W-3 11.4  〔エーテル〕



「さあ!天空に作られた巨大な魔法陣。もちろん選手達も目視していることでしょう!〔魔法陣〕は模様さえわかっているのなら破壊することも可能。ただしこの大きさ。模様の複雑さから探し出すのは容易ではありません!」


「各所で戦闘も起きてるアル。誰かがあの魔法陣を破壊しないといけないアルが…」


「各選手。やはり自体の深刻さを理解…」



 シェナの言葉はナユカが唐突に闘技場の中心でゲリラライブを始めてしまったためなんとも言えない雰囲気になる。

 さらに実況解説を置いてけぼりにして響く歌声に会場の視線は魔法陣をバックにまるで天使のような後光すら感じるナユカに総取りされる。



 これに実況解説は無粋。シェナもアルも沈黙。今はナユカの邪魔をしない方がいい。

 果たして…


 アルは無言でナユカを瞳に写す。この光景を意図して利用すらするナユカ。魔法陣を見て焦るどころか利用し返してみせる。果たしてそれを理解できているプレイヤーが何人いるのか。そして実行に移せるだろうか…と。



 さらにモニターでほかの選手も確認する。一応、アキアカネがアリアを攻撃している。ヒヒリーとハルトの衝突。軍曹とリンの接触…だがしかし、実況解説が入る隙がない…








『【月時雨つきしぐれ「マキシマム クラッシュ」】!!!!』






 そんなライブをさらに切り裂いたアリアの魔法が降り注ぐ。


『ッおとと!』


「な、なんということでしょう!!誰もアリア選手を止められず!攻撃が降り注いでおりまッ!?」



 激しく打ち付ける滝が闘技場の観客席を防ぐバリアに直撃し、激しい振動が響く。会場はビクともしないが空気が震えているのだ。


「ほかの選手はどうなったアルッ!」


 全てのモニターが写す12人の選手達。それぞれアリアの魔法を各々の行動で何とか回避してみせる。


「ぜ、全員生きております!ナユカ選手、ユキ選手、ヒカリ選手はそのまま回避!ハルト選手も〔ジャンプ〕を使い回避!アキアカネ選手は…ダメージを受けながらも致命傷は回避!ミカ選手、キリア選手はほかの選手と比べ攻撃密度が薄い外側。それでもかなりの脅威です。ヒヒリー選手は下に降りながら何とか対応、軍曹選手は人形の喪失が激しい!リン選手は回避しながら軍曹から逃げ闘技場の真下にて雨宿りです!!」


「こ、これバリア大丈夫アル?」



 闘技場のバリアは壊れることは無いのだが、それでも打ち付ける滝の衝撃が空気中を揺らし、不安になるのも無理は無い。シェナですら絶対安全なのか怪しむ程度には酷い轟音と衝撃だ。



 さらにその状況を変えるビームと爆発が魔法陣を破壊する。


「撃ったぁぁぁ!!」


「ミカ選手の砲撃が〔拡大陣〕の紋を撃ち抜いたアルッ!このでかい魔法陣からよくも見つけられたアル」


「さらに爆発!キリア選手が飛ばした爆弾が〔略式〕紋を木っ端微塵に!!」


『さて…逃げるぜ☆』


 ガラスのような音を出し崩れていく魔法陣。


『させない…ここで落とす』


『ごふっ!?』



「さらに場所がバレたミカ選手!逃げるも遅し!ヒカリ選手の攻撃が直撃!!」


「〔結晶〕付きアルッ。かなり大ダメージアル!」



 吹き飛ばされたミカ。重い重砲に振り回され何とか体制を立て直すも既に超至近距離まで迫るヒカリの拳。



『くっ〔パージ〕!』



 ミカの装備が腕部、胸部だけ消える。


『む?』


「知らないスキルアル!」



ーーーー


スキル:パージ


カテゴリー:操作系

ランク:黄

発動:プリセット

概要:EPを消費することで、指定した箇所を〔パージ〕可能。パージしたものは瞬時にインベントリに送られる。パージには取り外し可能である部位だけが対象となる。


ーーーー




 腕部と胸部装甲を即座に消し元々小柄な体を生かしヒカリの拳を無理やり体を重砲に寄せ回避する。

 もはや、ミカが重砲を持っているのではなく、重砲がミカを支えているようにも見える。…実際ミカよりも重砲が主軸に空中に浮いているので間違いでは無い。


『このッ』


 くるりと重砲を回転させ至近距離でヒカリを撃つ。技では無い。普通の砲撃なためヒカリは拳にまとわりついていた結晶を防御に使う。


「防いだ!」


「いや、ダメージは入ってるアル」



『【バン!】』


『ん…』



 追撃とばかりに技を発動させたミカ。重砲から放射状の弾幕がブラストされる。


「散弾ッ!」



「〔砲術〕〔拡散〕〔球〕〔爆発〕〔エーテル〕…」


「〔エーテル〕?また聞いたことないスキルです!」


「魔力と電力からできる燃料となってるアル」



『【ウイング】!〘加速〙!!』


 さらにミカは解除した腕部装甲に新しく飛行機の翼のような装甲を〔装備〕する。ジェットエンジンの着いたそれがあわく光を発し、ミカは重砲にまたがった。


『あばよ〜ヒカリぃ!!』


「…」



 追いかけても追いつけないと踏んだヒカリ。ミカはかなりの速度で遠ざかっているのか…既に豆粒ほどの大きさにまでなっていた。


「逃げ延びたアル」


「知らないスキルがいくつか見えたね??」



「解説してくアル」


 目まぐるしく動く戦況。アルは〔パージ〕〔エーテル〕について〔解説〕スキルで見た内容を話し始めた。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る