EC:198 後に歴史に載る「第1次星間対戦」。
この日、世界中のフォログラムウィンドウが一斉に切り替わる。
その映像はリアルタイムで防衛省が緊急速報として、太陽系全ての都市、人々へと届けられた。
唐突に変わった画面。大都市特有の空に浮かぶ大スクリーン(フォログラム)、夜のネオンに紛れて看板として表示されていたフォログラム。個人の所有する電子機器全てが同時にその画面に切り替わる。
『突然のことで申し訳ない。こちらは防衛省総司令。永井(ながい) 朝凪(あさらぎ)という者だ。今から重要なことを全人類に公開する。どうか作業中の者は一旦手を止めて頂きたい』
そこに映るのは、The 偉い人といった風貌のおじさん。
その真剣な表情と声色。威圧に押され、ほとんどの人々がその画面に釘付けになる。少しの沈黙の後、朝凪はゆっくりと口を開いた。
『現在、我々は太陽系生命体に攻撃を受けている』
ド直球にいきなり本題に入った総司令。その画面の裏側で秘書?みたいな女性はメガネを盛大にずらすほどよろけるが、何とか堪えて立て直す。
(いきなりんなこと言われて分かるわけないやろぉー!!もうちょいオブラートに包めやぃっ!!)
そう、そんな女性の心の叫びが聞こえたけど気にしない。
驚き、そしてどういうことかとざわめく人々。
『まず、我々は以前から太陽系外知的生命体の存在は確認していた。訳あって極秘に接触。保護していた訳だが、そうせざるおえない情報がその宇宙人により知らされたからだ』
ポン!ポン!投下される情報。混乱はさらに広がりを見せる。
(馬鹿たれぇぇえ!!!)
『それは、「全ての生命に害を及ぼす敵の存在」。そこから逃げ延びたその星の姫様。彼女は今もその故郷を救うため。場所も分からない星を探して宇宙を探索し続けていた』
(繋げ方強引すぎてみんなついてこれてないってっ!!)
もはや置いてけぼりで始まった、衝撃の事実にほとんどの人間は理解が追いつかないであろう。
それもそうだ。
宇宙人。実は昔からいましたと言われて、はい、そうですかで済むならたいへん楽で良き。そうはいかない世の中だから、色んな問題が今も昔も絶えない。
『そしてその敵。それが我々の住む太陽系に侵入し、現在、地球がその攻撃を受けている』
(…)
もう、いいやとため息と共に顔を抑えた。
途端に慌ただしくなる人々。そりゃそうだ。
もう今攻撃くらってますと言われたら、さすがに不安にもなる。
この時代、ほとんどの謎が解明されたが、未だに全ての真理がわかっている訳では無い。
宇宙はそれだけ広く。多くの謎を保持している。
『落ち着いて欲しい。現在防衛省が総力をあげて状況の打破に動いている…。と言いたいが我々ではどうにもできなかったのだ。現在、地球のほとんどのAIが停止状態にある。もちろん電気、や通信網、移動方法すら止まり、家からも出られない状況だ。それを打破する方法として、1番早く、被害が少なくできる方法。それを我々、防衛省では担えない』
(馬鹿正直にそんなこと一般人に言うなやっ!!)
人々に不安を煽ってどうするッ!?と指摘できるほどの人はいない。
人々の動揺も気にしないままに語る朝凪はだがしかし、真っ直ぐな瞳で誰よりも雄弁にその佇まいでもってことの重大さを語る。
『事の発端は、今人気のゲーム「Reality barrage gamers」通称RBGというゲームのメインAIが、ハッキングされてしまったこと。そのAIは他のAIと違いかなり高性能であり、地球のメインAIまでも止めてしまえるほど高位のAIだった。そのことを知った敵はそれを利用し、地球のAIを全て止めている』
(確実に後で別に説明会を開くことになるわぁ…。そんな説明で分かるわけないでしょ…)
『このAIの停止を治すためには、RBG内にいるそのAIに接触せねばならず、その際。敵のハッキングにより操作された、ゲーム内の敵を倒しながら行かなければならない。ゲームのスキルを使ってだ。しかし、我々防衛省はその前提であるスキルを持っていない。ゲーム内にはどんな現実兵器も持ち込めない。つまりは素でAIのいるところまで乗り込むことになる。さすがに無謀だ。どんなに訓練してようが素手で魔法は防げまい?』
未だに理解が追いつかない。
『この全体の騒動と解決方法に気づいたのはその宇宙人の姫様と、その旦那となった地球人。いちどは名を聞いたことがあるであろう。米嶋 勇人 博士だ』
ここにきて、告げられる勇人の名に、驚く人間。
それほどまでの偉業を成し遂げた勇人が、その宇宙人の姫様と結婚?
過去に勇人が成し遂げた偉業は、現代を生み出したとも言えるほどだ。そんな彼の衝撃の事実に黙る人々。
『そして、そのことを知って動き出したのが、RBG経験者のその娘と、その友達。世に秘匿されてきた宇宙人と太陽系人のハーフ。米嶋 那由花様がゲームに飛び込みAIに接触することを試みている』
「頼みます」
『ナビィ経由で送られてくる中継を回線に接続します』
そこに映し出されるのは、ナユカを捉え、今も尚、戦い続けている2人の映像。
これが今、地球を救う為の戦いであるということを、朝凪は説明し始めた。
後に歴史に載る「第1次星間対戦」と呼ばれるこの戦いである。
それと同時に、那由花が世界に認知された瞬間であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます