W-3 11.5  霊の依代


「さあ!目まぐるしく会場は戦闘の最中。あれだけ点在していた浮島たちは見るも無惨に木っ端微塵!ヒヒリー選手対ハルト選手!!アリア選手対キリア選手!さらに人形が〔ステルス〕中のビュア選手を捉え、すかさず動き出す軍曹選手!そしてまた歌い始めたナユカ選手〜!」


「同時に解説は困難アル!実況解説は軍曹選手とビュア選手の戦いをフォーカスアル!」



ーーーー


スキル:ステルス


カテゴリー:効果系

ランク:赤

発動:アクティブ

概要:MPを継続的に消費することにより自身を〔ステレス〕状態へと移行させる。ステレス状態では姿、音、匂い、温度、その他自身が発する情報を有機物に対して完全に遮断する。ただし、機械的、スキルによって間接的に見た場合効果が反映されない。


ーーーー




 〔ステルス〕は物を通した場合効果を成さない。つまり軍曹の兵隊人形には見えているのである。


 一瞬誰もいないところで兵隊から戦闘情報が共有された時は何事かと身構えた軍曹だったが、すぐにビュアの存在を思い出した。

 時間経過でフィールドが狭くなるなら、必然的に最後は混戦となる。そうなった時、ビュアの存在は厄介だと判断したらしい軍曹は今ここでビュアを落としておきたいようだ。



「軍曹選手。完全にビュア選手を補足しています!」


「個人で文字通り軍団規模を操っているアル…」



『【兵長指揮譲渡!】』



 技を発動した軍曹。見た目変化はないが…


「よくある命令系スキル…〔条件〕〔起動〕〔中断〕〔再開〕に〔思考〕〔依代〕…原型革命後以降に発見されたスキルアル。効果もかなり特殊で注目はされてるアルが…」


「〔思考〕なんかはよく注目されますが、かなり難易度高いとか聞いたことあります!」


「そもそも効果が特殊だからアル…」



ーーーー


スキル:思考


カテゴリー:行動系

ランク:黒

発動:プリセット

概要:技や、魔法陣、呪いや、霊、神、妖怪、攻撃、乗り物、ロボット、施設、が自身の行動を〔思考〕し、最適解だと思われる行動を自動で発動させる。これには同時に使われたスキルも使うことが出来る。ただし、1度消費したスキルは使用者の物理的な接触と原型補填がなければ使えず、スキルの個数によって霊力を消費する。一部の妖怪、神、霊、乗り物、ロボット、施設などは纏ったものによって消費される原型が軽減される。


ーーーー


スキル:依代


カテゴリー:行動系

ランク:赤

発動:セミアクティブ

概要:気力や霊力や妖力で纏った神、霊、妖怪、事象を代わりの「物」「アイテム」「武器」「攻撃」を使い〔依代〕とする。依代を獲得したモノは長時間、遠距離の行動が別途可能になるが、指示を与えなければ基本的には何もしない。


ーーーー



『ッ!?【ワンボール】に似てますね…ただ指揮系統までどうやって…』


 途端に自身を取り囲む兵隊人形の動きが変わり警戒するビュア。

 逃げようにも進行方向を即座に複数の兵隊に塞がれる。そこにまだ軍曹は居ないのにだ。

 


「これは技名通り兵長が居るのでしょうか?」


「一体だけなんか違うの居るアル。そいつがリーダーだと思うアル」



 アルの言う通り。一体だけ戦闘に殆ど参加せず、俯瞰してビュアを見てその他の兵隊を動かしている。

 〔ステルス〕は効果が無いと判断したビュアはそのまま姿を露わにして兵隊一体一体を撃破していく。


『物量作戦…いえ…足止めが目的でしたか…』


『【槍兵!突撃!!】』



 ビュアのところに到着した軍曹。初手から槍を持った兵隊をビュアに突撃させ攻撃を加えていく。



「軍曹選手がビュア選手と戦闘を開始!!」


「〔突撃〕〔アクセル〕〔初撃〕〔切り込み〕〔先制〕〔槍術〕〔装備〕〔高速〕。先手必殺のダメージ増し増し攻撃攻撃アル!あれは喰らったらひとたまりもないアル!」


 突撃してきた槍兵に弾幕をお見舞いするビュア。だがしかし!〔切り込み〕スキルの効果で兵隊の体制は崩れることなく突き進む!



ーーーー


スキル:切り込み


カテゴリー:動作系

ランク:白

発動:アクティブ

概要:狙いを1人に絞りその敵に近づく。その他攻撃を喰らってもダメージはそのまま受けるが止まることは無い。


ーーーー



『なっ!?』


「喰らったぁーーー!!!」


「ビュア選手残りHPは2割。〔防御〕がなかったら即死アル!」



 攻撃を相殺できたと判断したビュア。弾幕が兵隊に直撃したため油断を招いた。減ったHPゲージを見ながら視界に軍曹を捉える。

 既にビュアに弾幕を追撃で放っていた軍曹に抜かりは無い。


『トドメでありますッ!!』


『【スクリーンショット】【1フレームの】!』



 迫る弾幕は吹き飛ぶように突如現れた赤い〔結界〕にこばまれ消える。さらにひとつの魔弾がビュアから見て結界の向こう側にある。軍曹目掛けて動く面となった結界に押されたその魔弾は、赤く点滅しながら軍曹目掛けて飛んでいく。


『ッ!〔爆発〕!?【盾兵!】』



 赤く点滅する魔弾の正体は〔爆発〕である。そのわかり易い主張は軍曹にもすぐにわかった。咄嗟に自身と〔爆発〕との間に盾兵を挟んで衝撃に備える。


 爆発は軍曹の視界とその他の兵隊人形をいくつか巻き込むことに成功。さらに同時に発動させた技で肉眼では見えない速度で一直線に逃げたビュア。



『ッ!逃がさないであります!!』



 追いかける軍曹。しかしビュアとの距離は大きい。その間にビュアは回復薬を飲みHPを何とか回復させた。




「〔結界〕で弾幕を防ぎつつ〔爆発〕でカウンターです!結界も〔赤〕色に着色してたね!」


「それに合わせて〔加速〕と〔超加速〕を二重で使って距離を稼いだアル。何とかHPを回復できたアルな…」


「軍曹選手諦めずに追いかける選択かー!」


「ビュア選手が不利アルからな…。たぶん逃げ続けるんじゃないかアル?」




 アルの言う通り。この後エリア収縮し闘技場でナユカと接敵するまでビュアは全力で逃げたようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る