EC:205  ❨エドヒガン❩





 それは、魅せる花を咲かせ。薄ピンク色の蕾が花開く。


 それは、 新たな地にて芽吹く。太く大きい茶色の幹になりて我ここにありと歌う。


 それは、冬開けて春に、春終われば全てを地に返す。鮮やかな時はひとときを持って終わる。


 それは、いつしか人を焚きつける。花の下にて、笑う人に恋をする。人もまた。






『我は❨エドヒガン❩。美しき花々を咲かす大樹。汝、我と同じく、人々を魅せる。汝、我と同じく、人を集める。汝はその美を力として、たくさんの花々を咲かす者なり』





*








 思いっきり顔面にパンチを喰らわせて、美もクソもないと思うけどね?


 いやでも確かに力が湧き出るというか。有り余ってるというか…。



 私は人の気持ちを自分の力に、自分の花々を人に咲かすことができるらしい。


 何となく、力の使い方がわかる…。的な?


 人に花を咲かす…てなに?



 あれこれ考えていると、吹き飛んだ男が戻ってきた。うわぁ‪…。まだHPあるの?かなり強い一撃だったと思うんだけどなぁ…。



「全員、ナユカの援護を〜!」


「「「了解!」」」


 みんなは私に合わせてくれるのか。私を中心にある程度陣形を組む。




「なんだ…。お前…」


 

「私はナユカ。よろしくね。じゃあ…。いくよ?」


 私はまた男に向かって飛び出す。


「ッ!?」



 男は私の蹴りをギリギリで躱す。しかし大きく体制が崩れた。そこをハルトさんとシリウスさんが追撃。



 男はまたもや痛い一撃を食らう。



「ッ。無駄だ。ここの民はもう助からない。抗うだけ無駄さ…」


「お前が決めるんじゃないぜ?決めるのは俺たちだ!」


「小賢しい。君たちの攻撃は無意味だと言うのに…」




「じゃあ。私のは?」


「ッ!?いつの間ッ」



 今度は横凪に扇子で斬る。


 私の攻撃は、相手の核に直接攻撃する。副作用らしいけどね?よく知らない。



「ッ…。さっきから…何を…」



「私は約束したんだ。その約束を守るためにこの力を使う。もう、君は負けてるよ?」


「なん…だとッ!」



 私は力を込めて男を蹴り飛ばす。


ドカッ!!!




 なんかとてつもないスピードで壁に吹き飛んで行った。普通ならHPはないんだけどね?


「…。うるさいッ!!」



 よろよろの男は叫ぶ。そうだね。さっきからうるさいよ。



「君はなんでそんなのに協力してるのかな?」


「ッ!?聞こえてッ!いっ!!!?」



 なるほど。片手で頭を抑えながら何かを急に我慢しだした男。

 そこか!



 弾幕を狙って飛ばすが、男の頭上を通り過ぎるだけで何も起きない。


 こっちからは何も出来ないのか。


「あれをどうにかしないとね」


「ナユカ〜…。何かあるの?」


「うん。でもこっちからは手出しできないみたい…」


「なるほど。ちなみにどんな感じ?」


「なんか電波みたいな?上の亀裂から伸びてるんだよね…」


「なるほど〜…。ナビィ」


『なんでしょう?』


「私の家に言伝して。「キリアにGOサイン」」


『了解しました』



「はい?」



 なんか、ユキが厨二病にでもかかったか?



「さて、それまで私達で足止めしないとね〜」


 うん。なんかよくわからないけど、ユキは裏で何かやってるみたいだね?



「ナユカ。これで最後だよ〜。私たちの世界(リアル)を守るために。全力で!」

 

「了解!!」



 私はユキのオーダー通り、全力で力を使う。

 さっき歌ってた時のスピーカー用魔法陣は起動しっぱなしだ。だから、みんなには私が言う。



『全員、全力で!あいつを倒す!』



『おー!!』



 集まる粒子と。CP。





 私は戦ってくれてるみんなに力を。花を咲かす。


 たとえここがゲームでも。この力は人の心を魅せる力。



「ユキ!!」


「「合技【氷雪来華(ひょうせつらいか)「チェリーズスノー イルミネーション」】!!」」



 大きな桜「エドヒガン」は私たちの上にその那由多の花を咲かせる。その花は人々の心を魅せる。桜は散り、大地へと帰る。私たちの降り立つ世界の源となる。


 私たちに力を、それぞれの花を咲かす!!



 それぞれに降り注ぐエドヒガンの花弁が、ゲームのプレイヤーとしてでは無く。人間としての底力をあげていく。



 肉眼で見えるのはただみんなの動きが良くなっただけ。でも、その根本は。気持ちを力として相手に伝える力。その力を。ここでぶつける!!


 縦横無尽にみんなが男に向かって攻撃を繰り出す。男はとてつもないスピード、パワー、スキルで対応するも、着実に弱る。


 「心」に訴えかける力によって。


 それでもそれに抗うのは、やっぱり…。


『準備完了しました。3.2.1。オールジャック完了。マザーを起動。操作権を半分渡します。同時に、現実世界でその者の身柄を捕獲しました』




「なにッ!!どうやってッ!?」


 あとは倒すだけ、あなたは被害者かもしれないけど。私の怒りを代わりにくらえ!


「【魅力桜花「フラワリンク」】!」



 男になすすべはない。だって。もう、何も使えないでしょ?






*










 静かな戦場。地面に広がる花弁がそっと風に吹かれて飛んでいった。





















 作者コメント



 さて皆様。長い間お付き合いいただきありがとうございました。終わらないけどね〜。

 第4章 Purple is a bag はいかがだったでしょうか?ゲームの話からいきなり現実の話になって少し…。いえだいぶ混乱されているかもしれません。

 ただこの物語はそれ含め。

 Reality barrage gamers という題名を用いています。


 普通にゲームだけの物語を書くなら、なになにオンライン〜。とかその方が注目集めやすいので、そうしていたでしょう。


 それはともかく、今後しばらくは、ゲームのお話に戻ります。まだあと少し、4章は続きますけどね。


 那由花の名前の由来や、魅力の回収が出来て…。あと少し残ってる(ボソッ。作者はまあまあ、満足しています。



 あ、高評価。コメントよろしくです!さらば!

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