EC:197  切り札は?





「【赤眼発動「ワールドビュー」】」


ガキャンッ!!



「キャッ!?」



 両者突撃、男は剣を、ナユカは扇子を互いにぶつけ、ナユカがはるか後方に吹き飛ばされる。



 ちょっと待って!なんか勝手に吹き飛ばされたんだけど!!ぶつかった感覚もなしに勝手に!確かに扇子と当たったような効果音は聞こえたけど、手応えがまるでない。



 吹き飛ばされたけど何とか〔ジャンプ〕で壁にカエルする前に進路変更したよ!


 そんな私の一安心をよそに、今度はユキに攻撃を仕掛ける男。そんな攻撃を今度は軽々と躱したユキは男にタガーを突き立てる。…が、まるで鋼鉄のように刃が弾かれる。さらに弾幕を放つが、全くダメージを受けた素振りをみせない。



「?〔防御〕?〔シールド〕?なんか…。硬い〜」



 ユキも少し考えたようだが、わかららないみたい。


 あれは明らかにシルエットじゃなくて人。NPCでもない。ナビィがログインしてきたプレイヤーと言ったのだから間違いないだろう。


 だが、今見たように剣を〔装備〕〔生成〕そして〔剣術〕。さらに〔防御〕などのスキルを使えるようだ。

 ということは…。



『あの男。もしかしてスキルなんでも使えるとか。そういうやつなんじゃない?ハッキング得意みたいだし』


『うわぁ〜。めんどくさ〜い』



 と言いつつも、しっかり凍傷作戦に切り替えたのか。氷弾を〔粉砕〕で砕けやすくさせ、被弾したら粉雪のようにその形状を変えている。

 避ける素振りもなく、HPに余程余裕があるのか、はたまたそういうスキルか…。ともかく簡単に被弾してくれるのはありがたい。これならもうすぐ凍傷になりそうだ。


 が、やはりそう上手くいかないらしい…。



『対策済みかな〜?それとも耐性スキルでもデタラメにつけているかだね〜』


『凍傷は?』


『無理みたい〜』


『属性攻撃は効かなそう?』



 私の質問に対して、ユキは火弾、水弾、毒弾と様々な弾幕を飛ばすが、どれも効果は薄いようで、何もしてないのに消えてしまった。



『みたいだね〜』


『どうする?』


『逃げに徹しながら弾幕で少しづつダメージ増やす作戦で〜』


『MP持つかな?』



『それに関しては大丈夫〜。薬とか使い果たしたら教えてね〜』


『了解!』



 またもや、突っ込んでくる男。なかなかのスピードで接近してくるが、当たるとまた吹き飛ばされそうなので今度は避けに徹する。〔スーパーアクセル〕を使えば大抵の攻撃からは逃げられるけど、ここでは〔ジャンプ〕で回避に専念。


 やっぱり、〔ジャンプ〕してこない辺り、〔ジャンプ〕を持ってないか。そもそもこの使い方を知らない。という可能性が高いかな?〔ジャンプ〕が空中で使えるのを知っているのはプレイヤーだけ。初見だと気づかないからね。




 でも避けるにしても相手も私の動きに慣れてくる。その前にどうにか倒したいんだけど…。


 私たちには現状、火力が足りない。



『体力減ってる?』


『減ってる。でも〜、少しづつ回復していってるね〜』



 私とユキが現状、どうしようもないことに気がついたのか、男の方も私たちにアクションをとってきた。



 それは…。




「うわぁ…」



 空中に描かれる魔法陣。その大きさはいつかのアリアさんの水弾を思わせるほどのデカさだ。


『ナユカこっち〜!』


 とそれを見てユキは私にユキがいる場所まで来いと言う。

 素直に従いユキに近づくと。



「【山の中の幻小屋(スノー マンティス)】!」



 私たちを包むように雪が集まり始め、やがてそれはカマクラを形成し私たちをドームの中に閉じ込めた。


『なかなか硬いからね〜。今の間にナビィ〜!』


『はい。なんでしょう』


『切り札。ここで使うよ〜。ビュアがナユカに着けてるボール。あれにカメラの機能とかそんなのがあるから〜。それを、できるだけ多くの人に見て貰えるようにして貰っていいかな〜?』



『わかりました』





 と、その時、カマクラにとてつもない衝撃が走った。外側がどうなってるのか分からないけど、やばそうなのでこのカマクラが壊れないことを祈るしかない。


『ナユカ〜、よく聞いてね〜。今から私たちの〔魅力〕と〔妖力〕を使えるようにするから、全力で、早期決戦であいつを倒すよ〜』


『わかった。…というか。実は結構前から仕込んでた?』


『お!よくわかったね〜。〔魅力〕〔妖力〕が使えないと話にならないからね〜。ビュアに頼んどいたんだよ〜』


『よくもまあ、あの一瞬で』



『えへへ〜』




 外の爆撃の音の中で、結構呑気なユキ。いや…。私を気遣ってるのかな?



『行くよ。ユキも合わせてね』



『了解〜』



 その内、カマクラにヒビが入り始めた。



『ユキ!』



『5秒後。カマクラを解除するよ〜。当たらないようにね』




『うん!』




「「今っ!!」」



 カマクラ解除とともに、砂のように崩れ落ちる雪。それをガン無視して、私とユキはそれぞれ反対方向に動き出した。



『放映、開始します』





「さあ、ここまでしてくれた恨み。地球は私達のものだ。フフフッ!ここからが本番。【あなたの美しい命を凍らせましょう】!」



 途端に辺り一面が吹雪に。




「何がしたいのか分からない。君をとりあえず倒して、私はまた、楽しい世界を!【君と咲かせよう】!行くよッ!!」






 その吹雪の外側から、桜の花びらが舞い上がった。

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