W-3 11  コスト無限なら確実にやばい人


「さぁー!始まりました!前代未聞!バトルロワイヤル式公式戦!全員フィールドのランダムな地点に転送されました!!」



 いよいよ開幕したバトルロワイヤル。観客は最早1会場に収まる訳もなく複数のチャンネルが接続されている。闘技場は観客数によって客席数が変わるがここはアインズ作の空中闘技場。管理系スキルにはもしかしたらあるのかもしれないが試合規模に合わせて建物内部の構造を変える仕組みを組み込めてはいない。

 がこれを作成したプレイヤーもそのことは承知の上。通常の闘技場よりもかなり大きく、また、中央にステージもないため客席は元から多い。

 それでもとんでもない数だ。

 ちなみにチャンネル使用数はアインズであり、闘技場の責任者であるレンのみぞ知る。



「まずは全員位置把握でしょうか?」


「む?ユキが闘技場に1番近いアル。というかほぼ真上アルね」



「噂をすればユキ選手。そのまま降下し闘技場にやってきました!真ん中が吹き抜けなこの闘技場。そのまま闘技場の下へ向かって行きます!」


 それぞれが一定以上離れた場所にスポーン。早くもユキはとある攻撃を闘技場の下に隠す。


『伏線〜』


「?伏線とは?」


「何がやろうとしてるアル…ユキはその戦闘力も強いアルが基本的に〔氷〕によるデバフを生かした搦手を好む傾向アル。こういう戦闘だと放置したくない相手アルね」


「なるほど」



 ちなみに選手の声は聞こえても、プレイヤーから実況解説と観客の声は聞こえない。



「と早速!戦闘が発生しました!唯一アインズのリン選手と我らが先輩!ヒカリ選手だぁー!」


「リン選手に勝って欲しいアルね」


「なんか私怨入ってそうなうちの解説は放っておいて。さらにその反対ではキリア選手とハルト選手もエンカウント!」


 闘技場から少し東でリンとヒカリ。西でキリアとハルトがぶつかる。



「キリア選手は逃げるつもりじゃないかアル?そういえば彼女のスキルは見れないアルよね…」


「あれ?そうなの?なんで?」



「彼女。そもそも喋らないアル。喋らないということは発動に技の呼称ができない。つまり技を使ってくれないアル。解説泣かせアル…」


「言われてみれば喋りませんね?なんで」


「知らんアル」



「おっと!ここでキリア選手!ハルト選手目掛けて爆弾を撒いた!」


「そのまま突っ込んだアル!!?」


「斬ったっっ!!」



 映し出されたハルトはキリアが投げた3つの爆弾を見て避けない。むしろ加速しそのまま突き進む。

 そしてすぎ去り際に撫でるように爆弾を斬る。当たり前だが爆発。ほぼ直撃だが構わず爆風を追い風…に?さらに加速した。


『ケホッ。やっぱり斬ると爆発なのなw起爆せず壊れることを期待したんだがッ!』


 ハルトの剣がキリアを襲う。


 だがしかし、予測できてたのか、即座に結界を2枚張り防いでみせたキリア。


「防いだ!?…結界を2枚も要りました?」


「要る。ハルトは〔魔核視〕持ちアル。結界も〔魔力〕から出来たものアルから当然核はアル。そこを攻撃されれば突破されかねない。だからそれぞれ位置を少しずらした結界を並べて確実に防いだアル」


「え?あの一瞬で!?」



 さらに簡易ジャンプ台を使ってハルトから距離を取りながら爆弾を投げた。


「また爆弾!!」


 今度は〔ジャンプ〕で回避したハルト。回り込むように多角移動。キリアにまたもや接近する。


「避けた!!」



 また二重に展開される結界…


『同じ手はダメだろw【炎環ノ断牢エンカンノダンロウ】』


 火を吹き出し、まるで〔飛撃〕が燃えているような攻撃が結界よりも広く広がり、外側からキリアを覆う。熱ダメージを受けるキリア。


「新技!!」


「使われたスキルは〔気力〕〔炎〕〔拡散〕〔集合〕〔伸縮性〕〔引っ張る〕アル!!」


 だがそんな攻撃の最中。キリアはさらにアイテムをハルト目掛けて投げつける。

 咄嗟にジャンプで回避したハルトだがしかし、それすら予測できていたのか回避先にガクンと曲がったアイテム。


『っ!?』


「曲がった!!」


「霊力の追加スキル付与じゃない…ということは全部読み切って予めセットされたスキルで曲げたアル!?」



 キリアが投げたアイテムに見事当たってしまったハルト。途端にその場からハルトの姿が消えた。


「え!?死んだ!?」


「違うある!場所だけ違うところに飛ばしたみたいアル!」


 キリアの目の前からは消えたハルトだが、モニターには未だその姿は写ったまま。つまり生きている。



「触れた相手をテレポートさせるアイテムアル!!」


「そんなものあるの!?!?」



「聞いたことないから自作なんじゃないかアル?」


 観客の動揺は知らぬまま。


 ふぅ。と少し安堵した表情を見せるキリア。同時に本当ならひとつしかないこれを使う場面じゃなかったな…。と反省していたのは本人のみぞ知る。


 何もそのアイテムは「触れた人」ではなく「触れたもの」を飛ばすアイテムだったのだから。

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