W-3 10 実況者達は忙しい
*>>三人称視点
『アル!早くインして!!もう始まっちゃうってば!』
「わ、わかったアル…運営も人使いが荒いなぁ…」
『いや!それどころじゃないから!早く来てっ!!』
妙に興奮した声がアルと呼ばれた少女の頭をつんざく。いつもかなり元気いっぱいで飛び跳ねる彼女。今日はいつにも増して元気いっぱいだ。さぞいっぱい揺れていることだろう。
そんなことを考えながら、シェナのいるRBGにログインする。普通に夜もそこそこ。こんな時間にいきなり呼び出してくるシェナと公式…。シェナがいなかったらキレてもおかしくは無い。自分にそう言い聞かせアルはログインを完了した。
長いツヤツヤの黒髪をツインお団子にしたアバター。白いキメ細やかな肌が覗く深めのスリット。そこに鮮やかな赤が映えるチャイナ服と呼ばれるいつもの衣装。
字面だけ並べればさぞ美しいことが容易に想像できるが現実は悲しきかな…。圧倒的な身長不足と下を向けば見晴らしのいいこと…
「またせたアル」
「ほら!これやばいよっ!!」
そしてその視線の先には、飛び跳ねる…
黄緑色の髪を三つ編みしてさらに編み込んだ小柄な少女。元気いっぱい過ぎてその有り余った体力を何故か跳ねて消費する。いつもつけているインカムがトレードマークだ。
ちなみにアルとは違いでかい。何がとは言わないがしょっちゅう飛び跳ねるせいでいつもバルンバルンだ。
そんなシェナにジト目で返すアル。この無意識の嫌がらせも慣れたものだ…
ひとまずそんな凶器を見なかったことにしてアルはシェナの言う「やばい」を確かめるためそばに近づく。
そして急遽呼び出され実況解説の仕事をさせられることとなった原因の試合内容を見てアルは固まった。
「な、な、なんじゃこりゃアルーッ!!!!!!」
ーーーー
ルール設定:バトルロイヤル
ランク:変動あり
フィールド:浮島群
入場制限:フレンドのみ
制限時間:20分
制限距離:エリア収縮、移動 行動制限:なし
アイテム制限:同種アイテムにつきレアリティ×20個まで
HP:全損で30秒後観戦に移動
勝利条件:最後の一人
敗北条件:HPの全損
従魔:参加可
賭博:有り
観戦制限:なし
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準備期間:1:59
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バトルロワイヤル参加締切済み
実況解説:シェナ、アル
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参加者
リン
ユキ
ヒカリ
アキアカネ
ハルト
ナユカ
アリア
キリア
軍曹
ヒヒリー
ミカ
ビュア
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そりゃー実況解説に呼ばれるわな。と、納得も早々。既に眠気など吹き飛んでしまったアル。何がどうしてこんなメンツ…というか殆どリリースだが戦うことになっているのか…検討もつかない。
そしてメンツに目が行きがちだが、バトルロワイヤルとは何ぞや?と激しい動揺を隠しきれないアル。ちなみに観客も似たり寄ったりだ。
「シェナ…。闘技場ってバトロワできたアルか?」
「闘技場管理のシステムって多機能だからよくわかんない!」
「なぜシェナが実況の役職を貰えたのか不思議アル…」
実際。できなくは無い。ただし機能として無理やり再現は出来るというものだ。アルやシェナは見たらわかるがこれは「カスタムバトル」とは訳が違う。「バトルロワイヤル」というちゃんとした「公式戦」であるのだ。つまり、このバトロワはランキングに反映されるのである。
もしこれがほかの闘技場でも可能なら…
現状ソロ、デュオ、パーティーしかない公式戦。ランキングに反映されるバトルがそれしかないこのゲームで新形式の競技となり得るのだ。
さらにアルはいつもより念入りにそのバトル詳細を見ていく。
フィールド。これは格闘技上によっては稀に水中闘技場だったりするためまだ理解する。
さて、アイテム使用ありとは?あとアルに覚えのない持ち込み制限もかかっている。
それに目を引くのは従魔の項目だ。アリアのギルバートや、最近革命の中心となったアキアカネのニワタリも参加するということである。
これはプレイヤーメイドの闘技場だからなのか…それともこれからこういう機能が解禁されるということなのか…
そしてアルの脳裏に過ぎったその考えはすぐに公式により正式化される。
「さあ!残すところ1分!最早この会場に集まる観客者数は止まることを知らず!今も尚ふえてるよー!!」
「バトルロワイヤル。RBGでは馴染みのない…というよりそれは野良の戦闘と対して変わらないのではと思ってるアル」
「実況はこの私!シェナと!」
「解説。アルがお送りするアル」
2人の実況解説が声をマイクに乗せ。ついに始まる前代未聞の公式戦。闘技場中心に浮かんだ大量の大画面。視線で誰を見るか選択可能なモニターフォログラムが12人のプレイヤーを写していた。
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