前のエピソード――W-3 11.5　　霊の依代

「さあ！ここまで全メンバー生存！リリースの異常さとリン選手の負けず劣らずの実力が会場を沸かしてるぅー！」

「ただ…、全メンバーのぶつかり合いが少し減ってきたアル…。全員消耗が効いてきてるアル」

「確かにあちこちで戦闘は続いていますが逃げるか威嚇攻撃で相手に回復の隙を与えないようにしている感じ…」

　エリアは収縮し、足場であった浮島もアリアの天災により消失。いまだ脱落者の居ないこのバトル。だがしかし、さすがにそろそろ脱落者が出たとしてもおかしくない。

　中央で歌うナユカ。

　遠くを見つめるユキ。

　逃げるヒヒリー。

　それを追うハルト。

　上を見るアリア。

　下を見るキリア。

　なかなか撃てないミカ。

　人形ごと動く軍曹。

　何とか混戦にしたいビュア。

　そろそろ追いつきそうなヒカリ。

　消耗待ちのアキアカネ。

　中央で唱うリン。

「こういう場合誰を落とすのがいいの？」

「最初っから変わって無いアル。ナユカアルよ」

　このメンバーで唯一消耗という文字がないナユカ。時間が経てば…、選手が減れば…、エリアが狭まれば…。その全てが自分にとってプラスになる〔魅力〕の持ち主が、既に手遅れレベルのバフを身にまとっている。

「こうなったら複数人でナユカに突撃するか、遠距離から一方的に攻撃するかしかないアル」

「おっと！ここでユキ選手が猛スピードで動いた。向かう先は…ミカ選手です！！」

「一直線アル。ミカも気づいて逃亡したアル！」

「さらに上空でキリア選手が何かしてるぅ！」

「あれは…盗んでるアル！魔法陣に使われていたスキルを表す模様を！！」

「これにはさすがに気づいたか！アリア選手とプチ黒龍ちゃんもキリア選手目掛けて一直線だぁ！」

　キリアが使ったスキルは青かった魔法陣の破片を所々白く染め上げる。

「魔法陣の模様を盗む…確か〔ジャック〕だったアルか？使いどころが難しくて殆ど扱えないスキルだったはずアルが…」

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スキル:ジャック

カテゴリー:魔法系

ランク:青

発動:アクティブ

概要:MP、SP、GP、EP、WPを消費して既に他者が構築した魔法陣、模様、文字、機構、システムを〔ジャック〕する。ジャックするには必ず相手が作り上げた仕組みが機能しない状態にする必要がある。

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「このタイミングでほぼ全員の選手を我々観客席から目視できる距離にとらえましたー！さらに下でリンさんが何やら怪しい詠唱をしています！」

「アリア選手状態維持:飛行系スキル使用不可アル！落下しながら何とか〔風〕魔法で高度を維持したアル…何か落ちて…」

　解説実況も、観客席にいるプレイヤーも知らない。この数秒後、自分たちの目前にとんでも爆弾が飛んでくることを…

『…【麁（あら）ぶ物】』

「リン選手の長い詠唱が完了！なんかヤバそうなオーラがっ！！」

「〔現介〕〔交霊〕〔威厳〕〔呪術〕〔舞う〕〔上昇〕〔台詞〕〔条件〕〔加速〕…広範囲の呪いアルっ！！」

「上っ！？！？！？っ」

　特大の爆発が視界を白に染め上げる。激しい爆発音もさることながら振動もとてつもない。座っていた観客がその姿勢のまま宙に浮き上がるほど。

「うっ…。はっ！大爆発！！」

「ハルト選手が一撃で吹き飛んだアル！！」

「さ、さらに下に落ちてくミカ選手、ビュア選手、ヒヒリー選手！迎え撃つリン選手！！上ではアリア選手とキリア選手が睨み合い！！」

「落下メンバー全員にも飛行系スキル制限がついてるアル！！こっちは効果時間が桁違いに長いアル！？」

「これ落ちたらどうなるの？」

「エリアシールドにぶつかって転落死アル…」

「うわぁ…」

『元凶見っけたぜ！【ギュドーン！！】』

『っ！』

『うっ！？』

「ここでミカ選手が巨砲からレーザー！っ！？をぶん回したーっ！？！？」

「リン選手〔防御〕〔結界〕で対抗したアルが綺麗に貫通したアル…あ、ビュア選手巻き添えで吹き飛んでるアル…」

『っし！え？呪い解除されねぇーじゃん！』

『隙ありぃー！』

「ここで同じく落下中のヒヒリー選手が得体の知れないポーションをミカ選手に投げつけた！ミカ選手に直撃したポーションはミカ選手の装備をみるみる溶かしていくっ！」

『ちょっ！？何しやがる！っ〘パージ〙！！』

「ダメージもすごい勢いで入ってるアル！回復間に合わないアルっ！」

「ここでミカ選手もダウン！！」

「ヒヒリー選手！なんと漁夫の利で生き残った！！」

　怒涛（どとう）の展開を見事に生き残ったヒヒリー。だがしかし…

『あ』

「「あ？」」

『飛べないっ』

「相打ちかな？」

『魔力もなぁーぃ！おうのぉぉぉぉぉぉぉぅ！！！』

　彼女の残念な最後に実況も解説も目を逸らしたのだった…

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スキル:呪術

カテゴリー:効果系

ランク:赤

発動:アクティブ

概要:相手を呪うことが出来る。呪いの種類は豊富だが発動させるためには対応した呪文、儀式が必要な場合がある。消費したGPによって効果時間が伸びるが、その分準備に必要なものも増えてしまう。呪いは3段階に分けられ、初期段階は対応したデバフのみ。2段階目はそれに加え状態異常:呪いとなり全ステータスが少しづつ下がる。最終段階はさらに状態異常:呪縛になりHPや原型を減少させ、効果時間が死ぬまでになる。

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