん?たぶんそれだよ。きっと。とりあえず、まだまだ言い合いっ子してそうなので私はそっと視線を外しておいた。


「さて〜、話もいいけどナユカ〜。そろそろ時間〜。ナビィに怒られるよ〜。見てるんだろうけど」


「うっ…じゃあログアウトしなくちゃね」



 もっと話していたい気持ちはあるが、時計を表示するとかなりの時間だ。当初予定していた時間よりはだいぶオーバーしてしまっている。

 ここはユキの言う通り大人しくログアウトして早く明日に備えないとね。


「では次に会うのは地球でですかね?」


「あれ?地球に来るの?」



 そうしてログアウトの話を聞いたリンさんが、何やら驚くことを言い始めた。リンさんは月出身のプレイヤーだ。ミカちゃんの宇宙船は例外として未だに惑星間を移動できないRBG。ということは彼女は地球にリアルで来るということだ。


「あら?聞いてないのですか?ラストライブの後行われる発表と先の件の祝勝会が地球で開かれるのです。先の件で戦争に貢献したプレイヤーや軍人さんたちはナユカさん達のライブツアーに途中から同じ艦隊で移動してるのですよ」


 同じ艦隊…。なんか忘れかけてたけど、そういえば私たちが乗るコメットの周りにはかなり大きな艦船が取り囲むように並走してきている。



「なので私たちアインズの主要メンバーも明日一緒に地球に出発です」


「そ、そうだったのか」


「祝勝会があるのは知ってたけど〜。みんな招待するんだね〜?」


「ドレスなんて着たこと無かったですから…今も緊張しています」


 へー。ドレス。え?ドレス!?


 バッと振り向き目でユキに聞いてない!と訴えかけると、そのままニッコリ笑顔で返された。


 これわざと私にしらせてなかったやつだ!!


「えー!?」


「あれ?祝勝会のこと知らなかったのですか?」


「いや〜。ドレスの方だよ〜。当日まで黙っておくつもりだったんだよね〜」



「言ってよ!!私ドレスなんか持ってないよ!?」


「ドレスはもう作ってあるから大丈夫」



「本人全く知らぬ間に!?」


「ちなみに軍曹とヒヒリーは明日コメットの方にのさせてもらうであります!」


「なに!?うちも乗れないのに!??ちょっ今からうちも月に行くぜっ!?リアルでっ!」


「やめとけw」



 さも当たり前のようにドレス作ってるけど!私採寸とかした覚えないよ!?私のプライバシーはどこに…

 

 あとコメットにはそこそこスペースがあるので軍曹とヒヒリーが登場するスペースは問題ない。フリゲート?という艦種になるコメット。宇宙船の中ではかなり小さい部類になるが、それでも私からしたらかなり大きい。確かに周りに居る厳つい艦船よりは小さいけど。それは逆に周りが大きすぎるとも言うが…


 

「それじゃあそろそろ〜」


「おやすみー!」



 こうして私達ライブツアー組はログアウトしたのでした。




*>>リン視点



「あれ?そういえばサーニャはどこいったんだ?w」


「ん?サーニャは月の大気圏突入と同時に飛び出したぜ?ちなみにその時宇宙船から離れながらカメラがブラックアウトしてたからな…。たぶん抑えきれなかったんだろ?わかるぜ!」


「まあ、探索好きですからしばらく放置でいいんじゃない」



「おいおいwここに置いてけぼりでいいのかよ?」


「ログイン場所をホームか現在地にすればいいのですわ」


 私の目の前で話す3人。キリアさんは口を開きませんが終始ニコニコしてそんな3人を眺めています。彼等の話を聞くに5人で月に来たのですね?宇宙船から見えたのは4人だけでしたが、既に1人は飛び出していた…と。



「あ、そういえば、アインズにも生産職はいるよな?」


「それならレンが筆頭ですね」


「ん?どうかした?」

 


「とりあえず戦闘機の設計図渡しとくな!」


「え?」


 え??



「独占するつもりは無いからなー。まだ移動だけだからこれから色んなプレイヤーによって違った船になっていくんだろうぜ!」


「宇宙対戦とかできそうだよなw」


「完全に別ゲーですわ」



 この人達は欲が無いのでしょうか…。いえ、金銭欲が無いのでしょうね。

 アインズも見習わなければなりませんね。


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